アルトと学園デート。――下心満載編。
シャーロットはドキドキしていた。あらゆる意味でだ。
翌日となった今、アルトが学園内を案内していた。断れない流れでもあった。
同じ場所を巡るだろうと、シャーロットは考えていた。知らない振り、知らない振りと自己暗示をかけながらやってきたのだが。
シャーロットは思い知らされることになった。アルトはがらっと趣向を変えてきたのだ。
「ね、シャーロット。ここ穴場。俺もサボりにくる時にくるんだ。――綺麗だね」
アルトに連れてこられたのは、校内水族館だった。主に授業目的だが、休日は立派なデートスポットになっていた。辺りは薄暗く、水槽の中で魚たちが泳いでいる。幻想的な光景だった。
アルトはシャーロットしか見ていない。綺麗。もう一度言いながら、見つめ続けていた。
「ここ、滑るから気をつけてね。ほら、お手をどうぞ。――拒否は駄目だよ。ふふ、手繋いじゃったね」
今度は鍾乳洞だ。ここも二人きりになるには、絶好のスポットだという。確かにアルトに手をとってもらわないと、シャーロットは足を滑らせてしまいそうだった。目が離せないとアルトは笑う。手は繋がれたままだ。
「そっか。今日休みだっけ。なら尚更だ。ここもさ、結構おススメ。こうやって、人の目につかない場所に移動して。ほら、わかりづらいでしょ?ふふ、シャーロットがすっぽり。――ね、誰にも見えないね?」
ここは、シャーロットも訪れたことがあった。図書室だ。彼女のお気に入りとなった場所であり、知識を学べる清く正しき場所でもあった。そのはずが。アルトは死角になる所までシャーロットを連れていき、自らの体躯で彼女を覆い隠していた。
シャーロットは本棚を背に。アルトに迫られている状態だった。
「いやいやおかしいよ。デートって、こうもっと。健全な場所じゃないの?」
「健全て」
「健全。ほら、アルトが案内しそうなのは、もっとこう――」
売店。湖のほとり。温水プールは不純な理由はあったようだが、一応。空中庭園。そして、告白定番スポットの鈴が鳴る木。なんともロマンチックなものばかりだった。
だが、今はどうだと。シャーロットは思わずにはいられなかった。
「普通のデートスポットだけど? ……そういう発想、してくれてるんだ?」
「ア、アルト……!」
「あ、怒っちゃった? 俺、必死なんだよ。もっと、意識してくれないかなって」
本棚に手をついたアルトは、シャーロットのに顔を近づけて囁いた。今にも、二人の唇が重なりそうな距離だ。
「まあ、さすがにチューとか、それ以上はね。君が望んでくれるまで待つかなぁ」
「……」
アルトは顔を離した。シャーロットは睨みたくなった。前は問答無用だったのにと。
「……ねえ、シャーロット。俺、夢見るんだ」
「……夢」
シャーロットの見る夢は専ら鳥籠の夢だ。アルトはどんな夢を見るというのか。彼は向かいの本棚にもたれかかりながら、シャーロットではない。遠くを見ていた。
「話の流れからしてね。君にキスする夢。感触がリアルで、すごく柔らかかった。俺は歯止めが効かなくなってて。……君は涙を流しているのに、俺は止まらないんだ」
「アルト……」
アルトは目を伏せていた。彼にとって、望ましい夢のはずなのに。誰よりも彼が悲しそうだった。
「最初は、自己嫌悪で目が覚めていたのに。今じゃもう、それも薄れていた。――ああ、現実になったらなって。そう願うばかりになっていた」
アルトはシャーロットを見つめた。
「シャーロット。俺、もう止まらないんだ。君への愛が溢れ過ぎていて。……どうしようもなくて」
アルトは切なそうに言う一方で。その顔は――多幸感に満ち溢れてもいた。
「さてと。あと一箇所くらいは回れるかな?」
今回は一箇所ごとの滞在時間が長かったようだ。もうそのような時間となっていた。
「……ううん、十分。今日はありがとう。楽しかった」
「そう」
アルトはあっさりと応じた。これでお開きになるのなら、とシャーロットの心も軽くなった。
「……時間は、たっぷりあるからね」
よく聞くようになった、アルトの言葉だ。不安が残るものだった。
女子寮への帰り道。明日も一緒に過ごさないか。アルトからの誘いがあった。
「まだ案内したいところあるし。……下心満載だったの、反省してます。今度は明るいとこ、行こう? 園芸部がハーブティー提供してくれたり。ほら、モフモフスポットもあるから。従業員さん達が飼ってる子らがいて、人懐っこいみたいだよ」
まだまだデートスポットはあるようだ。自分の欲望寄りだったのを反省し、シャーロットが喜びそうなところまで提案してきた。
「あの、アルト。すごく魅力的なんだけど。私、女子寮の人達とお話してみたいなって」
やんわりと断ったのはシャーロットだ。女子寮の人と交流したいという理由もつけた。
「……そう」
アルトはそれだけだった。これも応じてくれた。何も言わないのが、逆に怖かった。
「ねえ、アルト――」
「気にしなくていいんだって。――時間はまだまだあるんだから」
「……」
時間なんてない。あと、一日二日だけなのに。それをどうにかしたくて、シャーロット達は繰り返しているのに。アルトはそればかりだ。
女子寮で時間を過ごして、自室でモフモフと戯れる。散歩にいけない分、リッカと遊んだ。
「……」
窓の外にあるのは、春の女神像だ。シャーロットは目に映しながらも、焦れてもいた。
ただ、待つ身である自分に――。
学園案内に入るのでしょうかね。一応は。




