神子(SIDE:ナギ)
「申し訳ないが、今は私の服しか手元にないんだ。 ひとまず被っておいてくれ。ちゃんとしたものは後ほど見繕ってくる。」
ユウの人の姿に慣れないせいか、なんだかよそよそしい言い方になってしまった。
服を手渡すと、お手数をおかけします……。と小さな声で子どもらしからぬ返事が返ってくる。
どうやら服の着方もわかる様子だし、言葉遣いといい身体の動きといい、猫ではなくこちらが本当の姿なのだろうか?
他にも気になることは多々あるが。
目下の悩みはユウの出自、そして外見をどう誤魔化すかだ。
猫の時には気づかなかったが、人になってみるとユウの色はまさに、神子のそれだ。
急にこんな見た目の少女が街に湧いて現れたら、確実に注目されてしまう。
そもそもこの村には、色素の薄い者ですら私の他に見当たらないのだから。
今の彼女の存在は異質だ。どう見てもこの街に馴染まない。
(私に付く監視者に見つかると面倒だな……)
彼女をみた監視者達は確実に『神子』を想起するだろう。
本家だろうが国だろうが、たとえどちらから派遣された監視者でも必ず中央に報告を上げるに違いない。
そうなれば、ここで暮らしていくことは難しくなるだろう。
『神子』
それは、国民の大部分が黒髪や茶髪、瞳の色もそれに準ずる色である中で
透き通る白銀の髪、瑠璃色の瞳を持つ異質の存在。
我が国で最も愛され尊ばれる、繁栄と幸福の象徴とされている。
不思議な力で国を導き、守るとされているが
記録に残っているのは100年ほど前が最後で、以後報告は上がっていなかった。
(……現王の治世はいわくつきだ。
人柄も手腕も申し分ないだけに、心酔する忠臣も多い。
彼らは王のために、どんな手を使ってでも、幸運の象徴を手中に収めたいと考えるだろうな。)
ふと彼女を見ると、やはり私の服では大きすぎたらしく、袖がかなり余っている。
首元の開きが大きく肩の布がずり落ちそうなので、風邪をひかないように上から布団でぐるぐる巻きにして、念の為暖炉に火を入れて近くに座らせた。もう春だとはいえ、朝はまだ冷える。
私も言い伝えでしか知らないが、おとなしく座っているユウの横顔は、確かに『神子』の特徴に当てはまる。
まさかとは思うが、本当に『神子』であれば早いうちに身の振り方を考えなければならないだろう。
それについてはユウからも話を聞いてみなければ。
長かったスローライフパートもようやく終盤に差し掛かってきました。
スローライフのはずだったのに!がタイトル詐欺にならないように、この先は色々起きる予定です。




