16:素敵アイテム?
ここまで行動を共にしていた暁に別れを告げ、今はダンジョンツリーの中。
勿論金貨はしっかりと受け取った後だ。
何が起こるか分からないドッキリポーションを低階層とは言えダンジョンで飲む気は無いのでこれは帰ってからのお楽しみ?という事で。
「馬車が入れたら運搬とか楽なんだろうけどな」
「ダンジョンって全部こうなのかな?」
《殆どの場合は無理ですね。運搬は確かに楽かもしれませんが、馬の世話もありますし、いざ戦闘になって馬が倒れてしまったら立ち往生ですから、そうそう良い事ばかリでもありませんよ》
あ、馬の世話。水や餌なんかは当然必要だし、戦闘の立ち回りも馬の防衛を要求され、道程や行動も遅くなるって考えると……うん。言葉は悪いけど邪魔になる可能性のが高いわ。
《それに聖域まで行けば地上に戻れますからね》
「それもそうだよな」
地上への帰り道が魔法陣ですぐに戻れるならそんなにパンパンに詰め込む必要ないか。
「それにしても、居ないね。魔物」
「植物系統動けないからな。こっちから探さない事には」
さてこのダンジョン、殆どの階層は平原のフィールドだ。
聞いてはいたけど、とにかく広い。ちょこちょこ森?林?はあるから、魔物がいるとすればそこら辺に群生してるんだろう。
「これなら五階層まで行かなくても普通に帰ってこれそう」
ロックシード目的で四階層までいくならそのまま五階層を目指した方が早いけど、そうじゃなければここから入り口にもどった方が早いよな。
「まぁその場合金にはならないけどさ」
《百寿草の根一本で銅貨一枚ですか》
「結構大きいよねコレ」
丁度足元に生えていた百寿草を抜き、アルマが言う。
真っ白な葉が特徴的な、大根くらいの太さのこれ。
十本纏め売りで銀貨一枚と銅貨五枚で買い取ってくれるらしいけど、これを十本とか他のすべてを犠牲にしないと無理だろってくらいに嵩張るよ。
それに周りを見る限りポンポン生えている訳でもなさそうだし……これは平原だけ歩いてても実入りは望み薄だね。
《これらもダンジョンのアイテム扱いですから、魔力の影響でどうしても魔物の周辺に多くなってしまいますね》
「稼ごうと思ったらやっぱり魔物の群生地に行くしかないってか」
「あの森?」
「手始めにね」
聞き耳スキルが拾ってくる音は平原を駆ける風の音くらいなもんだし。そもそも植物系統音とか出すの?
そんな事を考えながら向かった森の入り口には蔓状の魔物がウネウネと行く手を阻んでいた。
残念ながらそこを通らなくても迂回すればいいだけで阻み切れてはないんだけどさ。
そして蠢いてはいるがやっぱり音らしい音は無いね。風に揺られた木々の方がまだ音が出てるわ。
《あれはヤドリギヅルですね》
「どうする?」
「ファイヤーボール」
俺の指先から放たれた火球は狙い違わず魔物めがけて飛んで行き、避けられる訳も無いヤドリギヅルをメラメラと燃やして行く。
自身の射程距離外からの攻撃に成す術も無く、悪あがきとばかりに蔓を叩き付け暴れて見せるが、せいぜいが二~三メートルの範囲。それではこちらに届きませんよ。
その後も十数秒程暴れてみせたヤドリギヅルだがとうとう息絶えたのか、魔力の粒子となり地面へと還って行った。
「そして素材がドロップされると」
「素材は地上と変わらないね」
「ヤドリギヅルだとこんなもんじゃない?」
ヤドリギヅルからドロップしたのは蔓と、極小の魔核だった。
こいつから取れる素材は蔓だけなんだけど、その蔓から取れる繊維が衣服の材料になるから日常生活においては結構な需要がある。
地上ではお目に掛かれないレアドロップってのもあるらしいけど、こいつは蔓以外に何かあるのかね。
まぁいいか。
「言ってた通り森の中だと結構百寿草が生えてるな」
見渡す限り。とはいかないけど、それでも平原に比べたらかなり多い。
真っ白だからめっちゃ目立って視界にチラチラ入ってくる。
それ以外にも掲示板に貼ってあった野草なんかもあるね。百寿草もそうだったけど、常時貼りだしてるだけあってどれもこれも低階層で取れる物ばかりなのかな。
「お、蜜カズラもある」
確かあの中だと結構良い値だったハズ。探せば周辺にまだあるかも――ん?
《どうかされましたか?》
「いや……これなんだけど」
俺が見つけたのは一輪の花だ。
ただ、花弁は虹色で花芯はサファイアブルーときた。これが何かの素材だとしても見るからに普通じゃないよな。
「すごい綺麗だね」
「これ何だと思う?」
《申し訳ございません。私の知識には無い花です》
クロエでもわからないのか。
「クロエが知らないって事はもしかして希少な花だったりする?」
「多分、そうだろうな」
世界を巡った祖父ちゃんの知識に無い花って事だもんな。触れてみた感じ花っていうより宝石に近いけど。
ともあれ採取だな。
スコップを創造して、土も影響してるかもしれないから鉢も創造しとくか。
「あ、私やるよ。土ごとその鉢に植え替えればいいんだよね?」
「ん。じゃあお願い」
「任せなさい」
久しぶりにみたなガッツポーズ。
で、やる気十分なアルマに道具を渡した後、他にも無いかなぁと周辺の散策を続けてみたんだけど、まぁ無かったんだよね。
当初の目的の蜜カズラも結局一個だけだったし。
「案外その花が他の植物の成長に関係してたりして」
採取された花は「私が持ちたい」という理由からアルマが大事そうに抱えている。気持ちはスゲー分かる。
森の中でも十分綺麗だったけど、光を浴びてさらにキラキラ輝く花弁がすっごい素敵。
《他の栄養を吸収するような植物も存在してますから、その可能性はありますね》
「見た目も触感も植物って言うより宝石なんだけどなー」
ギルドの人に聞いたら何か分かるかな?
帰ったらニトさんに聞いてみよう。