07.スザクの選択そして限界突破
「なぁ、ちょこさん。何か静かじゃないか?」
「そうだな。人が少ない気がするな。」
「どうしたんだろうな。」
こちらに走ってくる人がいる。
「おい。どうしてこんなに静かなんだ?」
「あぁ。都市の中心でモンスターが暴れてるんだよ。冒険者が応戦してるけど、押されてるんだよ。」
「その、モンスターってどんなんなんだ。」
「ミノタウロスだよ。でも、普通のミノタウロスじゃないんだよ。そのモンスターを使役してる人がこう言ってたんだ。こいつは神と悪魔の力を使える。こいつを倒せるのは、アカバネ スザクだけだと。」
「は?もしかして、ミノタウロスを使役してるのは、サタン・ファミールか?」
「あぁ。どうしてわかるんだ?」
「俺が赤羽 朱雀だからだ。サタン・ファミールがどうして、このような行動に出たのかもわかる。」
「ちょこさん。行くよ。俺たちのせいでミノタウロスが暴れてるんだ。」
「うん。」
俺たちは走る。
「ヴオォォォォォォ。」
雄叫びが聞こえる。
この近くにいるのか。
俺たちが走っている道に女性が立ちはだかった。
「カンザキさん。サタン様に謝って、また私たちと一緒に冒険しよう。」
ティアだ。
「ちょこさん。どうするんだ?サタン・ファミールに戻るのか?」
「パトリシアさん。ごめんなさい。サタン・ファミールには戻らない。私は決めたの。アルテミス・ファミールに入るって。」
ちょこさんそんなこと言ってたっけ。
「どうしてなの。何で、サタン・ファミールを抜けてアルテミス・ファミールに入るの?」
「アルテミス・ファミールにいる少年の歩む道を共に歩きたいから。」
ん?
それって俺のことじゃね。
「どいて。パトリシアさん。あなたとは戦いたくはない。」
「どかない。この先には行かせない。」
俺はどうしたらいいんだろうか。
ティアとちょこさん両方守る道を選ぶのか、ティアを守る道を選ぶのか、ちょこさんを守る道を選ぶのか。
俺はどうしたいんだろう。
今守りたいのは、神様とちょこさんだ。
俺には力も勇気も知恵も何かもが足りない。
だから、選ぶしかないんだ。
今は、ティアを見捨てる。
それしか、神様とちょこさんを守れない。
「どいて。パトリシアさん。」
「どうして、ゆづるも私を見捨てるの?」
「それは…」
俺には答えることが出来なかった。
「こたえてよ!ゆづる。私はあなたとずっと一緒に居たかった。それなのにあなたは私の望まないことばかり。こんな辛い思いをするなら、ゆづるとは出会わない方がよかった。」
辛い、辛すぎる。
俺には辛くて、重すぎる。
守りたかった人に、出会わない方がよかったと。
でも、俺は今を守りたい。
特訓してくれるちょこさんがいて、ホームでいつでも待ってくれてる神様がいて、俺をアドバイスしてくれる、ラウラさんがいて。
俺は今がとても幸せだ。
たとえ、誰かに悪く言われてもこの人達がいてくれるだけで、俺は頑張れる。
「ちょこさん。ちょっとすみません。よいしょっと。」
「こんな時にななな、何をする。」
「え、お姫様抱っこだけど。」
「そんなことは知っている。早く下ろせ。」
「よし、ちょこさん捕まってろよ。」
俺は下を向いて、この場から立ち去るように速度を上げ走った。
「うわ、デカっ。こいつ。本当にミノタウロスかよ。」
「こいつは、まさか。」
「何か知ってるのか?」
「あぁ、こいつは。改造ミノタウロス。ミノオリオン。四天魔の1体。人のレベルで表すと、11だ。」
「は?こんなの勝てるわけが。」
「あぁ、だから私を置いて逃げろ。」
ちょこさんはミノオリオンの方へ歩いて行く。
自分をおとりにして、俺を逃がすようにしている。
何なんだよ。
さっき、決めたばっかりだろ。
ちょこさんを守りたいって。
なら、動けよ。
俺はちょこさんの腕を掴み、
「こんなことさせるわけないだろうが。何一人でカッコつけようとしてるんだ。俺を頼れよ。一人で抱え込んでねーで。」
「うん、ありがとう。私を助けて。スザク。」
「おう。まかせろ。」
俺は一人でミノオリオンに近づいて行く。
思い出せ、ちょこさんとの特訓を。
ミノタリオンは本当にミノタウロスと同じなら、攻撃はなかなか通らない。
それに、本来のミノタウロスなら武器は、石の斧だけど、ミノタリオンは大剣を持っている。
後、動きが遅いはず。
俺は、二刀の短刀を構え、突っ込む。
ミノタリオンの後ろをとった。
これなら、
「ふっ。」
俺は二刀の短刀を振り下ろした。
バキッ。
支給品の短刀が折れた。
何ちゅう硬さだ。
ミノタリオンは角で攻撃してきたが、俺はプロテクターで防ごうと防御した。
だが、角はプロテクターを貫通し、おれの腕に突き刺さる。
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛。」
痛い、痛い痛い痛い。
それから、俺は吹っ飛ばされた。
それで、壁に激突。
「ぐはっ!」
口から血を吐き出した。
これ、勝ち目ないな。
諦めようとした。
でも、諦めきれない。
ここで、諦めたら絶対に後悔する。
「はぁぁぁぁ。」
俺は立った。
ミノタリオンには、普通の攻撃では倒せない。
勢いがなければ。
ミノタリオンと俺との距離は50メートルは離れてる。
俺は、全速疾走でティルファングを突き出し、突進した。
ミノタリオンとの距離。
40。
30。
20。
