雪の朝(SIDE:ユウ) − 3
ふと目が覚めると、私はベッドの上に移動していた。
ぐーっと伸びをしてあくびをひとつ。
(ふーー気持ちいいぃ……?)
ぴんと伸ばした手の先に、さらりとした感触。
私の横に沿うように眠っている彼の髪に触れたようだ。
男性にしては少し長いその髪からは、ふわりと石鹸のような優しい香りがした。
(なんだか落ち着くな。)
初対面の相手にここまで警戒を解いてしまうのは、野生動物としてはどうなんだ?と思いつつ。
この彼は猫に好意的なようなので、すっかり安心してしまう。
ころりと寝返りを打ちながら窓の外を見てみたが、雪で真っ白だった。
どのくらい時間が経ったか見当もつかない。
幸いにもここは安全地帯のようだし、急いで帰らねばならない理由は特にないので
雪が止み、空が明るくなるまでは居座ってしまおうか……などと考えていたらまた眠くなってきた。
(とりあえず、もうひと眠り……)
そう思い、整った横顔をぼーっと眺めながらうとうとしていると
急に彼の表情がこわばる。
小さなうめき声をあげ、眉間に皺を寄せて息が荒くなっていった。
怖い夢でもみているのだろうか。
先ほどまでの安らかな寝顔が嘘のように、苦悶の表情を浮かべる。
(きっと起こした方がいいのだろうけど、今の私なら……)
起き上がって彼の顔まで近づく。
そして頬から首のあたり目掛けてすとん、と座り込んだ。
猫吸いの定位置である。
これで癒されない猫好きはいないだろう。
そしてダメ押しで一言、心の中で願った。
(優しい彼が気持ちよく寝られますように。)
今日助けてくれたお礼も兼ねて、心を込めて祈った。
チラリと顔を覗き込むと、心なしか表情が和らいでいるように見えなくもない。
恩人に少しでも恩返しがしたいのは、元日本人の性だろうか。
なんとなくだけど、役に立てた気がする。
そんな達成感に浸りつつ、穏やかに寝息を立てる彼を横目に私は再び眠りについた。




