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少女の前世。――教師への恋。①

ご覧いただきまして、ありがとうございます。

少女の前世の話です。どうしても暗くなってしまいます。若干鬱めであります。

前世の話が終わったあたりで、概要を用意するように致します。

『大雪により、交通規制されております。なお、○○線でも大雪により運行が止まっており――』

「……」

 スマホの動画ニュースが教えてくれた。突然の大雪、それによる影響。それはこの少女にももちろん与えていた。

 今、少女も含めた首都に住む人々らは、大雪にさらされていた。駅前の大型スクランブル交差点、信号を待つ彼らにも容赦はしてくれない。傘をさしても、強風でひっくり返っていた。

「あ」

 信号は青になった。人々は一斉に動き出す。少女は手元のスマホを確認すると、画面を閉じた。イヤホンの接続も切る。

 少女、皇冬花は高校三年生だ。今は、十二月。大学受験も控えてた。

 手入れのされた長い黒髪は下ろされていた。マフラーごとひっくるめている。今着ているのは、学校の制服でも指定のコートでもない。冬花は私服だった。

ジャケットの下はニットにパンツだった。普段着ないような、大人びた服装だ。

 元々の大きな瞳が、さらにアイメイクによって強調されていた。発色の良いリップで唇も艶やかだ。高校生である自分が、少しでも大人びてみえるように。

「バスも運休」

 目的の場所へ向かうのにいつも利用していたバス。運休だった。

「……歩こ」

 バスに乗っていても、そこそこ時間はかかる。歩きとなると尚更だ。それでも冬花は歩くことにした。帰るという選択肢はなかった。

 猛吹雪が少女の体をうちつける。強風によって視界はさえぎられており、薄目で確認するしかない。積もる雪によって歩くこともままならない。

 それでも少女は。ひたすら歩き続けていた。


「ふう……」

 マンションのエントランスに到着して、冬花はひと息つく。整えた身なりも、吹雪によって台無しになっていた。少女は髪だけでも手で整えた。

 冬花はオートロックのインターホンを鳴らした。こうして待つ間、そわそわしていた。

「ふふ」

 ここに、彼女の逢いたい人がいる。久々に二人きりで逢える。その為ならば、背伸びをしたオシャレも。猛吹雪だろうと嵐の中だろうと、彼女は厭わなかった。

「……?」

 いつもなら早めに出てくれるはずが、中々出てこない。冬花はもう一度インターフォンを押してみた。それでも返答も何もない。

「――はい、どちら様でしょうか」

「!」

 女性の声だった。大人の女性だ。冬花は絶句してしまう。

「女の子……?」

 女性から怪訝な声が聞こえてきてしまっていた。少女は咄嗟にしゃがんだ。それでも、相手の目には映ってしまっただろうが。

「何だったの?――ううん、今の気にしないで?押し間違いだと思うわ」 

「……」

「ね、郁也……?」

 そこからプツリと音声が切れてしまった。冬花は屈んだまま、口元を覆う。

「女の人……?」

 大切な人の部屋に、女の人。冬花はその事実に眩暈がしそうになる。親族かもしれないが、あんな言い方をするだろうか。あんな、蠱惑的で。煽情的な呼び方をするのだろうか。

「あら?あなた、大丈夫?」

「……!」

 エントランスまで下りてきたのは、女性だ。気負わない自然なメイクである、その人はとても美しかった。彼女が備わってきた美貌や色香は。――冬花では太刀打ちが出来ない程で。

 先程の女性だろうか。うずくまった少女を心配もしていた彼女は、あら、と口元に手を当てる。

「あなた。さっき、インターフォン押した子?彼の部屋に用かしら?」

「あ……」

 女性は微笑んではいても、疑いの目は向けていた。少女は返答に窮していたが。

「……押し間違いです。すみませんでした」

 俯いたままになってしまったが、女性にはそう伝えた。

「あら、そうなの」

 女性はそれで納得してくれたのか。お大事に、と冬花の横を通り過ぎようとする。

「――なんてね。あなたも大変ね」

「え」

「私もそうなの。中々ね、彼の本命にはなれないのよ」 

「!」

「ああ、そうそう。もう彼、出られる状態だから。早く行ってあげたら?あまり真に受けないようにね?彼、思わせぶりだから」

 女性はそう言い残して、マンションをあとにした。冬花はその姿も見ていられなかった。

 少女の中で、何度も繰り返される。

――彼の本命にはなれない。

――彼、出られる状態だから。

――郁也。

 冬花につきつけてくる言葉。

「……」

 冬花にまとわりつくのは不安だ。果たして、このまま逢いにいっていいのかと。このまま帰った方がお互いの為になるのではないか。冬花は思い悩んでいた。

「……中々来ないと思ったら。具合、悪いのか?」

「あ……」

 息を切らしながらやってきたのは、男性だった。下ろされた前髪、着崩れたシャツ。羽織っただけのコートに、ひっかけただけのサンダル。いつも外で見せる完璧な姿と違う、素の彼だった。

「歩けるか?冷えてるな、このまま俺の部屋行こう」

「私は……」

「歩けないのなら抱えていく」

 男性は冬花の返事を待たずに、抱き上げようとしていた。少女は慌てて返事をすることにした。

「すみません、歩けます。歩けますから」

「そうか。じゃ、掴まって」

「はい……」

 冬花は遠慮がちに彼の腕に掴まった。筋肉質の腕だ。体格もそう、精悍な顔立ちもそう。自分とは年が十分に離れている。大人の男性だった。

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