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第一章 オンライン同窓会②

今は岡山県にある高校へ通っているけど、つい3ヶ月ほど前までは神奈川県の高校に行っていた。だけど親の転勤の都合で3月末にここへ引っ越して、4月から岡山県にある私立桂ヶ丘(かつらがおか)高校へ転入したんだ。


なぜ僕が急いでミーティングアプリを探しているかというと、引っ越しする前に通っていた神奈川県にある県立青柳(あおやぎ)高校の同級生とオンライン同窓会する為だった。


その同窓会のメンバーは僕を含めて4人。


衣智子いちこ(通称:イチ)

県立青柳高校 2年C組

イチは僕が神奈川県に住んでいた時、隣の家に住んでいた幼なじみの女の子。どういうわけか幼稚園から小中高と同じ学校に行っていた、いわゆる腐れ縁ってやつだ。演劇部に所属していて、口が悪くて声も態度もデカい。


圭三けいぞう(通称:サン)

県立青柳高校 2年C組

サンは同じ高校の野球部で一緒だった男。中学の頃は別々の学校の野球部とて闘う良きライバルだった。ある理由があって途中で野球部を辞め、イチと同じ演劇部に入る。体がバカデカくて、少々熱くなるタイプ。


奈々美(ななみ)(通称:ナナ)

県立青柳高校 2年C組

ナナは僕の隣の席に座っていた声も体も小さい女の子。いつも1人で本を読んでいたり何かの音楽を聴いていたりしていた。クラスの中では『不思議ちゃん』というキャラクター。


そして僕は、


慎吾しんご(通称:ゴ)

私立桂ヶ丘高校 2年4組

今はここの高校で野球部に所属しているが、残念ながらまだまだ補欠レベル。ゲームが好きで夜遅くまでやっているから、とにかく朝が弱い。



この4人は青柳高校の1年の時、学園祭で一緒に演劇をやった仲間だった。演劇部のイチが学園祭の演劇の企画を考え、幼なじみである僕のことを強引に入れた。もちろん僕は演劇なんて一度もやったこと無いし最初は嫌で断っていたけど、イチの()()()()を聞いて仕方なく引き受けてしまった。その後に僕が無理やりサンとナナを演劇の企画に誘い、4人が仲間になったという訳だ。


メンバーが4人揃ったところで、企画発案者のイチが鼻息を荒くしながら大声で叫んだ。


「ちょっと皆んな聞いてっ! 今日から演劇の練習の時は私のことを『イチ』って呼んでね。 圭三は『サン』で、奈々美は『ナナ』だよ!」


「おいイチ、俺の紹介はねぇのかよ」


「うるさいよ、ゴッ!」


どういうわけか、イチは幼なじみの僕に冷たい。


演劇のユニット名は、皆んなの通称がイチ・サン・ゴ・ナナということで『ハイスクール奇数組』という名前になった。何でもイチのお父さんの本棚に似たような名前の漫画があったから、イチがこのユニット名を勝手に決めた。一応もう1人の『キュウ』というメンバーも探したが、同じ学年でキュウがつく名前の生徒はいなかった。

そんなこともあり、僕たちは学園祭の演劇が終わった後でもお互いのことをイチ・サン・ゴ・ナナと呼び合うようになっていた。



担任の先生から学校に呼び出された僕は、しとしとと降る五月雨に濡れながら家に帰って来た。自転車を駐車場のわきに置いて「ただいま」と家に入ると、夕飯の支度をしていたお母さんが手を拭きながら出てきた。


「おかえり、慎吾。 あんた学校はどうだったの?」


「うん、大丈夫だよ。 明日からはちゃんと学校に行くから心配しないで」


「慎吾、本当に大丈夫?」


「うん。 お母さん、いろいろゴメンね」


息子が1ヶ月も学校へ行かずに部屋で引きこもっていたら、親が心配するのは当然のことだろう。僕のせいで家族が不安な毎日を過ごしていると思うと、胸が張り裂けるくらい辛い気持ちだ。でも今夜開催されるハイスクール奇数組のオンライン同窓会をやるきっかけで、明日からまた学校へ行こうと僕は心に決めていた。


2階にある自分の部屋に入ってからすぐにノートパソコンを開き、急いであのアプリを探し始めた。


「ミーティングアプリ、ミーティングアプリと・・・あったあった、これだよ!」



ミーティングアプリ

『アラノイアス(ARANOYAS)』



このアラノイアスというアプリを使ってオンライン同窓会をする為に急いで名前をセッティングした。しかし皆んなでニックネームで呼び合っていたから、なかなか本名を思い出せない。


「あれ? そういえばあいつらの名前って何だっけ?」


それからスマホに入っている神奈川時代のあらゆる情報を調べて、やっと皆んなの名前を思い出した。



そして指定した時間をアプリに入力し、いよいよハイスクール奇数組のオンライン同窓会が始まった。

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