王族を超える責務
タウンハウスに帰宅したソフィアは、まず家族に、聖堂での出来事と、モラッティ氏との面会の結果を報告しました。
そして、チャールズ王子から聞いた、王家に伝わる「大魔法使いと大災厄」の言い伝えについて話したとき、姉のビクトリアが静かに口を開きました。
「私もね、ソフィア。あなたが山火事の上を飛んでの消火活動をした後、セドリック殿下から聞かされたわ」ビクトリアは、ソフィアを見つめる瞳に、深い同情の色を浮かべていました。
「『お前の妹は、もしかすると、救国の魔法使いかもしれないね。可哀想に』。セドリック殿下は、そう仰ったの」
王族というのは、生まれたその瞬間から、国の重い責務を負って生きている人々だ。その彼らが、自分の妹に対して「可哀想に」と口にするほどの使命を負わされたことに、姉のビクトリアは、痛いほどの同情を覚えました。それは、妹の才能を誇りに思う気持ちとは、全く別の、庇護したいという切実な感情でした。
聖魔法の訓練は、正式に聖堂に通って行うことになりました。モラッティ氏は、ソフィアの稀有な才能を見て、熱心に指導を申し出てくれたのです。そして、ソフィアは、モラッティ氏から「聖堂に迷惑をかけない範囲で」という条件付きで、風魔法の使用を許されました。
その許可が下りた瞬間、ソフィアは、決めました。重い王室の馬車ではなく、軽やかな風に身を任せて、聖堂に通うことを。
翌週、ソフィアが風の精霊に聖堂の応接室まで飛ぶよう頼むと、彼女の周囲に集まった精霊たちは、喜びの声を上げた。聖魔法と、風の精霊は、意外にも相性が良いようでした。精霊たちは、ソフィアが聖魔法を習うことを、(いいこと、いいこと)と、心の中で歓迎してくれました。
聖魔法が持つ、清浄で、邪を払う力。風魔法が持つ、奔放で、全てを繋ぐ力。その二つの相反する力が、ソフィアの内で結びつくことを、風の精霊たちは、新たな可能性の始まりとして捉えていました。ソフィアは、精霊たちの祝福を感じながら、王都の空を滑るように飛んでいきます。彼女の旅は、いよいよ本格的なものになろうとしていました。




