9話 最終卒業特別試験
迷宮探索から帰り着いた僕は家で両親と兄と共に夕食を食べていた。
その時に僕は竜の炎の時発動した異常なまでのスピードについて話した。
父は世界各国を巡る商人であるのでいろいろな情報について詳しいと思ったからだ。
心配をさせてしまうので竜のことについては伏せて。
すると父ではなく母が口を開いた。
「その能力心当たりがあるわ。その時嗅覚とか聴覚とかも強くならなかった?」
「うん。なんか感覚が研ぎ澄まされた感じがして、音とかも鮮明に聞こえた気がする。」
「特徴が一致するから間違いない、それは【究極身体能力】だと思うわ。私の出身地は猫耳族のみが暮らす小さな里だったのだけどそこに伝わる能力でね、獣人のごく一部のみに発現するらしいの。私の出身地の里にも一人いたわ。物凄い速さだったから覚えてる。能力としては素早さの向上のほかに嗅覚や聴覚の向上があるらしいわ。」
「獣人の能力なのか。」
「そう伝わっているわ。でもハーフでも発現することがあるのね。でも気を付けて、【究極身体能力】が使えるのは一定時間だけでその時間を過ぎると体力が回復するまで使えないわ。」
「わかった。気を付けるよ。」
「初めて聞く能力だけど凄そうだな。」
父がそう言う。
「凄いわよ。使える猫耳族なんてなかなかいないのよ。どのくらい役立つのか楽しみね。」
その後の夕食の時間は僕の【究極身体能力】についての話題で持ちきりとなった。
それからというもの、【究極身体能力】を駆使して剣術でも学院で以前より良い成績を修めることができるようになっていった。
そうやって順調に良い成績を修めながらも学院生活は過ぎて行き、とうとう6年生となった。
例年6年の2月には最終卒業特別試験が行われており、内容としてはランダムに5人1組に振り分けられ、魔物との実戦をおこなう。
魔法練習場の一部を使って行われる。
魔物使役師が捕えた魔物と戦い、倒すごとに段階的に少しずつ強い魔物と戦うこととなる。
教師が戦闘続行不可能と判断した時点で試験は終了となるらしい。
剣術や魔法などどのように戦うかは自由だ。
今はそれぞれの5人組が発表されているところだ。
「…そして、最後の組はアオイ・カティア、アイナ・リューグ、ダリア・イラリア、ティナ・リローフィア、ラルト・テグリムの5人だ。」
ティナ以外は結構何かしら深い関わりがあった子が多かった。
「よろしくね。アオイ。」
アイナが言う。
「俺もよろしくな。」
ラルトが言う。
「うん。よろしく。」
僕は返す。
「まあ、僕と君までいれば良い結果を残せるのは確実だろう。本当は別のチームで戦いたかったけどな。」
ダリアはそういう。
「あ、あのみなさんよろしくお願いします。」
緑髪の少女、ティナが言う。
「ああ、よろしくな。」
「よろしく。」
「よろしく。」
「まあ、よろしくな。」
みんなが返す。
このチームは長らく魔法実技でトップを維持してきた僕とライバル関係でありこちらも魔法実技トップの成績を残してきたダリア、剣術でトップの成績を修めてきたアイナがいるので良い結果が出せそうである。
それからしばらく待っていると、僕たちの番がやって来たようだ。
僕たちは会場へと入場する。
「では、始め。」
スタートの合図があると、まず最初に魔物使役師が放ったのは5体のスライムだ。
「【火炎玉】」
「【氷槍】」
まず僕とダリアが魔法を唱え2体撃破した。
「やあっ」
「おりゃっ」
そしてアイナがまとめて2体、ラルトが1体剣で斬って撃破した。
続けて放たれたのはゴブリン5体だった。
「【火炎】」
「【雷】」
「【火炎爆弾】」
今度はティナ、僕、ラルトの順で魔法を唱え、ティナ、僕の魔法で一匹づつ、ラルトの魔法で3体撃破した。
次に放たれたのはオークだ。
「【雷】」
まずラルトの魔法によって一匹撃破される。
「【破壊光】」
僕はまとめて2体撃破する。
「【火炎】」
ティナが魔法を唱えオークに命中させてダメージをあたえるとその隙にアイナがオークを両断する。
その頃ラルトはオークと剣劇を繰り広げていた。
そこへアイナが駆け付ける。
オークがラルトと相対しているところを後ろからの不意打ちで撃破した。
ここまで順調に戦うことができている。
ぜひこの調子で行きたい。