1.脆い希望と淡い未来
これは、「英傑」の物語である____________
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「エルだ!エルが攻めてきたぞ!」
悲鳴と共に、民衆が宮殿の中へと逃げ込んでくる。
「くっそ…やっかいな厄神どもめ…!」
「すぐに英傑たちを集めましょう。」
ミネルはすぐさま宮殿の中に走って行った。
(エルめ…幾つ星を吸収したんだ…?)
エルは大きな黄金の羽を広げ、こちらへと少しずつ
近づいてきている。近くに逃げ遅れている人は
見当たらないが、このままでは宮殿が危ない。
黒に赤の線が入ったフードをかぶっている男______
クロノアは赤い鎌を取り出し、エルへと向けた。
その時、後ろから声が聞こえた。
「待てクロノア!あいつは6つも星を吸収したようだ。
以前よりかなり成長しているようだぞ…」
「はわわわ…!早くあのやばいやつをなんとかしないと!」
真っ赤な髪に、裁判官のような服装をした男_____
ディモノスと、金色の髪に、白のティアードフリルの水着のような服を着た少女______カノが来たようだ。
だか、三人ではエルを止めることはできない。
前回エルがこの星に来た時は、せいぜい八人の英傑で
五分五分だった。しかしそれがさらに強くなったと
考えると、三人で挑むのはかなり無謀な話だった。
「三人で挑んでも無理だ…とりあえず、フェリカに伝えて援軍を呼ばなければ。あと、おそらくこの宮殿はもう無理だ。民を別の場所へと避難させよう。」
クロノアは2人に向かって指示を出す。
「それを俺とカノでやれってことだな。だがお前は?」
「色々試してみたいことがあるんだ。神にこの
力が効くかどうかを。」
「えっ一人で挑むつもりですか!?むちゃですよ!」
カノが驚く。
「いや、そう長く戦う訳じゃない。あと
勝てるとは一ミリも思っていないから安心しろ。」
「それ安心していいんですか…?」
その後、くれぐれも無理しないようにと言い残し、
ディモノスとカノが宮殿の中へと走って行った。
「はぁ…とりあえずやってみるか。」
クロノアは、鎌で自分の腕に傷をつけ、血を垂らした。
「よし…エルよ聞け!我は血の使いクロノア!
今からお前は俺のサンドバッグだ!」
クロノアは、鎌を高々と上げてエルへと叫ぶ。
しかし、エルはまったく聞く耳を持たず、
ただゆっくりとこちらに近づいてきている。
「はぁ…【凝血・鎖】!」
水溜りのように床に滴っていた血が、水滴となって
浮かびだし、固まっていく。
そして、固まった血は鎖のような形になった。
クロノアは、その鎖をしっかり握り、助走をつけて
高く飛んだ。
「ジャンプだけじゃあの優雅に浮いているエルには届かないが、この鎖があれば…!」
クロノアは、空中で鎖をエルの方向に投げた。
投げて中を待っている間も、クロノアから滴る血が
固まって、長くなり続けている。
そして、血の鎖はエルの羽の先を掴んだ。
「おらっ…!」
クロノアはその鎖を使って、ターザンのように
高く飛び上がった。
その高さは、エルの頭上よりも高かった。
そしてクロノアは鎌を振り上げる。
しかし、エルはクロノアを見向きもしない。
「これでやれるとは思ってないが…!」
そして、エルに向けて思いっきり鎌を振り下ろした。が、
エルにぶつかる直前、エルの頭上に謎の光の壁が現れ、
クロノアの攻撃を防いだ。
「っ…!この壁…丹楽の!」
クロノアは、この壁に見覚えがあった。
この星、「サウンドラ」の横にある星、「丹楽」の
七将軍の第1位の人が使っていた力である。
これは第一位が死んだということと同時に、他の七将軍も負け、「丹楽」が
このエルに飲み込まれたことを指していた。
「くっそ…!一旦退散かっ!」
クロノアは、鎖を使い宮殿へと急いで戻った。
その間も、エルはクロノアを見ず、ずっと
遠くの方を見ていたままだった。
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「みなさん落ち着いてください!」
カノが叫ぶ。
民衆が宮殿の開かない出口の扉の前に集まっており、騒がしくなっている。
「おいどうゆうことだ!そこまで攻めてきてるんだぞ!
なぜ扉を開けない!」
民衆の一人がカノに向かって叫ぶ。
「今外は危険です!フェリカさんが結界を張り終わるまで
待ってください!」
だが、エルというやばいやつがせめて来てるというのに、逃げれないの
だから、民衆が騒がしくなるのも無理はない。
一方その頃、ディモノスと、真っ白な髪に、魔法使いのような服装をした人、フェリカは宮殿の庭の真ん中にいた。
「フェリカ、なるべく早く済ませろよ。民の命が危ない。」
「わかっていますが、結界を張るのにはかなりの力がいるのですよ。」
フェリカは胸の前辺りに両手をかざし、魔力をためていく。
20秒後、
「…まだか、民の命がかかっているのだ。」
「ちょっと待ってください…なにか変です。」
「ん?」
ディモノスがフェリカの手の中を見ると、光の玉がある。
これが結界のもとなのはわかるが、その玉の様子がおかしい。
「力が…たまらない?」
「はい…ずっと魔力を送り続けているのですが…」
「ディモノス!」
その時、二人の後ろから叫ぶ声が聞こえた。
「エルはもう丹楽を吸収してしまっている!第一位の力を使っていた!」
クロノアだ。すると続けて叫ぶ。
「もしかすると、第3位の魔法も使っているかもしれない!」
「第3位?」
「スクロルさんですね…ってことは…」
「力が吸収されているかもしれない…ってこと…?」
エピソード1 「脆い希望と淡い未来」________




