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二人が去ってゆく。
その後ろ姿を見送って、ミラージュは背もたれに身を任せた。
髪をかきあげ、辺りに目をやる。
残されたのは夜景、キャンドル、飲みかけのグラス、バーテンダー、そしてアルコールの回った心にじわりとしみる、紫色の昔語り。
それは退廃的な芳香と感傷に似たきらめき、そして一抹の哀れさをないまぜにしてミラージュをとらえ、はなさない。
「不幸を愛す、か…」
呟いた言葉は二人の後を追いかけるかのように、消えてゆく。
ミラージュはぼんやりとグラスを眺め、そうして酔いに全てを委ねてしまおうと言うように残りを飲みほしたのだった。