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何気ない日常の先は  作者: 風凪
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第一話 プロローグというか登場人物紹介?

とある高校の一年生である俺、大鳥(オオトリ)紘斗(ヒロト)はどこにでもいるような普通の高校生だ。

入学してからというものの、特に派手な事件が起きたわけでもなく日常と呼べる平穏な毎日だった。

ちなみに、今“だった”と過去形になったのには理由がある。それは他の学校からやってきた生徒――いわゆる転校生がやってきたことにより、俺の人生は一瞬にして“静”から“動”になった。

……とは言っても本格的に動いたのはそいつが転校してきてから大体三ヶ月後の話だが。

さて。ここいらで長話(プロローグ)もおしまいにして、そろそろ本編に入ろうか。

それでは、『何気ない日常の先は』、始まります!




☆ ☆ ☆


地獄の入試を突破し、めでたく高校入学して最初の夏休み。

「宿題終わらねー!」

――の最後の日。

中学最後の夏休みは受験勉強のために消えたため、今年こそはと遊んでいたらこの結果だ。

残った宿題は読書感想文と膨大な量の数学の問題集。どちらも最強の敵だ。

まあ感想文はネットから写せばいいだけだし簡単だが……問題は数学の問題集だ。

こちらはクラスの心優しい友人に頼めばなんとかなるだろうか……?

まだ昼間だから間に合うはず。そう思い、携帯を取り出し連絡する。

ちなみに、その相手の名前は黒山(クロヤマ)華川(カセン)。とてつもなく読みにくい名前のため、自分からセンと呼ぶように言っている。

一応、優しい友人の一人である。他にも二人いるが、それは追々話すとしよう。

センに電話をかけて数秒。

『……もしもし?』

酷く眠たそうな声が携帯のスピーカーから聞こえてきた。

こいつがセンである。

「よっ。実は頼みが――」

『……断る』

ブツッ、ツー、ツー、ツー。

まさかの即答だった。いやもはや即答ではなかったが。

「……まさか寝てたのか」

センは休日の過ごし方の大半が睡眠という人間だ。

一度寝たらしばらく起きないというわけではないが、寝起きのテンションがとんでもないくらいに酷い。

今のはまだ軽いほうだ。本当に大変な時は無理矢理起こした相手を殺そうとするのだ。初めてあれに遭遇した瞬間は死を覚悟した。

ま、そんなわけで、センは対象外に認定。……にしても昼飯はどうしてるんだあいつは……?

「……センがだめなら他か」

渋々俺は残りの二人の片方に電話をかける。

そいつの名前は縁柱(エンバシラ)風馬(フウマ)。こいつは結構のんびりしている。普段のそいつを見ているとほとんどなにも考えていないんじゃないかと思ってしまうくらいだ。

趣味はその時の気分によるらしく、たまに勉強などと言う時がある。勉強したい気分ってなんだよ。

まあ簡単に言えば掴み所がないとだけは伝えておこう。

俺が風馬に電話をかけて数秒。

『はいはいはいはい、もしもしもしもし?どしました?』

なぜか二回ずつ言いながら電話に出た人物。こいつが縁柱風馬だ。

「よっ。宿題終わったか?」

ちょっと気さくに話しかければ素直に答えてくれるだろうと思い、そう話を切り出した。

『宿題?あー……やったない』

さっきのテンションとはうってかわり、気だるそうな口調。これが本来の風馬だ。

「やったないってどっちだよ……」

『そのまんまだよー。途中までしかやってない』

「なら最初からそう言えよ……」

ブツッ、ツー、ツー、ツー。

別に怒らないから、と言う前に向こうから切られた。

この反応は……数学をやっていないな?

