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モフモフ、頑張る。

「……ん?」

 シャーロットは夜中に目が覚めた。足元から謎の言葉が聞こえてきた。シャーロットは耳をすます。

「……アリュトモリュゲンアリュトモリュゲンアリュトモリュゲンアリュトモリュゲン」

 モフモフが真夜中に呟いていた。このド真夜中に。一定のリズムでである。リッカなりに克服しようとしていたのだ。未だ、繰り返されている。

「……」

 シャーロットは恐怖した。それでも、懸命なモフモフの努力を無碍にはしたくはなかった。

「う……」

 シャーロットは足元からの呟きに苛まれながらも、眠りにつくこととなった。

 

 犬の呟きのせいで、シャーロットはまともに眠れずにいた。

「……今度は、なに?」

 扉の方からも音がした。――一回だけ回されたドアノブ。

「え……」

 足音すらもない。誰かがいるのか、また去ったかもわからない。

 単なる聞き間違いだろうか。いや、そうでもない。

「ぐるるるる」

 リッカが扉の前に向かって唸っていた。ずっとだ。

「……」

 しばらくすると、リッカは静まった。ベッドから下りた彼は、床で体を休めていた。

「リッカ……? 守ってくれたの?」

「……」

 寝息を立てたリッカは何も言わない。シャーロットは一息つく。

「だ、誰かが部屋間違えたとか……」

 わからないだらけだ。この状態で眠るのは困難だ。シャーロットは目だけ閉じて体を休めることにした。


 ぺしぺしと顔をたたく音がする。シャーロットは寝不足の中、目を開ける。

「シャーリー、おはよう」

「おはよ……」

 ベッドの上に乗ったリッカが、寝ているシャーロットを見下ろしてきていた。

「……あのね、シャーリー。気をつけて。昨日、だれか来てた。匂いもないから、僕にもわからない」

「匂いが、ない」

 それはこう、怖い話か何かか。シャーロットは顔を蒼白させた。

「でも、ニンゲン。そう思うんだ」

「……そっか、リッカ。ありがとね」

 守ってくれたリッカの背中をシャーロットは撫でた。

「じゃあ、朝ごはんだね。リッカのも用意するからね」

「へっへっへっへっ」

 リッカは途端におなかを盛大に鳴らした。


 自分達の朝食を済ませると。シャーロットは仮眠をとることにした。ほぼ一睡もしていない同然でもあった。

「わかった、シャーリー。僕が起こすね」

「ありがとう、リッカ……」

 約束の時間となったら、リッカが起こしてくれるようだった。

「……」

「へっへっへっへっ」

 犬が見ている。

「……」

「へっへっへっへっ」

 枕元でリッカがお座りをして、シャーロットを見ている。じいっと見ている。

「……やっぱ、大丈夫だよ。リッカ」

 シャーロットは落ち着かなかった。

「シャーリー。ちゃんと寝て」

 リッカがトントンと叩き始めた。横向きに寝ていたシャーロットの肩を布団の上から叩いていた。それは寝かしつけるリズムだった。

「ふふ……」

 冬花の頃もそう。孤児院時代のシスターもそうだった。懐かしくて温かい気持ちになったシャーロットは眠りについた。


 数時間の睡眠だけでもとれてよかった。シャーロットは仮眠から自然と目を覚ました。

「すぴー」

「……」

 リッカは枕元で爆睡していた。シャーロットは責めはしなかった。

「じゃ、行ってくるね」

 リッカの背中をひと撫ですると、シャーロットは部屋を出た。

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