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何気ない日常の先は  作者: 風凪
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第二話 早速修羅場突入?

九月一日。

今日は始業式がある日だ。

「だがしかし。特に面白くなかったので終わってLHR(ロングホームルーム)のところからにします!」

「……お前は誰に話してるんだ」

俺が小声で叫ぶと隣の席のセンからつっこみが入った。

……気にするんじゃありません。

『それじゃ、HR始めるぞー』

俺たちの教室に担任の先生が入りそう告げた。

まあ名前は言わんでもいいだろ。先生なんだし。

『まずは今日からお前らの仲間になる転入生を紹介するぞー』

「「「転入生!?」」」

先生が衝撃の事実を告白(?)したことにより、クラス全員の声がハモった。

ちなみに、俺のクラスの情報収集能力は他より少し上程度。だから普通ならもっと早く知ることができたはずなんだが……。

『お前らがなにをしているかくらいお見通しだ。それに、楽しみをとっておきたかったんだよ』

「先生ー。本音はどーなんですかー」

少し遠い席の風馬(フウマ)が律儀に手を挙げて聞くと、先生は一拍置いて。

『――驚く顔を見たかった!』

「「「このサディスト!!」」」

今度は別の意味で声がハモった。もちろん、恨み全開だ。

『ははははは。さてと。俺も満足したことだし。入っていいぞ』

『はい。失礼します』

「………?」

先生が呼ぶと、ドアの向こう側から声が聞こえる。

だが、その声には聞き覚えがあった。

ガララッ、とドアを開けて入ってきたのは――昨日俺が会った赤城(アカギ)(ソラ)だった。


しかもなぜか女子制服で。


「なっ…………」

言葉が出なかった。そりゃそうだ。男だと思った人間が女だったら驚きで声が出なくなるだろうよ。

『…………むっ』

そして遠くの席から聞こえる不機嫌そうな声。……いや声と呼べるかはわからないが。

とにかく、おそらくその声の主は美月(ミヅキ)だろう。昨日なぜか怒ってたし。

空が教卓の前に立つと、まずは黒板に自分の名前を書き始めた。まあ当然の行為だな。

そして書き終えると、俺たちのほうに振り向き、自己紹介を始めた。

「初めまして、ボクの名前は赤城空です。趣味は読書です。皆さん、これからよろしくお願いします!」

ペコリと頭を下げる空。結構礼儀をわきまえてるな……。

『それでは楽しい質問タイムだ。まずは誰からだ?』

ニマニマと怪しげな雰囲気を醸し出しながら先生が催促する。

今時質問するやつなんか――

「はい!」

――いたし。しかも美月じゃねえか。

『おー妻夫木(ツマブキ)。なにを質問するんだ?』

「はい……単刀直入に言います」

息を大きく吸って大声で言い放った。

「――あなたはヒロのなんですか!?」

「「………え?」」

美月の質問に呆気に取られる俺と空。

いや……だって……ねえ?いきなり俺のなんだと聞かれても困るだろうよ。

ちなみに俺もいきなり話題に出されて驚いているが。「ヒロ……?誰ですか?」

意味がわからないというように首を傾げる空。

あー……そういや俺がヒロと呼ばれてるの言ってなかったな。

「知らないはずがないでしょ!?昨日会ってるんだから!!」

「昨日?ヒロ?……あ、紘斗(ヒロト)のことですか?」

「そうよ!そこにいる大鳥(オオトリ)紘斗のことよ!どういう関係なのよ!」

楽しい質問タイムが早速険悪になったぞ……どうしてこうなった。

いやまずなぜそこまで必死なんだよ。

「どういうって……友達ですよ。迷子になってしまったところを案内していただいたんです。ただそれだけであって特になにもないですよ」

「嘘!あなた昨日ヒロと手を繋いでたじゃない!」

変態で腐りきった女が今では乙女となっている。……なぜだ。

「あれは紘斗が勝手に繋いだだけであって私はなにもやましい感情があったわけじゃありません」

「じゃあなんで嫌がらなかったのよ!どうせあなたも――」

『はいはい。お前ら終わり。折角の楽しいはずの時間が台無しだろうが。妻夫木、とりあえず座れ。赤城は大鳥の隣の席な』

「……はい」

「わかりました」

美月はどこか納得しない様子で、空はあまり気にしてない様子でそれぞれの席に座った。

それでもこの空気は改善されない。

『ったく……それじゃあ連絡だーよく聞けー。明日からは――』

そのあとはしばらくの日程などの諸連絡を発表されてLHRは終わった。

唯一先生だけが楽しそうに若干口元を歪ませていたのが一番印象に残った。

もちろん、恨みの感情付きだが。




☆ ☆ ☆


HRも終われば残るは帰宅のみ。

宿題は……諦めたからな。成績が悪くならないように気を付けたいところだ。

そして本来なら一人での帰宅がなぜか今日に限って美月と空がいるという事態に。

さっきのこともあるのか、二人の間には険悪なムードが漂っている。さらに言うとその間にいるのが俺なのだ。

正直息苦しい以外のなにものでもない。

「……さっきは先生のおかげで助かりましたね」

今までの静寂を先に破ったのは美月だった。だがその言葉には恨みが含まれている。

「助かった?なんのことですか?さっきの私には危険な状況ではなかったのですが」

それに対し空はあくまで平然と返している。……こちらも腹の中が煮えくり返っていることだろう。

「そんなこと言えるのも今だけよ。その内絶対後悔することになるのだから」

「後悔?そんな言葉は私にはありませんが?」

「この女狐……!」

「なんですか幼児さん……!」

視線をぶつけ合って火花を散らす勢いで睨み合う二人。

……おいおいその辺にしてくれよ……

そんなことをしているうちに俺の家が見えてきた。

「あ、じゃ、じゃあ俺はもうすぐだから!用事も思い出したし、すまん!また明日な!」

そう言って足早にその場を去る俺。これで解放される……。




☆ ☆ ☆


一方、残された二人はというと。

「……逃げられた」

「……ですね」

呆然と紘斗が逃げた方向を見るが運命が変わるわけでもないので、二人で向き合う。

「……それで?あなたはヒロのことどう思ってるの?」

美月が敬語をやめる。つまり、一応友達程度には見るということだ。

「……それでって……まあボクは一言で言えば一目惚れ。最初に会って、それでズキューンと。でも顔には出してないから大丈夫かと」

「一目惚れなんて……今時いるんだね。ちなみに私は幼馴染み。いつの間にか好きになってたんだ」

一目惚れと幼馴染み。違いは時間のみ。だが、同じなのは好きな男。

同じ男を好きになってしまった二人に幸せは訪れるのだろうか?

「それじゃ、これからは恋敵だね。――負けないから」

そう言って手を差し出す美月。これは戦線布告と受け取っても問題ないだろう。

「そうだね。よろしく、恋敵(ライバル)さん?」

それをゆっくりと手に取り、微笑みながら告げる空。

こちらも戦闘準備は万端ということなのだろう。


こうして、戦いという名の想い人争奪戦が開始することになった。


続く


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