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異なるスキルの使い方  作者: 黒服
12/47

12:地味だけど凄いんですよ?

「ふぅ」


 動揺した気持ちを落ち着かせる為にリラックス出来るハーブティーを淹れたんだけど、やはりこれも最高品質だけあって効果が凄まじく、一口飲むだけで直ぐに平常心を取り戻す事が出来た。


「最高品質って凄いですね」

「他人事みたいに言ってますけどカナメ君のスキルですよ?」


 そうなんだけど、正直そこの部分は殆ど意識してなかったんだよな。

 だって俺が今まで創造したものって、硬貨、ミスリル鉱石、食料品、日用品、ポーションだよ?

 硬貨の品質とかわからないし、鉱石だってそう。食料品は「美味しいな」くらいなもんだし、日用品だって実感し辛い。

 ポーションだけは効果が凄まじい事になってそうだけどまだ一度も使った事ないし。

 まぁ、検証不足と言ってしまえばそれまでなんだけどね。


 うん。そこら辺は次に活かすってことで、早速。


「なぁクロエ、さっき永久機関って言ってたけど、それってつまりこの精霊杭は繰り返し使えるって事?」

《その通りです》

「成程。試してみてもいいでしょうか?」


一度結界を解除する形になるからね、皆に聞いておかないと。


「はい。大丈夫ですよ」

「うむ。問題ない」

「大丈夫だよー」

「だ、大丈夫です」

「私も大丈夫」


 よし、皆大丈夫そうだな。

 解除するなり魔物に襲われるって事は無いと思うけど、警戒はしておかないとね。

 で、繰り返し使う方法だが、何も難しい事は無い。

 打ち込んである精霊杭を抜いて、そして打ち直す。それだけだ。


「では、いきます」


 俺が杭を抜くと、結界内を幻想的な輝きで満たしていた精霊の力が、一つ、また一つと大地へと還って行く。

 全ての精霊の力が大地へと還った後、力を失った結界が徐々に縮小を始める。

 中心に向かってどんどんと小さくなっていき、最後には一筋の光となって精霊たちの後を追うように大地へと還って行った。

 俺の手元には精霊杭がしっかりと残っている。


 後はこれを打ち直すだけだけど、クロエの説明を聞いて一つ思い付いた事がある。

 流す魔力を抑えたら結界の力も抑えられるのでは?って事だ。


 いくらなんでもあのレベルの結界は目立ち過ぎよね。

 俺が言うなって話なんだけどさ。

 まぁ、物は試しだ。

 俺は精霊杭を打ち込み、流れる魔力の量を半分程度に抑えてみた。


 ……ふむ。半径二十mってところかな。これくらいだと精霊の力は、浮き上がっては来ないのか。

 成程成程。


「あの、カナメ君。普通の結界になってませんか?」

「あ、すいません。ちょっと試してみたいことがあったので」

「た、ためしてみたい事、ですか?」

「魔力の流れを抑えてみたんですよ。精霊たちが一度に使う魔力の量を減らしたら結界の規模も抑えられるかなぁと」


 魔力の流れをさらに抑えてみる。


「これくらいで普通の精霊杭と同等の規模ですかね」


 半径十m程だ。普段使いならこれくらいで充分なんだよなほんとに。

 そして今度は魔力の流れを開放してみる。全開だ。


「これが全開にした状態です」


 精霊杭を中心に半径五十m程が淡い青色の膜に覆われ、地上にはどこか楽しそうに見える精霊の力が浮き上がってきている。


「ほう。随分と器用な事が出来るのだな」

「みたいです。思った通りでしたよ」


 誰かに見られたら固有(ユニーク)スキルの効果ですって誤魔化すつもりでいたけど、それはそれでメンドクサイ事になりそうだからね。

 調節が利くなら誤魔化す必要もなくなる。

 とりあえずは目立たない様に半径十m程の結界に調節しておこう。


 さて、精霊杭はこれくらいでいいかな。

 お次はポーションを試してみたい所だけど、状態異常になってなければ体力も減っていないから、試せるのは魔力回復薬だけなんだけどね。

 魔力も減ってないんだけど、そこはほら、創造:異を使えばすぐだし。


 って事で、何を創造しようか?

 パッと思い付いたのはお米なんだけど、まだ余裕はある。

 ポーション?いやいや、三十kg分のポーションとかそれは無いな。

 ミスリル鉱石?創造したところでだし。


 思ってたより、思いつかないな。


「どうしたのかなー?」

「創造で手早く魔力を減らそうと思ったんですけど、適当な物が思いつかなくて」

「……へぇー」


 おや?クルスさんの気配が変わったぞ?

