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あの日
私は魔力を保持する3代名家門のうちの1つ、ヘルディス家に生まれた。
数少ない魔力持ちのヘルディス家では、生まれてすぐに魔力の指導が始まる。
私には兄が2人いた。どちらも強力な魔力を持っていてお母様やお父様、先生や使用人までもが2人をとても可愛がった。
一方で私は魔力を持っておらず、ヘルディス家の負の存在だった。
けれどそれに気がついたのは相手に触れると心の声が聞こえてくる能力を持ってからだった。
お父様は優しくて、特にお母様はいつも笑顔で私と話してくれていた。
だからこそ私の6歳の誕生日の悲しみと怒りは忘れられない。
私が生まれて魔力を持っていないとわかった瞬間から、私は家族から道具としてしか見られていなかったのだ。
6歳になるまでは何も気づいていなかったから、お兄様達と比べてあまりにも多い勉強や貴族マナーの教育に疑問を抱かなかった。
そしてそれは私を『あの公爵』に嫁がせるためだったことを母の心の声で初めて知った。




