彼に守られる日々。―リヒターメリバルート突入中②
午前の授業が終わり、昼休みとなった。いつもなら真っ先に食堂に向かうリヒトが、悠長にシャーロットを見つめていた。
「あのさ、リヒトさん?カイゼリン様、待っていない?」
「?」
またしても首をかしげてきた。シャーロットはもう言わない。可愛いと思ってはいても、言いはしなかった。
「……可愛いという言葉、待っていましたが」
「か、可愛い……」
しょぼんとするリヒトがいじらしくて、シャーロットはうっかり口にしてしまった。リヒトのしてやったりの顔を見て、シャーロットは顔を赤くなった。
「シャーロットさん。今は昼食の時間ですよ。私とあなたが食事を共にする、大切な時間です。では、参りましょうか」
「うん……」
そう、昼食も二人で摂る為のものだ。リヒトが立ち上がったので、シャーロットもそうした。リヒトは並んで歩いてくれる。シャーロットも笑顔で彼の隣にいた。
「シャーロット!」
別の教室から出てきたのは、アルトだった。彼はどこか焦っているようだった。
「アルト、どうしたの?」
「どうしたのって……」
アルトはシャーロット、次にリヒトを見た。見た上で、アルトは提案する。
「……お昼。俺と一緒に食べよう。リヒター、悪いけどさ。この子、俺と食べるから」
「アルト。―リヒトさんだよ?みんな、リヒターリヒターっていうけど」
「シャーロット……?」
アルトの焦りが伝わってないのか、シャーロットは呑気に笑っていた。
「いいえ、シャーロットさん。あなたがそう呼んでくれれば充分です。……アルト様も、せっかくのお誘いではありますが。こちらが先約ですので」
リヒトはシャーロットの肩を抱くと、そのまま食堂へと向かっていった。
「待って、シャーロット―」
「……?」
誰かが、名を呼んだ気がした。シャーロットは振り返るも、そこにあるの人の群れだけだ。人並みに溶け込むかのように、彼の姿は見えなくなった。
「さあ、シャーロットさん」
「うん」
シャーロットの隣には、リヒトがいる。いつものことだ。
リヒトが用意してくれたのは、テラス席。今日も湖が綺麗だ。栄養バランスがとれており、見た目も美しい昼食。調和がとれたものたち。
「美味しいね、リヒトさん」
「ええ、シャーロットさん」
並んで座る二人は絵になっていた。シャーロットは気づくこともなく、食事と、そしてリヒトに夢中だった。
放課後になると、自治委員会の時間だ。
「そうだ、シャーロットさん。お渡ししておきたくて」
「リヒトさん、こちらは?」
シャーロットは包みを渡された。ずっしりと重みがあるものだ。
「近くの更衣室にてお着替えください。―委員服です」
「えっ。私が着てもいいの?」
シャーロットは補佐の補佐だ。委員会所属だが、正規の存在ではない。そのこともあって、これまで制服のままだった。
「はい、あなたの為のものですから。―もっとも」
リヒトが触れてきたのは、シャーロットの制服のリボンだ。
「あなたの制服姿も愛らしかったのですが。知ってましたか?こちらの色が基本なんですよ?学園創業時の指定の色でした。模範的な色です」
リヒトは手遊びでリボンに触れてきている。掬い上げたり、引っ張ってみたり。
「……おっと、いけませんね」
目をそらしながら、リヒターはリボンから手を離した。
「……もう、リヒトさん。人が見ているから」
リボンに意識がいっていたリヒトは気づかなかっただろうが、シャーロットはクラスメイト達の好奇の眼差しに気がついていた。シャーロット一人が恥ずかしい思いをしていた。
「着替えてくるね」
照れ隠しでもあったが、シャーロットはリヒトを残して更衣室に出向いた。
しばらくして、着替えて戻ってきた。厚手素材の詰襟制服、スカートタイプだった。独り言を言っていたリヒトは反応が遅れたが、彼女を称えた。
「……そうか、人の目がなければ。―ああ、シャーロットさん、お似合いですよ。あなたの為の服ですね」
「言い過ぎだけど、ありがとう。お待たせしました」
「いえ。では、参りましょうか」
リヒターの手をとったシャーロット。二人の手は繋ぎ合わされる。仲睦まじく、委員会へと赴くこととなった。




