彼に守られる日々。―リヒターメリバルート突入中①
翌朝になった。シャーロットは一人で起きた。リッカは確か―。
「アルトのところでお世話になってるんだった。申請書、提出しなくちゃ」
シャーロットは机の上の書類を確認した。不備はないはずだ。これで、リッカも学園公認の犬となる。
シャーロットは身支度をし、制服に着替える。リボンは一色のみ、―金色だ。
シャーロットは初登校となった。久々の学生生活は緊張するが、シャーロットは胸を張った。自分は自治委員だ。自信を持っていればいいと。堂々と歩いていく。
シャーロットは怖れはしなかった。―彼がいてくれるからだ。
シャーロットの担任である小柄な女性に案内されて、シャーロットは自分の教室に到着した。視線が集中する。シャーロットは深呼吸をし、生徒一人ひとりに視線を向けた。
「初めまして、シャーロット・ジェムです。エーデル村で店を営んでいました。学園生活は不慣れな点もありますが、慣れていけたらと思います。好きなのは、犬―」
そう、犬も可愛い。だが、自分はこっちだろうと。シャーロットは言い直した。
「―紅茶が好きです。皆さんとも早く仲良くなりたいです。お茶を飲んだり、お話も楽しめたらと思っています。よろしくお願いします」
シャーロットは好きなもの以外は淀みなく言い切った。言い終えたシャーロットは微笑んでいた。
拍手が聞こえた。シャーロットはその方向を見ると、より顔が華やいだ。
―彼が、リヒトがいてくれる。柔らかい表情でシャーロットを見つめていた。
リヒトの隣の席が空いている。廊下側の席だ。担任教師がそこに座るように言ったので、シャーロットは喜んで席に着いた。隣に座った二人は笑い合った。クラスメイト達も微笑ましいと見守っていた。
「……」
ただ一人を除いて。
朝礼が終わると、ある男子生徒がやってきた。彼はシャーロットを見てにこりと笑った。
「キミ、編入生ちゃんだよねー?でもって、シャーリーちゃん!同じクラスって運命的ー!あ、オレはね―」
「シャーロットさん。彼はロルフ・ヴァールザーガー様です。とても快活な方ですので、話しやすいかとも思います。男子寮の寮長も務められてます」
「そうそう!リヒリヒ、宣伝ありがとー!オレともいっぱいお話しようねー!」
「だそうです。どのご婦人にもこのような感じですので、適当にあしらえば宜しいですよ」
「えっと、ネガキャンされちゃってるぅ?……つか、リヒリヒで怒らないん?」
「何故でしょうか。私は、リヒト・リヒター。略せばそうもなるでしょう。―さて」
リヒトの方で男子生徒の相手を済ますと、彼はシャーロットだけを見ていた。
「ご用件は終わったのでは?あと、そうなりますと私も運命にあてはまるかと」
「いや、終わってないし、そういうことも言わないで!シャーリーちゃん、色々教えてよー。お店のこととかさ―」
この男子生徒があれこれ話しかけてくれる。シャーロットも返そうとするが、リヒトがうまい具合に割り込んできた。そうこうしている内に予鈴がなった。男子生徒の席は窓際だ。もう席に着いた方が良かった。
「挨拶遅れてごめんね。これからもよろしくね」
やっとこの男子生徒と会話ができた。シャーロットはこれだけでも伝えたかった。
「……うん、よろしくねぇ。ねーえ、シャーリーちゃん?―気持ちをしっかり持ってね」
「え……」
彼はそれだけ言い残して、自分の席へと着いていった。
「彼は今、なんと?」
シャーロットにだけ聞こえる声だった。リヒトが胡乱な瞳を向けていた。
「えっと、普通によろしくだけかな」
別に最後の方も言ってもよかった。だが、シャーロットは何故だろうか。リヒトには言えずにいた。
「……まあ、よいでしょう」
「って、リヒトさん。休憩時間でしょ。カイゼリン様の元へいかなくていいの?」
こうして自分と話している場合ではないと。シャーロットは気持ち急いていた。
「?」
首を傾げているのは、リヒターだった。彼もこうした仕草をするのか。内心可愛いとシャーロットは思っていた。
「いや、可愛いとか思ってる場合じゃなくて。だって、あんなにも」
「いえ、何故でしょうか。休憩時間ですよ?休む為の時間ではありませんか?」
「それはそうだけど……」
リヒトの言う通りだった。思い思いに過ごす時間なのだ、休憩時間というものは。
「……可愛い、ですか」
リヒトはどこか照れていた。それこそ、言われ慣れていない言葉だったようだ。
「……可愛い人に、可愛いと言われました」
「ちょっと、リヒトさん……」
完全に二人の世界だった。それは次の授業の教師が来るまでも続いていた。