「相変わらずあいつの勘は凄まじいな……」

そう一言呟く。

なぜ二人とも勝手に切るんだ、という思いを込めて。

さて。こうなると残るは一人になる。

俺がよくつるむ面子で唯一の女子で、名前は妻夫木(ツマブキ)美月(ミヅキ)。一言で言おう。腐ってる。いわゆる腐女子というやつだ。一番手伝いを頼みたくない人間でもある。

「でもこの際やるしかないか……」

諦めた俺はそのまま美月の携帯に電話をかける。……本当に不本意だが。

『もしもしヒロ!?もしかして情報提供を――』

ブツッ。

が電話をかけた瞬間、おかしな言葉を発する人間とは関わりたくないと瞬時に判断すると同時に切っていた。

恐るべし、俺の判断力。

prrrrr!prrrrr!prrrrr!

自分で自分に賛辞を送っている時だった。手元にある俺の携帯に電話がかかってきた。

言わずもがな美月である。

「……なんだよ変態毒キノコ」

『毒キノコ!?なにその新しい罵り方!?逆にゾクゾクしてくるじゃん!キャッ♪』

「……切っていいか?」

最初に自分からかけといてなんて言い草だというつっこみは受け付けない。

携帯を折りそうになる気持ちを抑えて返す。

「……なんの用だ腐乱死体」

『私まだ死んでないよ!?腐ってるのは合ってるけどさ!』

腐ってることは認めるのか。

『というかヒロから電話かけてきたんでしょ!?』

「………チッ。バレたか」

『なんで舌打ちしたうえに悔しそうにするの!?』

「数学の宿題見せろ」

『命令!?あ、でもなんか気持ちいいかも……』

なんてくだらないやり取りをしているのもそろそろ飽きてきたな。

「とにかく今からそっち行くから部屋片付けとけよ」

『んー……なんとなく了解。とりあえず下着干しとくね』

「じゃあな」

ブツッ、と瞬時にぶち消す。なんで変態の下着なんか盗む必要があるんだ。

まあそんなこんなで、なんとか宿題を終わらせそうだな。

「さてと。着替えて行くか」

俺は服を取り出しながらそう呟いた。

一応女だし、人様の家に上がるわけだから少しは気を遣わないとな。




☆ ☆ ☆


俺の家から美月の家までは少し距離があるが、専ら俺は徒歩が好きなので決して自転車などは使わない。

まあ歩いても二十分くらいだしな。問題ないはずだ。

「とは言っても、何故か曲がり角が多いんだよな……」

この町は少し迷路のようになっているため、引っ越して来た人とかはよく迷子になっていたりする。

そういう人に道案内してあげるのはこの町の常識だ。

「まあ最近は引っ越してくる人は少ないけどな」

ここら辺は特に有名でもないし、芸能人が住んでるわけでもない。かと言ってそこまで知られていないわけでもない。

つまりはちょっと迷路染みてるが普通の町ということだ。

「普通か……」

普通過ぎるのもどうかと思うけどな……

そう思った瞬間だった。

ドンッ!