10。
0。
俺の最大力の攻撃はミノタリオンの肉に突き刺さった。
俺は、ティルファングを捻り、その場から離れ、ミノタリオンは動きを止めている。
倒せたかと思ったがミノタリオンは、
「ヴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛。」
と咆哮をあげ、攻撃を仕掛けてきた。
俺はミノタリオンの攻撃を何とか捌いてたが、攻めきれない。
こうしてるうちに、人が集まって来ている。
今俺が負ければ、この人にも被害が行く。
もう一本武器があれば。
なんとか、倒せるはずだ。
でも、武器なんかどこにも。
「スザク。受け取れ。」
ちょこさんが、俺に向かって短刀を投げてきた。
俺はそれを受け取り、ちょこさんを見た。
「勝てよ。スザク。キミならできる。」
「あぁ。勝つよ。絶対に。」
俺はまた、ミノタリオンに向き直り、短刀を構えた。
ミノタリオンは、俺に向かって走り斬りかかってきた。
俺は、その攻撃をティルファングで受け流し、もう一本の短刀で反撃した。
断ち切れた。
ティルファングでも、斬れなかったミノタリオンの肉を断ち切れた。
俺は、その勢いで目を潰し、手を使えなくした。
ミノタリオンは角を突き出し、突進する構えをした。
ミノタウロスは負けそうになれば、角を突き出す。
つまり、後もう少しで俺は勝てる。
ミノタリオンは突進してきた。
俺も、突進した。
ミノタリオンは角を振り、攻撃してきたが、俺はそれを避け、二刀の短刀で刺した。
だが、ミノタリオンは倒れない。
攻撃をしようとしてきた。
俺は攻撃をさせないように、二刀の短刀を左右に動かし、肉を断ち切った。
ようやく、ミノタリオンを倒し、魔障石と角がドロップした。
俺は、倒れた。
血を流しすぎたし、骨も折れた。
これで、安心だ。
俺は、眠りにつく。
それから、1週間ぐらいが経過したころ、やっと俺は目を覚ました。
神様は心配そうに、抱きつき、
「スザクくん、キミはどうしていつもそんなボロボロになりながらでも、戦うんだい。」
いつもってなんだ。
あぁ、そうか、ティアを助けるときもボロボロになってたっけな。
「スザク。」
「スザクくん。キミにお礼がしたい人がいるんだ。ほれ。」
神様は指を差す。
その方向を向くと、ちょこさんがいた。
「スザク。ミノタリオンを倒してくれてありがとう。私を助けてくれてありがとう。」
俺は痛む身体を動かし、ちょこさんの方へ向き、
「当たり前だろ。仲間なんだから。」
ちょこさんは泣いた。
泣きながら、ちょこさんは神様に
「アルテミス様。私をアルテミス・ファミールに入らせてください。」
「チョコくん。キミはスザクくんを大変な目に合わせた。それは、わかるかい。」
「はい。」
「スザクくんはこれからも大変な目に合うだろう。だから、キミにスザクくんを支えてほしい。だから、キミの入団を許可しよう。」
「いいよね、スザクくん。」
「はい。神様。」
「ありがとうございます。アルテミス様。ふつつか者ですが、よろしくお願いします。」
「それじゃあ、チョコくん、入団の儀式だ。スザクくんもステータスの更新を一応しとこう。」
一応ってなんだよ。
でも、まぁよかった。
これからもっと楽しくなりそうだ。
「それじゃあ、チョコくん。儀式を行おう。」
神様はチョコさんの背中に血を垂らし、円を描く。
そしたら、ステータスが浮かび上がった。
「よし、儀式完了。これで、キミもアルテミス・ファミールだ。」
そういいながら、神様はチョコさんのステータスを紙に写した。
「スザクくんもステータスの更新するよ。」
「はい。神様。」
更新が終わり、ステータスが写された紙をわたされた。
「スザクくん。キミは人類の限界を超えた。」
俺はおそるおそるステータスをみた。
レベル10 (+1)
アビリティ 力 9999 SSS 防御 9999 SSS
敏捷 9999 SSS 魔力 9999 SSS
幸運 9999 SSS 耐異常 9999 SSS
スキル 【弱肉強食】目の前にいる人やモンスターより強くなる。戦闘が終わっても、ステータスが下がることはない。
【大願成就】願えば必ず叶う。
【一撃必殺】チャージ実行権。チャージすればするほど、強くなる。神をも殺す。
特殊アビリティ 鍛治 SSS 料理 SSS 剣術 SSS
狩人 SSS 魔法 SSS 魔防 SSS
物防 SSS 治療 SSS 治癒 SSS
破砕 SSS
魔法 フィンブルブリザード
ヒール
キュアー
何これ、特殊アビリティが増えて、魔法も使えるようになってる。
「なぁ、ちょこさん。ステータス見せて。」
「いいよ。あと、さん付けじゃなくていいよ。」
「おう。わかった。」
レベル 9
アビリティ 力 902 S 防御 893 A 敏捷 1003 SS
魔力 871 A 幸運 753 B 耐異常 801 A
スキル 【武器創造】聖剣も魔剣も妖刀も全ての武器を作ることが出来る。
特殊アビリティ 鍛冶 S 狩人 A 剣術 A 魔防 B
物防 A
魔法 グラビティバリア 狙った場所に重力の結界を張る。
普通はこれぐらいなのかな。
「スザク。キミは本当に何者なんだい。」
「さぁ、ただの日本人だと思う。」
「まぁ、いいけど。それじゃあこれからよろしくね。スザク。」
「おう。」
俺たちの物語はまだ始まったばかりなのだから。