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広場での魔法披露と、人々の視線

 王立寄宿学校での生活は、ソフィアにとって、同年輩の友達たちと触れ合える、何にも代えがたい貴重な時間でした。


 エリザベス、アマンダ、レイチェルといった、いつも一緒にいる友人もようやくできましたが、ソフィアは、授業が終わるとすぐに王宮へ魔法の勉強に向かわなければならないため、彼女たちと一緒に遊ぶ時間が他の子たちより少なくなってしまうのが、小さな悩みでした。


 ある時、友人たちに「ねえ、魔法を見せてよ」と頼まれても、「安全なところでないと魔法を使っちゃいけないと厳しく言われているの」とソフィアは首を横に振るしかありません。魔法使いの厳しいルールとして、安全が確保されていない場所での魔法の使用は固く禁じられているからです。そのため、なかなか魔法を披露できず、ソフィアは心苦しく思っていました。


 そんなソフィアの悩みに何故か気づいたのは、同級生のチャールズ王子でした。王子は静かに、しかし着実に寄宿学校の事務方と交渉し、生徒たちが集う広場の使用許可を取り付けてくれました。万が一の暴走に備えて、王宮からは師匠であるトーマスさんが監督として駆けつけてもくれました。


 ソフィアの魔法の実演は、他の生徒たちの関心も高く、広場には大勢の生徒が集まりました。ソフィアは、練習の成果を込めて、まずは火魔法と水魔法を披露しました。


 長年の研鑽を積み、魔力容量も豊富なソフィアの火魔法は、もはや指先に炎を灯すだけの稚拙なものではありませんでした。魔力を込めて宙に放たれた炎は、見る間に形を変え、巨大な「火の鳥」へと姿を変えました。それは、炎と光を纏い、力強く羽ばたく伝説の鳥のようで、広場に集まった誰もが、その雄大な姿に目を奪われたのでした。


 次に披露したのは水魔法でした。ソフィアが空に向かって手を掲げると、清涼な水が渦を巻き、まるで生きているかのようでした。その水でできた巨大な「水竜」を天へと昇らせました。水しぶきと、空から差し込む光の反射が、それは幻想的な風景を作り出したのです。


 そして、最後にソフィアは、あえて幼い日に気を失った聖魔法による大気の浄化に挑んだのでした。  彼女は深く集中し、会場の広場全体の空気を浄化する魔法を試みました。すると、再び周囲の空気がキラキラと輝き、場にいるすべての生徒が、一瞬、深く澄んだ水を飲んだかのような清涼な感覚に包まれました。


 ソフィアとしては、火の鳥と水の竜、そして聖魔法による清浄な空気まで含めて、渾身の力を尽くした魔法の披露でした。監督してくれたトーマスさんは立ち上がって「この聖魔法の質と大きさは並の聖女ではまねできない」と大絶賛してくれたのですが、なぜか観客である生徒たちの受けは、それほど良くなかったように見えました。火の鳥と水の竜の時は湧き上がった歓声が、聖魔法の後には、静かなざわめきへと変わってしまったのです。


「どうしてだろう……」


 観客が広場を去っていくのを見送りながら、ソフィアは立ち尽くしました。自分が一番得意になりつつある、清らかで、誰の役にも立つはずの聖魔法が、なぜ響かなかったのか。生徒たちが魔法に求めているものは、一体何なのだろう。ソフィアは、その純粋な疑問と、人々の視線の向こうにある心の形について、深く悩み始めるのでした。


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