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心透  作者: 寝眠猫
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…………


「おい。」


…………


「おい!!!!」


「…ぁ」


(あれ、私……)


あ、そうださっき公爵様が入った談話室に入ったんだ…。


「………クソッ!」


バンッ!!!


「!?」


突然、座っていた公爵様が前にあった机を蹴った。


「あ、あの…。」


「だから人間は嫌いなんだよ。お前もとっとと失せろ。」


そう言って公爵様は立ち上がりドアに向かって歩き出した。


「え!?ま、待ってくだ」


バンッ!!!


扉がものすごい勢いで閉まった。



バキ……



「わ、わぁ…。」




(すごい…机をひと蹴りしただけで粉々になってる…………。)



……いやいや!早く追いかけないと、!

私はミシミシと音を立てるドアをそっと開けて会場に戻った。


「ヒューナ。」


──あ、これ。


「…。」


「帰るわよ。」


「…はい。」


お母様は普段は猫を被っている。だから常に優しい。…だけど、だけどこの声色。怒ってる。


(………もしかして談話室で私が公爵様から言われたこと聞いてた……?)


それって……


================================


ベチンッ!!!!


「…っぇ……?お、お母様、?」


私はお母様とお父様と馬車に乗って家に帰った。

兄たちは舞踏会に残っていたのもあるが、馬車では誰一人言葉を発しなかった。

そして家に着いた瞬間、お母様が高く手を上げ、私の頬に振り下ろした。


「ヒューナ……何をしているの…?公爵様、談話室から出てきて婚約を解消すると言い残して言ったわよ……。ねぇ、何をしているの?」


『全部失敗じゃない…産んだ意味よ!!?こんなことになるならはやく殺しておけばよかった…。』


(……あぁ……そっか。お母様は私を心配したわけじゃなかったんだ。)


「お前、俺たちがどれだけ大変な思いをして育ててやったと思ってんだ!!魔力もないのに女としての魅力もないのか!!?」


ドンッ!!


「ゔっ!!!」


頬の次は背中を殴られた。


『はやく公爵家と関係を持たないと今後の立場が危うくなるかもしれないというのに!!こいつ…使えないにもほどがある…』


────痛い。



================================


「……は、ぁ……っぁ……。」


「…はぁ…はぁ……ヒューナ、明日迎えの馬車が来るから朝一で公爵家に行くのよ。」


「……っぇ……でも…婚約っ……解消って…、」


「ちがうわ!!ちがう!!行くのよ!!行ってっ!!」


「公爵を誘惑でもして手に収めろ。そのくらいならできるだろ?手に収めるまで帰ってくるな。」

 


「………はい…。」



……もう今更何を言っても無駄だ。

今は全身の痛みで体も起こせそうにない。

心を読めるんだからお母様たちがこの婚約を強く願っていたことくらいわかっていたのに。

心配なんて微塵もしてくれたことなかったのもわかっていたのに。

私の甘ったれた思考のせいだ。


「奥様、旦那様、そろそろ冷えますので家の中にお戻りください。」


侍女のサタに呼びかけられてお父様とお母様は家に入っていった。


「ヒューナ様、朝ではなく今から公爵家に向かったほうが良いかと思います。」


頬殴られた時に少し目も腫れたのかな?

視界がぼやっとしているけどサタがとても悲しそうに私を見ている気がする。


「…どうして?」


「もうすぐ舞踏会からファズ様とヌートバー様が帰ってきます。…ヒューナ様は鉢合わせたくないかなと…思いまして…。…余計なお世話だったら申し訳ありません!!」


そうだ…。サタはこの家に来たときからこんな感じだった。

サタは私が7歳のころに家に来た。

ちょうど心の声が聞こえる力を怖がって、触れられそうになるたびに彼女にひどいことも言ってきたことをぼんやりと覚えている。

それでもずっと少しずつ距離を詰めようと頑張っているのは私も気づいていた。

…それに朝少し聞こえた心の声も褒めてくれていた。


「……ありがとう。サタ。そうするわ。」


サタは少し驚いたような顔を一瞬見せたが、また悲しそうな顔に戻り


「…!はい、馬車の用意をしてまいります!」


と少し引きつった笑顔で言った。

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