教師の案内、突き刺さる視線。
初等部と中等部の校舎は、戻りがてらに確認した。通常ならば、シャーロットも通っていたはずだ。
「心配することはない。高等部一年生からだ。中途にはなるけどな」
「はい」
シャーロットの年齢的にもそうなった。彼女は納得した。
また広場に戻ってきた。ここで十字路奥、まっすぐに進むと。高等部の校舎となる。
「……いない」
あの犬の姿はなかった。ひょっとしたら戻ってきているかと、シャーロットは思ってもいたが。そうではなかった。
「どうかしたか?」
「いえ、すみません」
モルゲンが先を行っていた。シャーロットは急ぎ走っていく。
「おいおい転ぶぞ」
「いえ、転びません。もう転びませんから!さっきのは違うんです。本当に違うんです。わざとじゃないんです!」
「……その状態で来られるとな、ほんのり怖いぞ」
シャーロットは蒼白しながら走り迫ってきた。待ち受けるモルゲンもまた、恐怖していた。
誰かへの弁明でもあるようだった。彼がいかに人気教師なのか。シャーロットは十分に思い知らされた。先程の謎の視線に対しても、誤解しないでほしいと。アピールしていた。
「ふう、これでいいかな。わかってくれたかな……?」
「お前はどこを見て言ってるんだ……」
モルゲンからしたら、突然の奇行でしかなかった。恐怖そのものだ。
「……まあ、いい。まずは購買部だ。校舎外にもあるにはあるが、ここが一番大きい。大抵のものは揃っている。あとは、食堂だな。寮や自室でもいいけど、本格的だぞ。それから――」
モルゲンは玄関にある掲示板で示していく。そして、一通り口頭説明は終えたようだ。
「承知しました。こちらの案内図、参照にしていきますね」
手短に済ませてくれたんだなと、シャーロットは了承した。これで彼の案内が終わったと思ったが。
「いや? 直接回るぞ? まさか、説明だけで終わりと思ったか?」
「はい、思いました」
「正直だな……」
「はい。十分ですし、わかりやすかったですし」
さすがは教師か。短時間でシャーロットは学園をある程度掌握することが出来た。そもそも通うのも本決定ではない。時間を割いてもらうのも申し訳なかった。
「わかった。よし、行くぞ」
「えっ」
「終わりじゃないってことだ。まだ俺についてきてもらうからな?」
モルゲンはしたり顔で言った。その申し出自体は有難い。シャーロットは甘えることにした。
「すみません、お付き合いください……」
「……あ、ああ」
「!」
モルゲンが目をそらした。シャーロットはハッとした。お付き合い、とは。
「本当に違うので。違いますからねー?」
「誰に向かって何を言ってるんだ……」
シャーロットの奇行は未だに怖ろしいままだ。
「もちろん、モルゲン先生もです。ご指導ご鞭撻お願い致します」
何より目の前の人物にも訂正すべきだと考えた。シャーロットはビシっとした。
「振り幅大きいな……」
気を取り直して。モルゲンはガイドも兼ねて学園内を散策することにした。シャーロットもついていく。




