7話 VSテシリア王国国立学院高等魔法科
あれからも僕は学院で好成績を修めていき(剣術以外)
月日が経って2年生となっていた。
僕は今昼休みの暇な時間を使いアイナと図書室へと来ていた。
この図書室は中等科や高等科、高等魔法科、高等剣術科の生徒も利用するためかなり大規模なものだった。
僕はよくこの図書室を利用しており、1年の頃から仲良くなったアイナやラルトともたまに一緒に来ていた。
まあアイナは文章は得意で無いのかいつも簡単な童話を読んでいるかよく僕の猫耳を勝手に揉みながらだらりとしている。
アイナは今日もいつものように童話コーナーで脚立を使って本を取っているようだが…
「うわぁぁっ」
バランスを崩して脚立ごと倒れてしまった。
そしてその横にいた高等魔法科のローブを羽織った男二人組へと脚立は勢いよくぶつかった。
「うわぁ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
アイナが謝った。
「おまえ、なにしてくれてんだぁ!【火炎】」
すると片方の坊主で細身の男がいきなり魔法を放った。
それを見ていた僕は咄嗟にアイナの周りに防御魔法を展開した。
「【防御】」
その後すぐにアイナの元へ向かうと僕にも注目が向けられる。
「おい、逃げられるとでも思うなよ。」
坊主の男が言う。
「この僕、アデシア・ルーラントへの不遜、許せるものではないぞ。」
もう片方の青い長髪の男がそう言うと、すぐに魔法を放った。
「【火炎玉】」
相手が繰り出す魔法を僕は使いなれてきたマリアン師匠からもらった杖を使い防御魔法を展開して対応する。
「あの、すみません、話聞いてくれませんか。」
僕が問う。
「初等科の癖に生意気だな。【破壊光】」
どうやら話が通じそうになかったのでこちらも対抗する。
「【破壊光】」
2つの【破壊光】はぶつかり合い爆発を起こした。
爆発音を聞きつけたのか周りからは生徒の騒ぐ声が聞こえるが、爆発の煙でよく見えない。
「だいぶ魔法が使えるようだな。面白い。【雷】」
すると物凄いスピードで横すれすれを光が駆け抜けていった。
相手の視界も悪かったためどうにか直撃を免れたが当たっていたらただではすまなかっただろう。
周りへの被害も考慮していないのか放たれた魔法は図書室の本棚に直撃し破壊していた。
「さすがアデシア様。」
坊主の男はアデシアをおだてるように誉めていた。
「ボルク、お前は下がっていろ。初等科の癖に魔法の才はあるとみた。僕と一対一で勝負だ。拒否権はない。さあ行くぞ、【火炎】」
坊主の男改めボルクを下がらせると、アデシアは有無を言わさず勝負を始める。
「【防御】」
僕はアデシアが放つ魔法を防御魔法や攻撃魔法で相殺して対抗した。
その間に思い付いた作戦があるので実行に移すことにした。
「【破壊光】」
周りにできるだけ被害が及ばないように、しかし今までより威力をすこし強めに放った。
「【破壊光】」
相手も同じ魔法で対抗してきた。
2つの魔法は衝突して爆発し、煙によって視界が悪くなる。
相手はこちらが見えていないので隙が生まれていることだろう。
しかし問題はこちらも相手の位置が見えないということだ。
ここで最近マリアンに教えてもらっている魔法を使う。
使うのが難しく高度な技術が要求され、マリアンは教えるつもりはなかったようだが、役に立つと思い僕が頼んで教えてもらっていた魔法だ。
まだ完全に使えるようになったわけではないがなんとなくコツはつかめていた。
どうにかここで使うしかない。
「【魔力探知】」
僕は感覚を研ぎ澄まし、周りの魔力を探ろうとした。
前方に魔力があるのが分かるがまだぼんやりとしていて詳しくわからない。
その時だった。
前方にはっきりと魔力が発生したのがわかった。
そこめがけて僕は魔法を唱える。
「【爆音波】」
その直後に魔法が前方から飛んできたのだか僕から大きく外れていた。
きっとアデシアが放った魔法で、僕は【魔力探知】でその魔法を感じ取ったのだろう。
「ぐはっ」
どうやらしっかり魔法はアデシアに命中したようだ。
しばらくして煙が消えるとそこには気絶したアデシアがいた。
僕が使った魔法は【爆音波】で音魔法の一種である。
魔法を放った方向に爆音が放たれ、その爆音を聞いたアデシアは気絶したのだ。
相手をできるだけ傷付けず無力化する便利な魔法としてマリアンに習っていたのだ。
「くそっ」
もう一人の男、ボルクは怯えたような様子で言った。
「ごめん。アオイ私のせいで。」
アイナが言った。
「大丈夫だよ。どうにか無力化できたしね。素手の相手に向かって魔法を放つなんて。」
「ありがとう。助けてくれて。」
アイナが言った。
「ちょっとあなたたちなにが起きてるの?」
騒ぎを聞きつけてやって来たのはフェリア先生だった。
その後は僕とアイナ、ボルクとアデシアに先生による事情聴取が行われ、校長の判断によりボルクとアデシアは自宅で謹慎処分となった。
何はともあれ事態が収拾したようで良かった。
ちなみにそれからアイナは自分の剣をいつも持ち歩くようになった。
今回の事件で自分がなにもできなかったことを踏まえていつなにがあっても自分で自分を守れるようにするためらしい。
だけどできるだけ危険なことはやめてほしいところだ。