「キャッ!」

短い悲鳴をあげて尻餅をついた女性。

俺がぶつかって倒してしまったらしい。

「すいません!大丈夫ですか?って……」

俺が女性だと思った人間は男の格好、つまり男性だった。

あまりに女性の顔に近いから勘違いしてしまった。まあ……甲高い声をあげたのも理由の内だが……

「はい……大丈夫です……すいません。よそ見していたもので……」

「いいですよ。見ない顔ですが……引っ越して来た人ですか?」

俺が今話している男は覚えている限りでは知らない顔だった。

「はい。今日引っ越して来て、迷子になっちゃったんです……公園が近くにあるのは覚えているんですが……」

「公園?どんな公園かにもよりますけど……」

一応、俺が知る限りでは三つはある。狛犬(コマイヌ)公園、三猿(ミザル)公園、鳥山(トリヤマ)公園の三つで、この辺りで一番近いのは狛犬公園だ。

ちなみに、鳥山公園が俺の家の近くにあったりする。

「えっと……確か入り口のところにキジのような像があったような……」

「あ、鳥山公園ですね。それなら案内しますよ。こっちです」

そう言って俺は彼の手を掴んで歩き始める。

……異様に柔らかいなおい。女みたいだぞ。

「あ、ありがとうございます!でも手を繋ぐのは……」

「へ?あー、すいません。癖で染み付いてるんですよ」

言いながらすぐに離す。……できることならまだ繋いでたかった。

まあ俺はそこまで変態のつもりはないし、変態は一人で十分だ。

「…………初めて男の人と手を繋いだ……(ボソッ)」

「?なにか言いました?」

「い、いえ!なにも言ってませんよ!?」

「そうですか?なら気にしませんけど……」

納得しないながらも俺は気にしないことにした。絶対なにか言っただろうが……本人が言ってないというのならそれでいいか。

「そういえばまだ自己紹介してませんでしたね。俺の名前は大鳥紘斗です。あなたは?」

「ボクは赤城(アカギ)(ソラ)。今度近くの高校に転入するんです」

転入?それなら同年代じゃないか。まあさすがに一緒はないだろうがな。

「空か。一緒ならよかったんだがな……ってか敬語やめていいか?歳近いみたいだし」

「いいよ。丁度ボクもそう思ったところだから。よろしくね、紘斗」

「ああ。まあ次はいつ会えるかわからんがな」

「あはは。そうだね。――あ、ここまで来ればわかるよ。ありがとね紘斗。それじゃ」

言うが早いか空はすぐに走って行ってしまった。……あんなに飛ばして大丈夫なのか……?すぐにバテるんじゃ……

「ま、新しい友達ができたということだな。さて。んじゃ俺はやるべきことをやらなくては」

空がいなくなったので、次は自分のすべきことを終わらせなくてはいけないな。

そう思い、俺は方向転換して美月の家へと再度向かうことにした。




☆ ☆ ☆


ピンポーン


日も落ち始める夕暮れ時になんとも間の抜けた音が響く。

空と別れ、また美月の家に向かうことにしたのだが、そこから不幸が連続した。

野良犬に追いかけ回され、昨日降った雨の水溜まりに車が通って俺にかかったり、女性が髪を振り乱しながら追いかけて来たり。

最後はもはや心霊現象だろうが……変質者だと俺は信じている。

まあそんなこんなで大分遅くなってしまったというわけだ。

俺がインターホンを鳴らして数分後。

やっとドアが開いた。

「………遅い」

……だがそれにはチェーン付きだということも述べておこう。

そしてドアの向こうから聞こえるのはとても不機嫌そうな声。

「……おい」

「………ヒロが悪いんだもん」

「いや確かに遅くなったのは謝るが……」

今回の怒りようはまずい。

そういえばいい忘れていたが、俺と美月はある意味幼馴染みと言っても間違いはないだろう。なぜならこいつとは幼稚園の頃からの仲なのだから。

「………さらには女の子と手繋いでたし……」

「待て。あれは男だぞ」

確かに女みたいなやつだったが。

「………嘘。最近のボーイッシュとか言うのに決まってる」

「そう言われてもな……」

服が男だったし……一人称が僕だったし……

「………とにかく帰って。今日はヒロの顔見たくない」

普段なら絶対に言わないようなことを言う美月。これは相当ご立腹のようだ。

「……そうか。じゃあ帰るな。すまん」

最後にそれだけ言って俺は美月の家から去った。

……あんまりしつこいと人としてだめだしな。




☆ ☆ ☆


というわけで俺は全てを諦めた。もちろん数学の話だが。

「にしてもなんであんなに怒る……?」

読書感想文を終え、俺はベッドに寝転がっていた。

考えるのは夕方の美月の態度。どう考えてもおかしい。正直俺でもあそこまで嫉妬は……嫉妬か?

「嫉妬はないだろ……」

さすがに同性相手に嫉妬はせんだろ。

それにあいつは重度の変態で腐女子。むしろ喜ぶはずだ。

……それでもおかしい。

「なにもかもがおかしいぜ……誰か説明求む、って言ってもいないしな……」

誰もいやしない自分の部屋の中で助けを求める。だが誰もいないので反応するはずがない。

「………仕方ない。今日は寝よう」

諦めた俺は布団を被り微睡みへと意識を落とした。


続く


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