王立寄宿学校への扉
ソフィアの魔法の修行の日々は、まるで水が流れるように、数年の月日を重ねていきました。白髭のドン先生はとうとう宮廷魔法使いを引退しましたが、ソフィアの探求心は衰えません。彼女はもはや、誰かに言われるまでもなく、魔法の高みを自ら目指すようになっていました。 王都にいる間は、王宮の魔法使いの部屋に通い詰め、古びた魔導書を読み漁っては、人目を忍んで実地に魔法を試すという、研鑽の日々を過ごしていました。
そして、ようやく十三歳になった秋、ソフィアは王立寄宿学校に入学することになりました。それは、魔力の発現によって修行を優先していたソフィアにとっては、遅すぎるくらいの入学でした。
王立寄宿学校は、貴族の子弟と、優秀で裕福な平民の子が机を並べて学ぶ、この国で最も権威ある学びの場といえました。フレイザー家では、長男のマイケルは既にこの学校を卒業し、今は上級の士官学校へと進学しています。姉のビクトリアは、三年生に進級しており、その才気と活発さで生徒会執行部のメンバーを務めています。同じ三年生には、この国のセドリック王子も在籍しており、彼は慣例により、自動的に務めることになっている生徒会長の役職に就いていたのでした。
そして、ソフィアと同じ一年生には、もう一人の王族、チャールズ王子が在籍していた。兄である文武両道で優秀なセドリック王子の影に隠れがちですが、チャールズ王子もまた、静かでなかなかに優秀な王子様だと評判だったのです。
この学校で、魔力持ちの子弟は、広大な敷地の中にソフィア以外にはいませんでした。そのため、ソフィアは、授業の合間や放課後の時間を利用して、引き続き王宮に通い、魔法の修行を続けることになったのでした。同級生たちは唯一の魔力持ちのソフィアの事は敬遠しているようで、ソフィアは一人でいることが多い子でした。
最近になって、ソフィアを指導してくれるようになったのは、ドン先生の弟子のトーマスさんでした。トーマスさんは、ソフィアにずっと興味を持っていたものの、師であるドン先生に遠慮していたのだそうです。引退したドン先生は、月に一度くらいは王宮に顔を出していましたが、指導はトーマスさんに任せている様子。トーマスさんは水魔法が得意で、火魔法と土魔法も使うことができる多彩な魔法使いでした。
特に土魔法は、植物に有効な魔法であり、農業生産が盛んなフレイザー領では、将来的に大いに重宝されそうな魔法でした。ソフィアは、ドン先生から習った火魔法の次に、トーマス先生から水と土の魔法の手ほどきを受け、その全属性の才能を、少しずつ開花させていくことになると考えていました。ソフィアの寄宿学校での日々は、賑やかな学園生活と、孤独な魔法の探求の、二つの世界を往き来することになるのでした。




