全属性の孤独と、欠けたる師
ソフィアは、自分が全属性持ちという、稀有な才を与えられていると知ってはいても、最近になって、その道のりの孤独を深く感じ始めてもいました。それは、彼女が持つすべての属性について、王宮の周りに指導者がいないという、単純でありながらも根深い事実に突き当たったからです。
王宮に保管された魔導書を読み漁り、自分で道を切り拓こうと研鑽する日々。火魔法、水魔法、そしてトーマス先生から教わる土魔法には、頼れる師がいますが、それ以外の属性は、まるで霧の中でした。
たとえば風魔法。これは、空気や大気に力を発揮し、古くは飛行魔法にも通じるとされる、重要な属性です。しかし、その実践的な指導者が、王宮には存在しません。ソフィアは書物から、その力の輪郭は掴めても、どう手を伸ばしてよいのかがわかりません。
そして、最も師を必要とする聖魔法。過日、ソフィア自身がその力を試したように、呪いの解除や、魔物の吐き出す瘴気の浄化には、この魔法が必須とされています。しかし、これも王宮には、その術を知る指導者がいませんでした。聖堂には、もしかしたら高位の神官の中に使い手がいるかもしれませんが、ソフィアには、その情報がまるで入ってこないのです。
土魔法については、王宮の土木担当の部署にも、わずかな使い手がいるらしいことは判りましたが、彼らは技術者であり、魔法使いとしての修行を積んだ者ではありません。
ソフィアは、この国には、確かに市井に紛れて暮らす魔力持ちがいることは知っています。しかし、そうした人々は、貴族の子弟のように幼い頃から訓練を積んでいないため、彼らの未熟な魔力は、すでに高みを目指すソフィアの修行の参考にはならないと思われました。
全属性の才能というまばゆい宝を与えられながら、ソフィアは、その宝のすべてを開くための鍵を、自力で見つけなければならないという、重い現実に直面していたのです。彼女の前に広がる道のりは、まるで誰も歩いたことのない原野のようで、ソフィアは、わずかな書物の知識と、自らの想像力だけを頼りに、そこを進むしかなかったのです。




