瞳
昨日から気になっていた<リト> について、色々聞けてスッキリした。
……ような、なんか逆に頭がこんがらがっているような?
とりあえず一番気になっていたことが聞けたので、まあいいか。
一旦考えるのは辞めることにしよう。
そんなわけで、池まであともう少しのところだが
休憩がてらポチのご飯を探すことにした。
どんぐりをポチの方に2、3転がして、木の根元で腰を下ろす。
右隣には瞳を輝かせながらどんぐりに齧りつくポチ。
静かな森にポチがどんぐりを齧るカリカリ音だけが響き渡る。
……なんというか、癒されるな。
前世でモフ助がカリカリを食べている時も、同じように癒されたものだ。
ポチが少し愛おしく感じて、そっと横を盗み見る。
キラッと光るポチの瞳に映るのは、美味しそうなどんぐりだけだ。
[なんだか、ポチの瞳って素敵な色だね。]
ふと言葉が漏れる。
今日他のリスたちに会って気づいたが、
ポチの瞳は普通のリスのそれとは少しだけ違う。
元の色にそこまで違いはないのだろうが、
上から薄くグレーのような青のような、澄んだ色味を纏っているように見えたのだ。
一旦お腹が落ち着いたのか、食べる手を止めてポチが言う。
[ああそれ、多分<リト>に近い者の証だよ。]
[<リト>に近い者?]
[そう、いわゆる血縁だね。
血で繋がっている者はお互いに、そういう不思議な光に導かれるんだ。僕は目なんだね。]
そういうとポチは、残りのどんぐりを両頬に詰め込み出す。
ちなみに私は全身がほのかに明るく見えているらしい。
グレーの毛並みは、土で汚れていても美しく白銀に輝いており
澄み切った青い瞳に、少しだけ星のような光が見えるのだという。
自分の姿といえば、池の水面の反射でしか見たことがなかったので
目が青いことは指摘されて初めて分かった。
星が煌めく青い瞳……幻想的だ。
いつかしっかりと見てみたいものである。
そういえばさっき村で見た瞳も、とても綺麗だった。
もしかして、あの人間も<リト>に近い者なのだろうか。
そうしてすっかり物思いに耽っていると、
どんぐりを入るだけ、頬いっぱいに詰め込んだポチが出発の合図を出した。
ポチは歩きながらも、あそこのどんぐりは一味違うんだよね、と
パンパンに張った頬なんてお構いなしに会話を続けている。
もしかしなくても、そのどんぐりを拾うためにこのルートを提案したな。
さりげなく自分の目的も達してしまうちゃっかりポチさん。
さすがである。
ポチの頬を呆れ顔で眺めつつ、あの頬で口を開いたらどんぐりが滑り出てきそうだから
こんな時念話って便利だな〜と、ひとり感心していると
木々の隙間から、遠くに水辺が見えた。