シャーロット画伯による、情報共有。
一連の流れを経て、シャーロットは教職員寮の面談室まで足を運ぶ。ここではリッカ達が待っていてくれるだろう。ノックすると返事がきた。
「ああ、入ってくれ」
今回迎えてくれたのはモルゲンだった。アルトは椅子に座っており、リッカはアルトの膝の上に座っていた。
「失礼します。早速ですが、あの後のこと、教えてください」
アルトが隣座ってと促してきたので、シャーロットも座ることにした。モルゲンは壁際に立ったままだ。ここから、兄弟にも共有していく。
「……」
「わかった、説明する。といってもな」
堪えているアルトに代わって、モルゲンが説明することになった。
「あやふや、なんだ。一日早まったこともあるが、そのまま大晦日まで、ということもなかった」
「それって、まるで……」
モルゲンはただ、頷いただけだ。彼としても言葉にはしたくないのだろう。これでは。
―シャーロットが死亡した時点でループが途切れているようだと。
断定はできない。現に、シャーロットの死後も時間は経過していたりする。
「ただ、シェリアの死亡状況なら。大騒ぎになったからな。……体に損傷はない。毒死だった。あの警備を掻い潜っての犯行だった」
「カイゼリン様……」
綺麗な状態で死んだのだのか。それでも苦しかったには違いないだろう。
「……」
見知った人だからこそ、余計に死が辛い。シャーロットは早く解決したい思いだった。
「私からは、あの夜中に来た人についてです。―憶測ですが、あの人は犯人ではないと思います。私が氷の力で拘束してましたので」
あくまで憶測だ。シャーロットはあの男を氷の力で拘束していた。氷を打破されたといわれればそれまでだった。あくまで可能性として低いと判断したのだ。
「すみません。名前まで確認できれば良かったのですが、まずは巡回している人に報告をって、考えてしまって。……せめて、似顔絵を描いてきました」
シャーロットは出発前に用意していた。それを彼らに見せる。シャーロット画伯によるものだ。
「おお。随分と愛らしいおじさんだな」
「おお、シャーロット先生の作品だ。欲しいけど、でも、知らんおっさんだし……。ぐぬぬ……」
頬がこけたパッチリ目の可愛らしい中年男性が描かれていた。シャーロットはただ恥ずかしかった。スマホは無い物ねだりとして、撮影用具を携帯していればと後悔していた。
「いや、特徴は捉えているぞ。うん。……生徒の親御さんか?見たことはある気はするんだけどな」
「ごめん、シャーロット。味のある素晴らしい絵だけどさ、俺はちょっとわからない」
この似顔絵から割り出すのが困難だった。それでも、もう一度探ってはみるとは彼らは言ってくれた。
「それでだ。シャーロット、今回も自治委員会に入るのか」
「はい。入らなかった場合、それこそ最初の展開になってしまうと思いまして」
「……だな。お前に苦労かけるな」
「いいえ」
また自治委員補佐の補佐として、多忙な日々を送ることになるだろう。それでも生きる道につながるなら安いものだ。シャーロットはそう考えていた。
「……俺、課題ここから本気になるからさ。速攻で終わらせるし、そしたらさ。君の負担を減らせるなって」
「俺の方も協力は惜しまない。裏で手を回しておく。本来、こいつの学力なら必要ないものだしな。もちろん、シャーロットの事もだ」
アルトの課題問題はどうにかなりそうだ。その上で、アルトは提案する。
「リッカも心配でしょ。俺のとこで面倒みるから」
「アルト!」
リッカが尻尾を振った。リッカがいいのならと、シャーロットはお礼を言った。彼ならしっかり面倒見てくれるだろう。
「俺も面倒見るからな、リッカ?」
「うん、ありがとう!」
リッカはモルゲンにも尻尾を振った。時間が空いたときにでも会いにくればいいと、リッカのことも大丈夫そうだ。
「うう、リッカ……。ちゃんと申請書は出しておくからね」
寮に帰ってもリッカはいない。シャーロットはとても寂しい。それでもリッカが笑顔ならいいと思うことにした。これで学園の許可も下りれば、心配事もなくなるだろうと。
「じゃあ、要の自治委員会だな」
「はい、お願いします」
シャーロット達を待つのは、自治委員会だ。被害者となる、シェリア・カイゼリン。そして。
『……シャーロットさん!?……何故ですか、何故あなたが!!』
「……」
―リヒト・リヒター。あのような悲痛の叫びを上げていた彼だ。
リッカは本物だったが、あの時のリヒターは幻ではないかと。シャーロットは今でもそうは思う。ただ、心のどこかでは―。




