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不思議な森

優は周りを見渡して呆然としていた。




まだ陽が高い位置にあるにもかかわらず、薄暗い森の中。




青々とした緑を覆っているのは、オーロラのような不思議な色をしたモヤだ。

色からして神秘的で、この森の雰囲気を形作っている。


雲のようにも見えるが、こんな低い位置に出来ようはずもない。

息苦しく感じないから、雲ができるほどの標高というわけでもなさそうだ。




この煙のようなモヤは一面に立ち込めてはいるが、

どういうわけか自分の周りにはモヤは全くない。


自分というか、おそらく<黄金もふもふの花>(仮称)の周りには来ないようだ。





改めて、自分が出てきた元であろう<黄金もふもふの花>をまじまじと観察する。



花弁のような蕾のような部分が、微かに黄金色に発光している。

(人が中に入れるようなサイズには見えないけど… )


外観は全くもふもふしておらず、茎のようなものが地面から生えているので植物のようにも見えるが、生き物が生まれる植物なんてあるのだろうか。




…まあそもそもここがどこかもわからないし、考えても仕方のないことなんだけど。







<黄金もふもふの花> の中とは違い、今度は自分の意思で動くことができたため、周囲を探索することにした。



<黄金もふもふの花> の近くには、綺麗な花がたくさん咲いていた。

その奥の木々には果実のようなものが実っている。


この辺りはモヤがないのもあってか神々しく、

さながら天国のような景色だ。




その天国の景色を越えると、モヤのかかった木々が生い茂っている。


近づいても何も起こらない。


モヤは匂いもしないし、どうやら体に悪いものではなさそうだ。





少し喉が渇いてきた…と思った矢先。


優は木陰に池を見つけ、水を飲もうと近づいた。



(綺麗な水だといいんだけど…… )



そんなことを考えながら池を覗き込む。



そして自分の姿を見て驚愕した。




「ウェ!?ニェニョニャン…!!(え?猫じゃん!!)」








ーーーーーーーーーー








幸いにも池の水は澄んでおり、飲むことができた。


「うにゃあーーー!にゃむにゃうう!! (うめー!生き返る!!)」




疲れた時に飲むビールのように、身体中に水が染み渡る。


うまい。うますぎる。


都会のビアガーデンで飲むビールより、この森で飲む池の水は美味しかった。

そのせいで、この小さい体にしては少々飲み過ぎてしまった。


お腹がパンパンで苦しくて、思わずヘソ天ポーズになってしまう。



(うあー飲んだ飲んだ〜〜〜)



昔、「山の水はそのまま飲んじゃダメよ」っておばあちゃんに言われたけど。



(まあ大丈夫っしょ!私 猫だし!!)







満腹なのでゴロゴロしていたら、いつの間にか眠っていたようだ。


眠気覚ましにそのままぐーっと伸びをして、ゆっくり息を吐いて、ふと気づいた。





(あれ……『来世で猫に転生する』って夢、叶ってる……!!)




あの日死んでしまったのかはわからないが、

前世の記憶は29歳のあの日で止まっている。

人間にしては随分と短い一生だった。



就職してからは働き詰めだったので、直近の記憶は仕事関係ばかり。


そう考えると、なんとも味気ない人生だったな と思う。





(今回の人生では猫らしく、ゆったりまったりスローライフを楽しむんだ〜)



猫らしくって、どんな感じだったか。


ふと愛しい相棒モフ助の存在を思い出す。




彼は私が死んで(?)からどうなってしまったのだろうか。

誰でもいいから、モフ助を私の代わりに幸せにしてくれていることを願う。


というか……



(モフ助も一緒に転生してないかなあ…… )



少し寂しくなって、思わずモフ助の名前を呼ぶ。


「にゃうなうーーー(モフ助え〜〜〜(泣))」






自分の情けない鳴き声だけが寂しく森の中に響く。


いるわけないよね。さすがに。

この状況も、ただの夢かもしれないし。うん。





…… しばらくは仰向けのままで過ごしていたけれど、

この広い森の中にひとりでいるのがなんだか寂しくなってきた。

<もふ花>のところへ戻ろう。



(黄金色のもふもふが、モフ助の毛みたいなんだよな… )



そう思いながら、とぼとぼと来た道を戻る。



(モフ助が恋しい。ちゃんと元気にやってるかな。)



そうやってモフ助のことばかり考えていたら、

おでこを勢いよく木にぶつけてしまった。





[え!大丈夫?!すごい音がしたよ!]




どこかから声が聞こえる。




[随分無防備な<リト>だね〜〜 君、こんな調子で森で生活できるかい?]


[あれ?聞こえてない? おーい、目の前の君!!聞こえてる???]




声の主を探してキョロキョロしていると、右上!こっちこっち!と声がかかる。


その声につられて顔を上げると





とても可愛らしいリスがこちらを見ていた。


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