4話 初めての魔法と魔法使いマリアン
今日は学院生活二日目である。
今日は兄も一緒に学院へと向かう。
「昨日はどうだったか?」
「うん、少し緊張したけど話し相手もできたし良かったよ。」
僕は答える。
「そうか。なら良かった。困ったことがあったらいつでも言えよ。」
「うん。ありがとうお兄ちゃん。」
「ああ。」
そうやって兄と話している間にも学院に到着した。
今日の時間割は午前中は実際に校舎内を回ったりして紹介してもらい、午後から初めての授業がある。
僕はその後1年Dクラスの教室へ向かった。
「よお、おはよう。」
ラルトが元気よく挨拶をする。
「おはよう。」
僕も挨拶を返す。
すぐにその後、担任のジェイムズ先生がやってきて朝礼が始まった。
朝礼の後はジェイムズ先生が先導し学校の案内が始まった。
「まず、教室を出てすぐ、あちらに並ぶのが前から順に1年C組、B組、A組である。まずはこのフロア1階を案内しよう。まずそこの角を曲がった所が食堂だ。今日から利用する者もいるだろう。」
そう言うとジェイムズ先生は角を曲がり食堂まで案内する。
「次はこっちだ。魔法実験室に案内しよう。…」
その後もジェイムズ先生による案内は続き、魔法実験室や剣技場、職員室、図書室などに案内された。
また、初等科の棟は六階建てであり、下から順に1~6年の教室があるらしい。
一通り学院の紹介が終わり昼休みがやってきた。
「おーい、猫耳くん、一緒に食堂いかない?」
そう話しかけてきたのはアイナだった。
「猫耳くんじゃなくてアオイだよ。」
僕は言った。
「じゃあ、アオイ行こう。」
「うん。」
元々食堂に行くつもりだったので一緒に向かうことにした。
「お、食堂にいくのか。俺も一緒にいくぜ。」
ラルトが話しかけてきた。
「じゃあ三人で食堂いこう。」
こうしてラルト、アイナと共に昼食をとることにした。
「僕はハンバーグ定食をたのもうかな。」
「じゃあ、俺も」
「なら私も」
三人ともハンバーグ定食を頼むと席についた。
しかし多くの貴族が通うこともあってさすがの豪華さである。
届いた料理を食べながらも、三人の話題は次の授業のことになった。
「ねぇねぇ次ってなんの授業なんだっけ?」
アイナが尋ねる。
「魔法実技だったよ。魔法使うの楽しみ。」
僕は答える。
「そういやその授業なんか特別講師として冒険者の魔法使いが来るらしいぞ。」
ラルトは補足する。
「えっ、どんな冒険者?」
僕は尋ねる。
「なんかマリアンっていう金髪のエルフらしいぞ。あの【龍殺しの魔術師】のモデルになったって噂もある。」
「そうなんだ!やっぱ強いのかな?」
「そりゃあSランらしいしな。」
ちなみに【龍殺しの魔術師】は簡単に言うと人々を苦しめていた竜を殺し人々を救ったエルフの物語である。
やっぱりエルフって寿命が長いのだろうか。
だいぶ昔の物語のはずだがエルフならモデルである可能性もあり得るのかもしれない。
「その【龍殺しの魔術師】はよく分からないけどマリアンなら聞いたことある。お父さんが昔一緒に冒険したことあるって。」
アイナが言った。
「さすが、アイナの父さんはずげーや。」
ラルトが言う。
そう話している内に昼休みも終わりが近づき、僕たちは昼食を完食すると授業が行われる屋外の魔法練習場へと向かった。
魔法練習場に向かうと魔法実技担当でもあるジェイムズ先生がいて説明を始めた。
「今日は魔法実技、そして全教科でも初めての授業であることだろう。そんな君たちに頑張ってもらいたいこともあって、今日は特別講師を呼んでいる。こちらが特別講師のマリアン君だ。」
そこにはラルトの言ったように金髪のエルフの女性がいた。
見た感じは10代後半くらいに見えるが、エルフなので本当はどうかはわからない。
ジェイムズ先生はマリアンの紹介を始める。
「マリアン君は王国でも9人しかいないSランクの冒険者の魔法使いで世界でも優秀な魔法研究者でもある。今日はマリアン君に学びながら簡単な魔法の【火炎玉】をつかってあそこに並べられている的に当ててもらう。」
その後はそれぞれ学院の杖を借りて的の前に並び、的を狙って【火炎玉】を打つことになった。
まず一発打ってみる。
「【火炎玉】」
しかし魔法は発動したものの的から狙いがずれてしまう。
「おー外してるなぁー。こんなの魔法使いの名門イラリア家の俺、ダリアからすれば簡単だけどなあ。」
横から僕に向けて声が聞こえたのでみてみる。
そこには銀髪のいかにもプライドが高そうな少年がいた。
ダリアも魔法を発射した。
「【火炎玉】」
しかし狙いを外してしまう。
「くそっ、いまのは偶然だ。」
「二人とも魔法は出せてるからもっと肩の力を抜いて魔法の軌道を意識して。」
とマリアンがやってきてアドバイスをくれた。
もう一度魔法を使ってみる。
「【火炎玉】」
すると今度は上手く的に当てることができた。
「俺だって…」
ダリアも魔法を唱える。
「【火炎玉】」
しかし狙いは外れてしまった。
「くそ、もう一度【火炎玉】」
しかしまた外れた。
「くそぉ【火炎爆弾】」
自棄になったのかダリアは急に別の魔法を繰り出した。
すると発射された魔法は爆発し回りの多くの的が破壊され地面が抉れていた。
「ほら、俺にかかれば的なんて何枚だって破壊できるぜ。」
爆発を聞きつけたのか、ジェイムズ先生が駆けつけてきた。
「これは何事だね。うむ、【火炎爆弾】か、私が指示した魔法ではないのだが誰が打ったのかね。」
「そこの銀髪の少年が打っていたけど。」
近くで見ていたマリアンが言った。
「ダリア君か、ただでさえ危険の伴う魔法の練習で指示していない大きな魔法を打つとは何事だ。しっかり自分の行動を顧みて反省することだ。放課後職員室まで来るように。」
ダリアはジェイムズ先生の痩身にモジャモジャの白髪にメガネという奇抜な見た目も相まってか気圧されている様子だった。
「は、はい…。」
ダリアは答えた。
その後は破壊されてしまった場所を変えて、ダリアは大人しく【火炎玉】の練習をしていた。
僕も練習して今では毎回的に当てることができるようになっていた。
生徒の多くもかなり的に当てられるようになってきたようである。
マリアンもそんな生徒の様子を見守っている。
というか僕を見守っている。
なぜかずっと見られている気がするのだ。
なぜだろう。
それから間もなくして授業は終わりを迎えた。
「ではこれで魔法実技の授業は終わりだ。この後は終礼だから教室に戻るように。」
ジェイムズ先生がそう言うと一旦解散となって、教室に戻ることになった。
教室へ向かって歩みを進めると、
「あ、君、これ」
振り返るとそこにはマリアンがいて羊皮紙を差し出してした。
「なんですか?これ」
「とにかく受け取っておいて。」
「は、はい。」
とりあえずその折り畳まれた羊皮紙を受け取ることにした。
「おい、教室戻ろうぜアオイ」
ラルトが横から話しかけてきた。
「戻ろー戻ろー」
アイナもやってきた。
「そいやさっきマリアンさんとなに話してたの」
ラルトに尋ねられた。
「なんか紙をもらって。」
「紙?まあいいや。戻ろうぜ。」
そして、そのまま三人で教室へと戻った。