社交界の波紋と母の予言
サザーランド公爵夫人は、友人たちの証言を聞き終えると、再びソフィアに目を向けました。その眼差しは、老練な社交界の主が、一つの宝石を値踏みするかのような、複雑な光を宿していました。
「ソフィア様。あなたは、本当にすごい才能をお持ちなのよ」
公爵夫人の声は、先ほどの世間話の時とは違い、静かで、しかし重みがありました。 「その才能を、どうしたらこの世で活かせるのかを、どうぞよく考えてくださいね」
それは、単なる賞賛というよりも、ソフィアの未来に対する、一つの助言、あるいは忠告のようにも聞こえました。
そのあとは、緊張を解きほぐすかのように、最近の若い子の間での流行や、学園で流行っているものなど、当たり障りのない会話が重ねられ、美味しいお茶と、手の込んだお菓子をいただき、お茶会はつつがなく終わりました。ソフィアたちは、来た時と同じように四人で連れ立って、馬車に揺られて寄宿寮へと帰っていきました。
タウンハウスへ戻ったソフィアは、早速、お茶会の様子を母、マーガレット夫人に報告し、母は、すべてを聞き終えると、深い息を吐きました。
「これで、王都の社交界では、しばらくはあなたの魔法のことで持ちきりになりそうね」
母は静かに、しかし、ソフィアの未来が動いたことを悟っていました。 「披露したのは、火魔法と水魔法だけ?」
「いえ、聖魔法を使って空気の浄化もしたのですが、気づかない人が多くて……」
ソフィアがそう答えると、母は即座に判断しました。 「それなら、その魔法のことは当分、話さない方がいいわね。目に見えない力は、人々の戸惑いを招くだけよ」
そして、マーガレット夫人は、恐ろしいほど冷静な口調で、ソフィアの現状を分析し始めました。 「ソフィア。あなたは、これから多くの貴族家が、あなたを取り込みたいと動き出すと思うわ。特に、年頃の男の子がいるお宅は、あなたを婚礼という形で迎え入れたいでしょう」
チャールズ王子がソフィアのことを調べ始めたのが、その良い例だと、母は指摘しました。 ソフィアは、驚きで目を見開いた。「私に、そんな価値があるなんて……」
「あるわ」 母はきっぱりと言い切りました。「あなたが、人前で派手に魔法を披露したことで、貴族の間であなたの価値が、具体的なものとして広まったのよ。特に、複数の属性を操るという事実がね」
母の言葉は、さらに続き、「これで、もし、あなたが全属性持ちです、と広まってしまったら、さらに大変なことになるわ。そうなれば、恐らく余所の国の王家からも、縁談の声が掛かってくるでしょうね」
ソフィアは、自分の才能が、自分自身の意思とは関係のないところで、この国の、そして世界の力学を動かし始めているという事実に、心底びっくりしました。




