3
「―悦」
ふと、扉側にいたミラージュの横に一人の男がやってきて、声をかけてきた。
ゆっくりと青年が顔を上げる。
「レン―…」
「お友達?」
レンと呼ばれた男がミラージュに笑いかける。
それはそれは美しい、光り輝くような、男。
紹介します、と青年がぎこちなく笑う。
「僕の、異母兄の、廉です」
すべてのピースが繋がる。
そしてそのパズルが描き出したのは、
とても背徳的で禁断の、鮮やかな絵画。
青年、エツはミラージュに視線を向けたまま。
レンが再度微笑みをミラージュに向ける。
返礼を求める様に。
はっとして、ミラージュも口元に微笑を作り出す。
紹介を受けて、そのままはマナー違反だった。
「ミラージュです。弟さんとお話をさせていただきました。
見事な英語だ、貴方がお教えになったとか」
「昔ね。貴方のような正統派の英語とは言えませんが、少しくらいお話はできたでしょう」
ミラージュのわずかな言葉で、それがイギリス人のものであることを見て取ったらしいレンは、少々皮肉っぽく言った。
「少しなんてとんでもないですよ、実に素晴らしい。」
「ありがとう。―では、これで」
―行こう。
レンがエツを促す。
エツがふらりと立ち上がる。