3/6
すぎていくおはなし
そうして、それと少女はいくつかの年を通りすぎました。
少女は少女ではなくなりました。
それは心を知りました。
春に花が咲き誇れば美しいと想うし、夏の暑さには辟易するし、秋の散り逝く命には寂しさを感じ、冬の冷たい空気には心まで震わせました。
けれど、言葉を話すことは出来ませんでした。
ああ、あれはあなたと昔に見た花よ。おぼえてるかしら?
勿論それは覚えていました。けれども少女にそれを告げることは叶いません。
もう、あなたったら、ちっとも返してはくれないのね。いーい?花よ、花。一言くらい話してみてよ。
それはだまったままでした。
そうしてまた年月は過ぎて行きます。
少女はそれに寄りかかりながら、語りかけました。
あなたはちっとも変わらないわね。
それはだまったままでした。
でもいいのよ、わかってたから。
それはだまったままでした。
私だけこんなにしわくちゃになっちゃったわ。
それはだまったままでした。
今まで付き合ってくれてありがとう。あなたがいてくれてよかったわ。
それはだまったままでした。
あ、ほら、花よ。あなたと、見た、花…
そう呟くと、少女はゆっくりそれに身を預けて、冷たくなっていきました。
それは、だまったままでした。




