14:一度は飲んどけドッキリポーション
馬車はきちんと預かって貰えました。
あれだけデカいのに一台分の料金で預かってくれるんだから良心的だよね。
牧舎まで案内してくれた暁とはここから別行動だ。
クルスさんから引き続き案内のお誘いがあったけど、暁は明日お金を受け取って直ぐにルーリックの街へ帰るとの事で、そっちの準備もあるだろうから断ったよ。
なので今はアルマとクロエの三人で街をブラブラしている。
リコッタを出て直ぐに皆と出会ったから、三人だけってのも初日ぶりだな。
「ねぇ、カナ。これ見て、スナックポーション」
「スナックポーション?」
アルマが手に取って見ているそれは飴玉の様な物が入っている小瓶だった。
「らっしゃい。そいつはポーションを一口サイズの飴玉にしたもんだよ」
「これもポーションなんですか?」
ポーションと言えば液体ってイメージだったけど、固形状のポーションもあるのか。
「そうさ。舐めている間徐々に体力を回復してくれるって代物さ。と言っても効果は気休め程度だから殆どオヤツみたいなもんだけどね。どうだい?一瓶銅貨五枚だ」
結構安いな。
効果は気休め程度って話だけど、創造する事を前提で考えればどうとでもなりそうだし、徐々に回復してくれるって効果はなかなか良いんじゃないか?
これは一つ買っておこう。
「それじゃあ一瓶下さい。」
「あいよ。んじゃ、どの味にする?」
味?
あ、確かに中身の色が違う小瓶があるな。
赤に、紫に、橙か。
「赤色がイチゴ味。紫がブドウ味。橙がミカン味だよ」
成程、俺の希望としてはブドウ味なんだけど。
「アルマはどれがいい?」
「イチゴがいい」
だよね。
まぁ二つ買っても銀貨一枚だしな。どうせなら三種類とも買うか。
「えっと、一瓶ずつ下さい。」
「全部で三つだな?銀貨一枚と銅貨五枚だ。」
店主のオッチャンに丁度の額を渡し、スナックポーションを受け取る。
早速今日の夜にでも創造してみますか。
ここにはダンジョンもあるから、そこで試せそうならポーションの効果を確かめておきたいね。
あ、そうだ。ついでにオッチャンに聞いておこう。
「すいません。ドッキリポーションって物があるって聞いたんですけど、何処で売ってるかとか知ってますか?」
「ドッキリポーションかい? それならダンジョンツリー前だな」
ダンジョンの前か、これから向かうつもりだったし丁度良かったな。
「ありがとうございます」
お礼をいってオッチャンの店を後にする。
「丁度よかったね」
「ほんとな」
特に急いでるって訳でもないし、ゆっくり街を見て回ってもいいんだけど、それでも用事が一度に済むならそれに越した事はない。
そしてふと思った。
もしかしてクロエなら知ってたんじゃないか?と。
《どうされました?》
「クロエなら知ってたかなって」
《スナックポーションの事ですか?》
「ああ、いや、そっちじゃなくて、ドッキリポーションの方」
《知ってはいたのですが、売っているお店までは知らなったですね》
過去に祖父ちゃんが飲んだ時は人から貰ったものを飲んだから、店で買った訳じゃないみたい。
《ドッキリポーションは薬師がウッカリして素材を勘違いしたのが始まりとされていて、最初はウッカリポーションと呼ばれていたみたいですよ。それが飲んでみるまで効果のわからないドキドキ感から何時しかドッキリポーションと呼ばれるように》
「そんな効果不確かなポーションをよくもまぁ売ろうと思ったな」
《鑑定のスキルを所持している人がいたのでしょう》
あー、鑑定か。
汎用スキルでありながら覚えている人間は極僅か。初めて見る物でも詳細を見抜く事が出来るというスキル。
レベルに応じて鑑定結果の度合いも変わるだろうって話だけど、何せ覚えている人が居なさすぎる希少スキルだからな。
詳しい事はよくわかってないみたい。
「それで、ミオさんはどんな効果が出たの?」
《グランドマスターは新しいスキルを覚えました》
「マジか」
《正確に言えば直接覚えたわけではないのですが》
祖父ちゃんがドッキリポーションを飲んだ時は、一時的に【造形】スキルを使えるようになって、それで感覚を掴んだ祖父ちゃんは効果が切れた後に【造形】を覚える事が出来た。
という事らしいが、だとしても十分じゃないか。
スキルにもよるけど、普通はそんな簡単に覚えられるものでもないし。
「他にはどんな効果があるの?」
《そうですね。グランドマスターと一緒に飲んだ方は『声が高くなる』『頭髪が金髪になる』『肌が色白になる』『ケガが治る』という効果でした。グランドマスターを含むその殆どが二十四時間で効果が無くなりましたが、ケガだけはきちんと完治したみたいです》
「そりゃあ、そうだろうな」
一時的にケガが治る。
だったら嫌がらせにも程がある。
《私が知り得ているのはこれだけですが、噂では【固有】スキルが増えた人も居るとか》
「ホントに!?」
《あくまで噂ですよアルマ》
「飲めば分かるって話でもないもんな」
《それでも結構人気の品みたいですよ》
噂が本当だとしたら新しい【固有】スキルが覚えられるかもしれない。嘘だとしても汎用スキルを覚えるきっかけにはなるかもと。
後は運試しか。パーティ受けしそうではあるもんね。
「あ、あれじゃない?」
アルマが指さす方向には「ウルスラ名物!!一度は飲んどけドッキリポーション!!「」と書かれたすっごい分かりやすい看板を掲げた白壁の店があった。
うん、アレだわ。寧ろアレじゃなかったら何だと言いたい。
「ちょっと行ってくるわ。アルマはクロエと此処で待ってて」
三人で入ると邪魔になりそうだ。
それ以前にクロエは入れんだろうし。
「すいません、ドッキリポーションが欲しいんですけど」
「いらっしゃいませ。ドッキリポーションですね? 一瓶金貨十枚になります。」
……高ぇ。
そういや値段知らなかった……。
「あー、すいません、値段知らなくて、今手持ちがないです。結構人気の品って聞いたんですけど、後日に来ても在庫ってありますかね?」
「はい、大丈夫ですよ。行商の方も良く買われていくので在庫は豊富にご用意しております」
「それじゃあ、また来ます」
「ありがとうございます。ご来店お待ちしております」
人気の品だけあって在庫は大量にあるっぽいな。
そっちの心配な無くなったけど、金貨十枚か。ブーストポーションと合わせて金貨二十五枚で、アルマの分と合わせて五十枚。
それだけで買い取り額の半分かよ。ポーションって特殊な物は高いのね。
《どうでしたか?》
「買えた?」
「いや、一瓶金貨十枚だとさ」
「そんなにしたんだ」
《中々ですね》
「そんな訳だから明日お金を貰ってからまた来ようか」
金貨五枚じゃどうしようもない。
《この後ダンジョンに潜られるようでしたらそこで稼げるかもしれませんよ》
「今日潜ったとしても様子見程度にするつもりだからな。そんなでもないんじゃないか?」
そりゃ出来たら嬉しいけどさ。
さて、ダンジョンがどんなものか行ってみますか。