アルトと学園デート。――乙女心全開編。
シャーロットは失念していた。アルトとの待ち合わせの場所まで決めていなかったのだ。階段を下りていったところで、寮長とばったり会った。
「おお、シャーロット君。丁度良かった。アルト君が迎えにきていてね。玄関で待っていてくれているよ」
「はい、ありがとうございます」
「――ああ、そうだ。制服も用意されているからね? 君の部屋にすでにあるんじゃないかな」
「はい、わかりました……?」
突然の制服に関する話。ニヤニヤしている寮長を不思議に思いつつも、シャーロットはアルトの元へと向かった。
またしても寮生達が遠巻きに見ていた。リッカがモフモフ欲に駆られるのなら、こちらは近寄りがたい憧れの存在といえた。
「……」
視線が集まるアルトは居心地が悪そうだった。それでも、彼の顔はパッと明るくなった。シャーロットの姿を見かけたからだ。
「おはよー、シャーリー!」
アルトは手をぶんぶん振っていた。その姿は大型犬を彷彿させるものだった。
「おはよ、アルト――」
「……あの、さ。シャーリーにお願いがあってさ。制服着てくれないかな? もちろん、嫌だったらいいんだけど! と言いつつも、着て欲しいです、お願いします!」
アルトが着ているのは制服だった。一方、シャーロットは昨日洗って乾かしたものの、若干汚れが残っているいつもの服だった。
「また待たせることになるけど。いい?」
「全然いいです!」
それならと、シャーロットは自室に戻ることにした。
「ぐーすぴー」
部屋に戻ると、リッカは仰向けになって寝ていた。大爆睡だった。が、すぐに飛び起きた。
「はっ!? シャーリー、僕寝てた!」
そう、リッカは寝ていた。それでもいいんだよ、とシャーロットはええ顔をした。
「うん……」
リッカはすぐ落ちた。また爆睡していた。
寮長の話し通り、クローゼットに制服がかけられていた。サイズのことが気になっていたが。
「おお」
試しに着用してみると、サイズが伸縮し始める。シャーロットにぴったりのサイズとなった。デザイン自体はシャツにブレザー、スカートと定番のものだった。
アルトが着ていたのも、ブレザータイプのものだった。そういえば、アルトは制服はきちんと着ていた。シャーロットはぼんやり思い出す。
リボンの種類がいくつかあったものの、シャーロットは待たせるのも悪い気がしたので、一番左のものを選んだ。アルトのネクタイと同じものだったが、色が被っても彼は文句を言ったりはしないだろう。リボンを着用すると、あとはアルトの元へ。
「お待たせ、アルト」
「シャーリー!」
野次馬寮生達は散り散りになっており、ぽつんとアルトが待っていた。彼には悲愴感は全くなく、終始笑顔だ。
「お待たせ、とか。こんなんデートの待ち合わせじゃんか……!」
アルトはいちいち萌えていた。制服姿の彼女を見たことにより、興奮もしていた。
「おおお、制服シャーリーだ! こんなん制服デートじゃんか……!」
シャーロットの周りをぐるぐると回る。三百六十度シャーロットを堪能していた。
「おおお、リボンとネクタイ同じ色だ! こんなん運命じゃんか……!」
「き、奇遇だね?」
文句どころか、感激までしていた。シャーロットは黙っておくことにした。適当に選んだことを。
「じゃ、じゃあ、行こうか。シャーリー、お手をどうぞ!」
「お手を、って」
顔を真っ赤にしながら、アルトは手を差し出してきた。手を繋ぐということだろうか。シャーロットが逡巡していると、アルトがみるからに落ち込んでいた。
「だよね、まだ早いよね!……はあ、いつかは繋ぎたいなぁ」
落ち込みと思いきや、切り替えは早かった。夢まで見ていた。
「そ、そう……?」
シャーロットは彼がちょっとわからなかった。抱きしめはするわ、未遂だがキスもしかけてくるわ。かといって、極端に奥手にもなったりする。
「今日はよろしくね」
「よろしくされたんで、頑張ります!」
張り切るアルトとシャーロットは学園巡りを開始した。
「ね、シャーリー美味しい?ほおばるシャーリー可愛いなぁ」
学園の購買部は休みということで、外の売店でフルーツサンドを購入した。ベンチで並んで座り、食べている。というより、食べているのはシャーロットだけだ。
アルトの食は進んでない。胸がいっぱいでとのことだった。
「湖、綺麗だねぇ。シャーリーはもっと綺麗だけど!」
アルトは一人で照れていた。二人は湖のほとりにいた。済み渡った湖を、二人並んで眺めていた。晴れの時に見せたかったとアルトは言っていた。
確かに今は曇り空だ。今頃外も吹雪いていることだろう。
「温水プール! 今回は外側から見るだけだけど。水泳部が練習してるし、水着まで用意されてないでしょ? シャーリーの水着姿とか。ああ、にやける……。駄目だ、妄想禁止!」
こちらの世界に温水プールがあることにシャーロットは驚いていた。それもあって、アルトの話を聞いてなかった。
ごめんと聞き返そうとすると、アルトは羞恥プレイを強要されたと嘆いていた。シャーロットは距離を置きたくなっていた。
「ほら見て! 綺麗でしょ? ふふ、花と戯れるシャーリーは良いなぁ……。ずっと見ててぇ……」
そこに至るまでに長い階段があった。実際は自動階段となっており、彼らを乗せて進んでいった。
そこは空中庭園。季節関係なく、色とりどりの花が植えられていた。空も近く、上から見る景色は絶景あった。
「――で、ここが鈴が鳴る樹。この樹の下で両想いになった二人は、永遠の仲になるんだって……!」
木々に鈴が鳴っている幻想的な空間に連れてこられた。風の音と共に鈴が鳴る。耳に響く良い音だった。アルトはちらちらシャーロットを見ていた。
シャーロットはこれまでを振り返り、素直な感想を抱いた。――アルトは乙女だなと。
そして、彼が案内してくれたこれらのスポットは見事にデートスポットだった。モルゲンが案内してくれた場所と被った場合、初めてのふりが出来るか。シャーロットは気にしていたが杞憂だったようだ。
「告りたいなぁ……。でもなぁ……」
アルトはまだ、ちらちらシャーロットを見ていた。
学園案内のはずなんですけどね。




