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第六話 いきなり六等級特進は……。

本日最後の更新です。

 クレーリアさんが指差す大きな依頼の書いてあるポスターのようなもの。

 一番目立つ場所に張られたそれは、依頼というより、警戒を促すもの。

 その一番下に成功報酬が書かれているようなものだった。


「こちらです」

「うんうん。なるほどね。これでしょう? ジェラル君」

「そうなんだ。ほら、ここに巨大なリザードって書いてあるだろう?」

「か・い・て・あ・る・で・しょう。じゃないのかしら?」

「ごめん。クレーリア姉ちゃん……」


 なんとも躾けの厳しいお姉ちゃんだこと。

 それだけしっかりとして欲しいんだろうね。


「あのですね。シルヴェッティさん」

「はい」

「これ、倒しちゃったっぽいんですけれども」

「えっ?」

「一応持ってきたんですが。ご覧になりますか?」

「え、えぇ」


 ここの天井は三メートルくらいはある。

 ホール自体はだだっ広いから出しても大丈夫かな?


「ちょっと皆さんに端に寄るように言ってもらえますか?」

「はいっ。あの皆さんにお願いがあります。できるだけ端によるようにしていただけませんか?」


 探検者たちはシルヴェッティさんが嘘を言う訳がないと思っているんだろうな。

 素直に端へ寄ってくれた。


「では、ここに出しますね。えーと。『キングリザード』」


 そう言った瞬間。

 そこにはあれが出現した。

 でけぇな、やっぱり。


「…………」

「どうです? 多分間違っていないかと思うのですが」

「しょ」

「しょ?」

「少々、お待ちくださいっ。誰か所長を呼んでください。とんでもないことになってしまいましたっ」


 とりあえず、裏に大きな倉庫があるらしいから、そっちに持っていくことになった。

 そこでまた取り出して。

 あとは確認してもらうだけになった。


 死んでるとはいえ、なんとも凶悪な面構えだよな。

 よく俺、ちびっちゃわなかったと思うわ。


「ソウジロウ様。お待たせいたしました」

「はい」

「鑑定した結果なのですが、この魔物とソウジロウ様の登録された情報と照らし合わせたのです。マナの残滓が残っていましたので、ソウジロウ様の諮問に残るマナと照合させていただきました。その結果、間違いなくあなたが討伐されたものと認定されました」

「そうですか。それはありがとうございます。それで、件の魔物だったのですか?」

「はい。目撃情報とも照らし合わせまして、間違いなく大公様からの緊急依頼の対象と相違ない。そう判断されました」

「すげぇ。尊敬するよ、ソウジロウさん」

「こら。話の途中でしょう」

「ごめん、クレーリア姉ちゃん……」

「あはは。本当に仲がいいですよね」

「えぇ。いい姉弟のように」

「こほん。話を戻してもよろしいでしょうか?」

「はい。お願いします」

「ソウジロウ様の討伐となりましたキングリザードですが。この緊急依頼をソウジロウ様が解決したということになりました」

「えっ?」

「ですので、成功報酬の金貨千五百枚。それとですね」

「は、はい」

「リザードって、捨てるところがないんですね。おまけに外部の損傷が全くなくて」

「……そうなんですか」

「はい。肉は癖がなく、焼くと美味しいんです。皮と歯と骨。内臓以外は再利用ができるので、全てこちらで買い取らせていただいてもよろしいですか?」

「えぇ。構いません」

「そうしますと。こちらも、多少の利益を乗せて出入りの業者へ渡すことになりますので……。お安くなってしまうかと思います。そこで、金貨二百枚でも、よろしいでしょうか?」

「「合わせて千七百枚?」」


 クレーリアさんとジェラル君がハモってる。


「えぇ、構いません。ところで、金貨ってどれくらいの価値があるんですか?」

「はい。例えばですね。クレーリアちゃんとジェラル君が、今回の依頼を成功させた報酬が、銀貨十枚ずつなのです。銀貨が十枚で大銀貨。それが十枚で金貨となります」

「なるほど、そうですね。これくらいのパン。いくらで買えますか?」

「そうですね。銅貨一枚というところでしょうか。もちろん、銅貨十枚で銀貨一枚になりますね」


 なるほど。

 銅貨一枚が百円程度。

 銀貨が千円。

 大銀貨が一万円。

 金貨が十万円?

 あれ?

 てことは。

 もともとポーチには五枚くらいあったから、五十万円が持参金かよ。

 ……千七百枚ってことは。

 いちおくななせんまんえん?

 どっひゃーっ!


「驚かれていますよね? そうだと思います。この報酬は本来、国側で用意された、百人単位のものだったのです」

「これって持ち歩くことできませんよね?」

「はい。こちらでお預かりする形になります。実は、このカードでお買い物ができるんですよ」

「それは助かります」

「あとですね」

「はい」

「おめでとうございます。ソウジロウ様」

「はい?」


 シルヴェッティさんが拍手をすると、両側にいる受付の女性も一緒に拍手をするじゃないか。

 そのせいで、ホールにいる人たちは俺を見てくるし。


「あなたは今回の功績で、ランクが上がりました。二等級へ格上げとなりました」

「へ?」

「等級が上がるとですね。色々お得なんです。お買い物の際、値引きしてもらえたり。宿が安くなったりですね」

「そ、そうなんですか。って上から三番目?」

「申し訳ありません。ソウジロウ様程の功績ですと。どうしてもそうなってしまうのです。要はですね、百人分の功績があった、ということになります。あと二、三回依頼を受けられれば、一等級になるかと」


 俺、入った初日にいきなり上から三番目のランクになっちゃったわけだ。

 こりゃ、ややっこしいことになるぞ。

 俺、弱いし。


 あれ?

 シルヴェッティさんが、俺の右手を両手でぎゅっと握ってるんだけど。


「あ、あのっ」

「はい」

「私、シルヴェッティ・ラングリーと申します」

「あ、はい。知ってますけど? 姓は初めて聞いたかな」

「二十七歳独身彼氏なし。お婿さん募集中ですっ。仕事に没頭しすぎてちょっと行き遅れてしまいましたが、よろしくお願いいたしますっ」

「はいぃいいいっ?」


 もちろん、周りの男の視線がぐさぐさ刺さるような、そんな感じがビリビリとしてきたのは言うまでもないよな。

 いきなりプロポーズされてもなぁ。

 確かにシルヴェッティさんは綺麗な女性だと思うよ。

 おっぱいも大きいし。

 男性からの人気もめちゃめちゃ高いからな。


 確かに俺は、一躍億万長者になった。

 等級も上がったし。

 いわゆる『優良物件』に見えたんだろう。

 そりゃね、俺だって嫁さんほしいと思うよ?

 でもよく知らない人に、いきなり求婚されたってどう反応したらいいか困るところだよ。


「いえ。いきなり言われましても。俺、今日この国に来たばかりですから。それに気の迷いはいけません。俺はこのとおり、ただのおっさんですから……」

「あ、その。申し訳ございません。私、ちょっとだけ焦っていまして……。それに、迷惑ですよね。私のような、ごにょごにょ……」

「大丈夫です。俺みたいなおっさんから見たら、まだまだ可愛らしい女の子ですよ」

「そんな。もうおばさんなのに……」

「いいえ。女の子です。自信をもってください」

「は、はいっ」


 おかしい。

 俺、一応断ったはずなんだけど。

 シルヴェッティさん、全然諦めてないような顔なんだよな。

 いや、それは俺の勘違いだ。

 彼女なし、イコール、年齢の俺には女性の気持ちなんてわかりゃしないんだから。

 うん。

 勘違い勘違い。


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