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公爵夫人の招待と魔法の噂

 ケイト・サザーランド公爵夫人から、学友たちと一緒にお茶会に招待されたことを母に告げると、マーガレット夫人からは、「一度、タウンハウスに帰って来なさい」という返事がすぐに届きました。


 寄宿学校の友人、エリザベス、アマンダ、レイチェルの三人の元にも、やはり公爵夫人からの招待状が届いており、彼女たちは「これは、どうやっても行かざるを得ないわね」と意見の一致をみました。ソフィアも帰宅する旨を皆に伝え、慌ただしくタウンハウスへと戻りました。


 母マーガレットは、王都の社交界について詳しい人でした。 「あら、サザーランド公爵夫人ね。あの古狸、いえ、麗しい夫人が動くなんて、裏があるに決まっているわ」 母マーガレットは扇子で口元を隠しながら、鋭い眼光を放ちました。このお茶会の意図については「あなたの魔法の才に、公爵夫人が強く興味を持った可能性があるわね」と矢継ぎ早に言います。


「でも、これはあなたの社交界デビューにちょうどいい機会よ。行ってらっしゃい。服装は、向こうに気負わせないよう、あくまで清楚な感じのワンピースでいいわ。あなた、持っている?」


 手持ちの衣装の中から、母は淡いブルーのワンピースを選び出しました。ソフィアには地味に思えましたが、母の目には適っているようです。それに合わせて、ワンピースに合う靴とバッグは、新しく買い足すこととなりました。


 お茶会当日、四人の少女は連れ立って馬車に乗り込み、堂々たる公爵邸へと向かい、案内されたのは、庭に面した光あふれる広いサンルームでした。


 サザーランド公爵夫人は、優雅な微笑みを浮かべて口火を切った。 「今日は、私のお茶会に来てくれて嬉しいわ。皆さま、学業に遊びにと忙しいでしょうに、迷惑を掛けたわね」


 招かれた少女たちは、一斉に、しかし品良く返します。 「いいえ、公爵夫人。迷惑だなんてとんでもないことです。お呼びいただいて光栄です」


 公爵夫人は、他の友人たちと二、三の挨拶を交わした後、狙いを定めたようにソフィアに問いかけました。 「ところで、ソフィア様は、先日、学校の広場で魔法の実演をされたそうね」


 ソフィアは、内心「来たな」と思いましたが、母と予行演習していた通り、控えめに答えるべく、用意していた言葉を口にした。 「チャールズ殿下に魔法披露の場を用意していただけたので、やむなく拙い技を披露することとなりました」


 しかし、夫人はその言葉を一蹴します。 「拙いどころか、結構な大魔法を披露されたって聞いたわよ。それに、複数属性の魔法を操ったと聞いて、私も驚いたわ」


 夫人は、ソフィアの控えめな態度には構わず、噂の確信に迫ります。 「有名な王宮魔法使いだったドン・クリントン卿でさえ、得意だったのは火属性だけだった。あなた、本当にすごいわね」


 ソフィアは、素直に答えました。 「習った先生が、火魔法使いのドン先生と、水魔法使いのトーマス先生でしたので…」


 公爵夫人は、今度は他の少女たちに視線を向け、 「皆さんも、ソフィア様の魔法を実際にご覧になったの?」


 友人たちは、公爵夫人を前に緊張しながらも、口々に感想を述べた。 「はい、火の鳥が現れた時には、本当にびっくり致しました。私の知っている火魔法は、薪の山に火を点ける程度のものしか知らなかったので、炎そのものを操るのは、本当にすごいな、と…」 「水魔法も、水が無いところから大量の水が現れて、天に昇っていくなんて、自然の摂理に反しているとしか言いようが無くて…」


 彼女たちの言葉には、賛美の響きと共に、ソフィアの持つ異質な力に対する恐れのような感情も含まれているように聞こえました。ソフィアは、公爵夫人の質問と、友人たちの証言が、これからどちらの方向へ転がっていくのか、気が気ではありません。


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