Papet Ⅱ
次の日、約束は地元を少し離れた新幹線が止まるような大きな駅の金の時計。
普段こんなところまでは洋服を買いに行くくらい。やっぱり少し遠いしめんどくさい。
唯依はもう待ち合わせ場所にいた。約束の時間はまだ15分も早いのに。
「おはよ、瑠璃ちゃん早いね」
そう言われても唯依はもっと早い時間に待ってたのに、となんとも言えない気持ちになる。やっぱ、苦手だ。
ライブの時間は17時から。
時間がかなり早いので私達はパンケーキが美味しい喫茶店で時間を潰すことになった。
他愛ない話。学校の話、唯依のバイトの話、先生の愚痴。
喫茶店に入って30分くらいはなしたとき
「瑠璃ちゃんこの前倒れたとき救急車で運ばれたって聞いてびっくりしたよ」
「ごめんね。男の人が救急車呼んで病院まで送ってくれたんだよね。それなのに治療終わってからお礼しようとしたらもう居なくなってて。いつかまたお礼できる機会があるといいんだけど」
普通だったら「そうなんだ」ぐらいで終わる話だと思った。
けど唯依は異様に食いついてきた。
「え?どんな人?」
「どんな顔してるの?」
「いくつぐらい?」
質問攻めは少し疲れる。
最後に唯依は深呼吸して言った。
「瑠璃ちゃんが男の人の話するの珍しいから気になっちゃった!
またその人にあってちゃんとお礼言えるといいね。」
なんだろう、この嫌な感じ。
唯依が嫌な訳じゃなくて何故かそのことを考えると心臓の動きが早くなって落ち着かない。
例えるなら悪い事をしたのがバレそうなときの様な嫌な感じ。
嫌な感じに耐えれなくて
お化粧直しをすると言い少し席を離れた。
私は勘が鋭い方だ。嫌なことがある気がする。今すぐ帰りたい。かれこれ10分くらいトイレに入ってしまった。
覚悟を決めて唯依のところへ戻る。
「瑠璃ちゃん顔色悪いよ?調子悪い?」
「大丈夫だよ。いつもの偏頭痛だから」
私は嘘をついた。
これから数時間を乗り越えればおうちに帰ってゆっくり休めると自分にも言い聞かせ今日のメインイベント
ライブ鑑賞だ。