プラン
部屋に戻された私は数分間放心状態だった。
(公爵様はやっぱり婚約破棄をしようとしたのね……さっきは国王陛下に認められず実行できなかったと言っていたけれどそれがいつ変わるかわからないわね…)
国王陛下も今後の国のために、魔力持ちのヘルディス家と公爵様を結婚させて、公爵様の力を国に留めておきたいのでしょう。
けれどヘルディス家以外にも魔力持ちの家門はある。公爵様を怖がり、名乗るものがいなかったから私が選ばれただけで今後はどうなるか見当がつかない。
(もし婚約破棄ができる状態になってしまったら、公爵様に即婚約破棄されてまた家に戻らないといけなくなる………それだけは嫌ね…)
もともとヘルディス家は私が魔力を持っていないことからか呪われているだとか、体を売っているだとか他にもあらぬ噂が立てられている。
それも踏まえると、公爵様の私への印象は本当に最悪だ。
(とりあえず今は私が無害なことを頑張って表していこう。)
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「夕食の時間です。」
夜になると部屋の外から声が聞こえた。
「はい。今行きます。」
扉を開けると角も翼もない、執事の格好をした人間がいた。
「え!人間の方ですか?てっきりここは魔族しかいないものだと…」
グラドも護衛も他にもたくさんの魔族がこの家を歩いているのを見たけれど、人間には一度も会わなかった。
「いいえ、私も魔族です。セファスと言います。もう私は年老いているので角を隠せるのですよ。」
「ええ!そうなんですか…!勉強になりますね。」
するとセファスさんは少し驚いた顔をしたかと思えば次は顔をしかめた。
「聞いていた話とは違いますね…」
「?すみません。何か言いましたか?」
「いえいえ。…こちらです。」
セファスさんが大きな食堂に連れてきてくれた。
(やっぱり稼いでるだけあるわね…家が大きい…)
あれ……公爵様がいない。
「公爵様は食べないのでしょうか?」
私がそう聞くと、セファスや周りの人がビクッとし、額に少し汗をかきはじめた。
「え、ええ。ダージリ様はもう少し遅い時間に食べるので…」
「そうなんですね。」
まぁ、いたらいたであんな会話をした後で気まずいからいいかな。
「え!」
特に食事については何も考えていなかったけれど、ここまで美味しい料理は初めて食べたかも…。というレベルで
「美味しい…。」
(あ、口に出してた……)
私の声が聞こえたのか、この料理を作ってくれたのであろう服装をしている人が少し笑っていた。
(公爵様以外にはそこまで嫌われてはいないのかしら?……グラドのおかげなのかな?)
グラドは公爵様家にもよく来るらしいが、あくまで魔族の子供。基本的には公爵家の横にある森に住んでるらしい。
その森には公爵様が助けた魔族がたくさんいると、グラドに聞いた。
(たくさんの魔族……明日行ってみようかな…)