 皆の空気も何かピリッとした物に変化したような。

 具体的にはおもちゃを前にした猫みたいな。猫を飼っている人ならわかるかもしれない、いまにも飛び掛かってきそうなアレだ。


 これはつまり、そういう事なんだろう。


「皆さん、何かリクエストありますか?」


 この人たちなら飛び掛かってくることは無いだろうけど、そんな生殺し状態にする様な事はしませんとも。

 こっちからアクションを起こせば、多少は後ろめたいだろうその気持ちも薄れてくれるはず。


「い、いいのですか?」

「どうせ創造するなら皆さんの役に立つ物を創造した方がいいですからね。それに打算も入ってますから、まぁ気にしないで下さい」

「カナメ君から打算と言われてもあまり信じられませんけれど。」


 エマさんはそう言って小さく微笑んでくれたけど、打算ありますよ?

 誰でも良いって訳じゃないけど、人との縁は大切にしていきたいからね。それが創造一つで叶うんなら安いもんだぜ。的なヤツが。


「確かにそれは、打算的ですね」


 そうでしょう?だからその微笑みは辞めてくれていいんですよ?


 その後は皆からのリクエストに応えてそれぞれを創造していった。

エマさんのリクエストはレイピアを新調して欲しいとの事だった。エマさんのレイピアは聖銀で出来ており、魔力を消費して刺突力を上げることが出来るけど、その分消耗も早いのだとか。

 創造したレイピアを確かめてもらった所「魔力を込める必要がないくらいですね」と言っていた。


 クルスさんのリクエストも武器だった。少し厚手の黒刃を持つ刃渡り三十cm程のダガーを二本だ。

 黒鉄鋼という質量の有る鉱石で作られていて、通常の三倍くらい重いんだそう。

 普段使いには適さない重さだけど、クルスさんには軽業があるからね。折角なので普段使い用のダガー二本と、鞘替わりにもなるレザーベルトもセットで新調したよ。


 ペトラさんの希望は盾。一般的な鉄鋼で作られた物で特別何かがあるという訳でもないが、それ故に消耗は激しく、大分傷んでしまっている。ウルスラの街で新しい物に買い替える予定だったらしい。

 盾の最高品質ってどうなるんだろうか。元の鉄鉱石が最高品質になったとして、より強固で熱に強くなるのかな?気になる所だね。


 そしてカグラさんはローブだ。カローレンディアーと呼ばれる魔物の素材が使われているローブで、熱に強い特性を持っている。素材の質が良くなれば耐性も上がるし、何よりちょっとゴワゴワしていたローブがしなやかになり着心地が抜群になったそうだ。随分と気に入った様子だったので予備も含めてもう一着創造。


 で、ここまで創造しても意外と十kgも超えてなかったんだよね。

他にも何かないか聞いてみたんだけど「流石にこれ以上は気が引けますよ」って言われちゃって。

 結局残りの魔力は全部お米にしました。



 さてさて、これで準備完了だ。

 最高品質のポーションがどれほどか試してみますか。

 俺は目の前にある青色の魔力回復薬を手に取り、栓を抜く。


 そういえば昔祖父ちゃんが「やっぱ回復薬飲んだ後に両手でガッツポーズはせんよね。隙だらけやもんね」って言ってたけど、あれ何だったんだろう。

 まぁいいか。


 一口分の魔力回復薬を喉へと流し込む。

 うん。美味しい。今まで飲んだポーションはここまで美味しくは無かったな。

 質が良ければ味も良くなるのかな?口に入れるなら美味しい方が良いに決まってるからコレは地味に有難い。

 そして空になっていた魔力もまぁ当然の様に全回復。


「どう?」

「うん。美味しい。それと、魔力も元に戻ってる」

「一口飲んだだけですよね?」

「そうですね。一口です」


 精霊杭のインパクトが凄すぎて何か地味な感じがするけど、たったあれだけで魔力が全部回復するのも十分おかしいレベルだよな。


「精霊杭と違って目に見える変化が無いから何か地味な結果だよねー」

「俺もそう思います」


 これが体力回復薬だとまた違ったんだろうけど、わざとケガとかする訳にもいかないからね。こっちは必要になった時に使えばいいか。


 まぁこんなところかな。


 ある程度の検証が終わった後は皆で食事を取り、今後の予定を話し合った。

 ウルスラの街までは今日を含めて一週間程掛かるそうだ。

 昨日クロエが三日程と言っていたけど、アレは俺達だけの場合らしい。馬とゴーレムじゃパワーもスピードも何もかも違うもんね。

 エマさんがしきりに「申し訳ない」って謝ってたけど別に急ぎの旅じゃないですから問題無しですよ。



 何事もなくウルスラの街まで着ければいいな。

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