8話 迷宮探索
あれから月日が経っていき僕は初等科4年生まで進学していた。
今日もいつものように放課後にマリアンの元で魔法を教えてもらっていた。
その時マリアンからこんな提案があった。
「明日って学院は休みでしょう?実戦の練習も兼ねて迷宮探索にいってみない?」
「良いですね。迷宮には行ったことないですし、一度行ってみたいです。」
「それなら決まりだ。じゃあ明日の8時にここで集合だ。」
こうして迷宮探索に向かうことになった。
母もSランク冒険者のマリアンも共に行くことを話すと快諾してくれた。
次の日に僕はしっかり遅れることなくマリアンの屋敷に集合した。
「早速来たね。じゃあ行こうか。」
「はい。マリアン師匠。」
その後は王都テシリアとここから東方にある王国の主要都市・アルギディメントを結ぶ馬車に乗り込み、王都を抜けた街道上で途中下車してそこからは歩いて迷宮へと向かった。
「今回探索する迷宮は比較的全体像が分かっていてあまり強い魔物が発生しないけど、迷宮はなにが起こるか分からないから気を抜かないように。」
「はい。頑張ります。」
「じゃあ行こう。」
そうすると僕とマリアンは迷宮へと踏み込んだ。
まず迷宮に多く出現したのはマリアンの言う通りゴブリンやオークなどの比較的弱い魔物だった。
僕たちは魔物を倒しながらも下の階層に進んだ。
「【火炎】」
「グァァッ」
僕は初めての魔物との戦闘だったが難なく倒すことができた。
「分かっていたけどやっぱりゴブリンとかオーク位の魔物は簡単に倒せるみたいだね。」
「マリアン師匠のおかげですよ。」
「君の才能があってのことさ。」
「ありがとうございます。」
「お、最後の階段が見えてきたぞ。あの階段を下りれば最下層の15階層だ。」
話しながら歩いている内に最下層までの階段まで来ていたようだ。
階段を下って最下層を探索しているとマリアンが立ち止まる。
「どうしましたか?師匠」
「いや、ちょっとこれが気になってね。なにか仕掛けがあるんじゃないかと思って。」
「これですか?なにかよく分からない文字が書かれていますが?」
そこにはテシリア王国で一般的に使われているハーディスティア語や前世の地球で使われた言語でもない何かの文字が書かれていた。
「これは恐らく古代ハーディスティア語で古代にこのソフィア王国周辺、当時のハーディスティア帝国で使われた言語だ。ちょっと時間はかかるけど解読してみて良いかい?」
「分かりました。なにがあるか気になりますね。」
そうするとマリアンは解読に集中し始める。
そうして一時間程するとマリアンはなにかわかったのかこう話す。
「アオイ、なにが起こるか分からないから周りを警戒して。じゃあ、いくね。【黒雷】」
するとマリアンが放った魔法は壁に衝突した…にも関わらず壁は全くダメージを受けた様子は無く、さらに壁は光始める。
すると、その瞬間、迷宮の床が抜けた。
「うわっ」
「あっ」
思わず僕とマリアンは声をあげてしまった。
僕たちが落ちた穴は床が見えないほど深くまで続いており、これは非常に不味い状態かもしれない。
「アオイ、こっちだ。」
マリアンは僕に向かっててを差し出していた。
僕がマリアンの手を掴むと、マリアンは僕を抱き抱え魔法を唱える。
「【飛行】」
するとマリアンは宙に浮かび、僕を抱えたままゆっくりと降下していく。
すると床が見えてきて、そこに降り立った。
「はぁ、危なかった。今まで自分だけ浮かんだことはあるけど二人分まで浮かばせることができるかやったこと無かったから賭けだったよ。君みたいな子どもじゃなくて大人だったら落ちてたかも。」
「僕ももう来月には10歳ですよ。大人に近づいてるんじゃないですか?」
なんか子ども扱いされたようなきがしたので言った。
「まだまだ子どもじゃないか。ほらこーんなにちっちゃい。」
そう言うとマリアンは僕の頭に手を乗せる。
確かに僕は身長もまだまだ小さいので反論できない。
「まあ、でも魔法の腕は十分に一人前だ。さあ、奥に進んでみよう。迷宮がまだこの先に続いているようだ。」
「はい。」
そうして僕たちは奥に進んだ。
迷宮探索の後飛行魔法を教えてもらったのはまた別の話である。
「今までと違ってここの階層には大鬼が多く出現するようだ。これまでの魔物より強いから気をつけて。」
マリアンが言う。
それでもどうにか魔法の威力を上げることで倒すことができた。
そうして2つほど下の階層までおりると広い空間にたどり着いた。
空間の中央にはマグマが広がっていてグツグツ音を立てている。
「暑いですね。なにもないみたいですが。」
僕は言う。
「一応調べてみる。【魔力探知】っ気をつけて、マグマの下から凄い魔力が」
その時だったマグマの下から赤い巨体が現れた。
それは固い鱗に覆われた竜だった。
「【雷】」
竜が現れた瞬間にはマリアンは杖を構え魔法を放っていた。
魔法が命中すると竜は唸り声をあげていた。
ダメージを与えられているようだか致命傷には至らない。
「【破壊光】」
僕も援護をしようと魔法を放つ。
しかしその魔法は竜が飛び立つことで避けられてしまう。
巨体のわりに身のこなしは軽いようだ。
すると竜は口から轟々と燃え盛る炎を放つ。
「【防御】」
僕はどうにか攻撃を防ぐ。
「【光触手】」
マリアンが魔法を放つと幾重にも分かれた光の触手が放たれた。
「グァァァオ」
そのうち何発かが竜に命中すると竜はうめき声をあげ飛ぶ力を失い地に落ちる。
竜は最後の力を振り絞ったのか炎をこちらに向けて吐いてくる。
「【防御】」
僕は防御魔法を展開する。
しかし防御魔法にヒビが入り始め、とうとう壊れてしまう。
不味い。僕は咄嗟に回避しようと動いた。
マリアンは唖然としていた。
竜が吐いた炎がアオイに向けて放たれたのだ。
信じたくないが直撃は免れないだろう。
竜の攻撃を受けたとなればただでは済まない。
私のせい、私のせいだ。
そんなことを考えている間にも竜は体制を整える。
その時だった。
「【破壊光】」
後ろから魔法が放たれ竜に命中したのだ。
竜は倒れ起き上がる様子もない。
後ろを振り返るとそこにはアオイがいた。
「アオイ、どうやって…?」
「なんか、竜の炎に当たりそうになったのを避けようとしたら、凄い体が軽くて凄い速さで動けたんですけど…なんか全ての感覚が研ぎ澄まされている感じがして…僕にもよく分かりません。」
「なにはともあれ良かった。君は私の唯一の可愛い弟子なんだから。直撃したと思ったんだからな。心配させるなよ。」
そう言うとマリアンは僕を抱擁する。
「はい、気を付けます。師匠。」
その後は来た道を戻りまたマリアンの飛行魔法を使って穴から上の階層に戻ってからさらにまた来た道を戻り迷宮を出た。
「しかし凄く体が軽かったって何なんだろうな。普通だったら直撃してるタイミングだったぞ。」
そんな話をしながら街道からまた馬車に乗り王都へと戻った。