面談室での対策会議。
郵便局員の訪れを待って、シャーロットは学園に向かうことにした。今回も門限を守らせることができ、モルゲンに面談室で話す流れとなった。
「……」
前と同じ流れだ。それが正しいかは、シャーロットにもわからない。
「……ひとまずは、警備強化はしといた方がいいよな。それは間違ってないはずだ」
モルゲンも確証はもてていない。苦い顔をしながらの発言となった。
面談室で二人と一匹になった。リッカは抱っこされることなく、椅子の上にちょこんと座っていた。
「……先生。予告状って、本当に届けられたものじゃ――」
「ああ、偽造だ。なりふり構ってられなくてな」
「先生、危ないのでは」
「ああ。承知の上だ。……お前達を失わなくて済むならな」
モルゲンは覚悟を決めていた。現にそれもあって、金糸雀隊や警備兵も巡回してくれている。シャーロットは頷いた。
「あとは、アイツだな。アルトさえ大人しくしてくれば」
そうアルトが暴れなければいい。前にそうさせてしまった原因は、シャーロットにもあった。
「……ごめんなさい! 私なんです。私が余計なことを、言いました」
「そんな気はしてた。アルトに話したんだろうなって」
「ごめんなさい。アルトにはもう話さないです。今度こそ、ちゃんとしますから」
シャーロットは謝るしかなかった。それだけでは済まされない。同じ過ちはしないようにしていた。
「シャーロット」
「……?」
片肘ついたモルゲンは、温かな目でシャーロットを見守っていた。
「お前を責めるつもりはないからな。気、張り過ぎんなよ。前にも言ったな」
「……はい」
「お、覚えてるな。なら、それこそちゃんと、な」
「……はい」
「返事だけはいいのかねぇ。まあ、リッカもついてるぞ。なっ?」
立ち上がったモルゲンは、リッカの背中を撫でた。汚れようと構わないと思っていた彼だったが、手の平をみて首を傾げた。
「リッカ。お前綺麗にしてもらったのか?」
「えっと。前はしてもらったよ。でも、今だとまだ」
言い方合ってる?とリッカも首を傾げた。可愛かった。可愛いから二人はヨシとした。
リッカが言わんとしていること。前のループの時は、面談室から帰ってきた後に体を拭いていた。だが、今回の現時点ではそれが行われていない。黒ずみワンコのままのはずだ。
リッカは、前回の清潔さが保たれているようだた。それは前々回の彼の空腹状態もそうだった。
「……わからんな」
「……わかりませんね」
モルゲンもシャーロットも不可解と思いつつも、中々に答えを出せない疑問だ。今は置いておくことにした。
「それでは、先生。今回もよろしくお願いします」
「ああ、よろしくな。――と、帰る前にだ」
モルゲンはまだ話があるようだった。帰ろうとしたシャーロット達は立ち止まる。
「――アルトとなんかあったか」
後ろに立つのはモルゲンだ。
「アルトはわかりやすいけどな。……シャーロットが、変わった気がしてな」
「私が……前回のループを、引っ張ってるだけかもしれないですね」
モルゲン相手においそれと言うことでもなくて、シャーロットも言いたくはなかった。
「……まあ、いい。アルトには話さないんだな。なら、あいつに嗅ぎつけられないようにな」
「はい……」
シャーロットは振り返った。これまでの失敗。また、得たことを。――だから、今回はそうする。
兵隊の巡回は行われている。ならば、シャーロット自身は部屋で大人しくしている。リッカの散歩も控えた方がいいだろう。そして、アルトには話さない。明日、彼いわく『学園デート』に誘われているが、疑われない程度に距離を置いた方がいいだろう。
その日もシャーロットは女子寮でお世話になり、鍵を受け取り。そして、リッカと就寝。
――ガチャ。
「……!」
今回も一回だけ回されたのは、部屋のドアノブ。起きたリッカが唸っている。
「だ、誰ですか……!?」
「……」
シャーロットは相手に呼びかける。返事はない。リッカは唸り続け、玄関の方を見たままだった。
「見てくる!」
「シャーリー!?」
相手は得体の知れない相手だ。それでも何かの手がかりになるだろう。シャーロットは扉を開けた直後、手を構えた。リッカも慌てて彼女に続く。
姿はなかった。シャーロットが左右確認しても、いなかった。リッカも鼻をクンクンとはする。やっぱり匂いはしないとごちていた。
謎は残るまま、一日が終わっていった。




