33話 煙
「【火炎玉】」
最初に動いたのは相手だった。
「【防御】」
僕は防御魔法を展開しそれを防ぐ。
「【火炎玉】【火炎玉】」
矢継ぎ早に攻撃は飛んでくる。
「【雷】」
僕が防御魔法で魔法を防いでいる間、ラクトは魔法を唱える。
「ぐわっ」
「ああっ」
その魔法はいままさに襲いかからんとしていた剣士二人に命中し気絶させる。
さて、多勢に無勢ではあるがあの時のあの作戦が活かせるだろう。
あの時よりももっと確実に。
とりあえず魔導書で学んだ魔法を展開して、
「【煙】」
すると部屋は灰色の煙で包まれた。
相手には僕の位置は分からないかもしれないが僕にはなぜか常時発動している【魔力探知】があるのだ。
あとラクトの魔力は他の冒険者よりも一段と大きいので間違えて攻撃する心配もない。
「なんだっ、」
「目眩ましか!?」
「これじゃ見えねぇ。」
冒険者は突然の煙に驚いているようだ。
「落ち着け、見えないのは相手も同じなはずだ。」
「魔法がどんだけあると思うんだ。魔力を感知する魔法や追尾魔法もある。なにか方策があってやってんだろ。」
当たりである。
さて、【魔力探知】で魔力を感知した方へ魔法を放つ。
「【爆音波】」
「くっ。」
それから同じ方法で何人も倒していった。
「くそ、やられてやがるな。【魔力探知】で探られてるか?」
「お前、うちのギルマスはすげぇ魔法使いだから使えるかもしれねぇが相当優秀な一部の魔法使いしか使えないもんなんだぜ。」
「そうなのか。」
「追尾魔法といったところだろう。とにかくその場にとどまるのは危険だ。」
作戦会議をしているようだが、【魔力探知】が正解だ。
「【爆音波】」
さらに一人撃破!
そうしてまたどんどん倒していき、とうとう残る冒険者は4分の1程度になった。
しかしもうそろそろ魔法の効果が切れてきたようで、視界が晴れてきた。
「おっ猫耳、お前が倒していたのか!?てっきりSランの奴かと。」
「レオ、【爆音波】」
僕は煙が充満している間に移動させていたレオンに指示をだす。
「ニャー!」
するとレオンは勢い良く魔法を放つ。
レオンがいるのは冒険者達の後ろだ。
不意を突かれた冒険者達は抵抗できずその場に倒れた。
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俺、ヴァルトはギルド【紅】の剣士ガンテと対峙していた。
俺は何度と剣をガンテへ打ち込むがガンテもそれに剣で対応する。
これはかなりの実力者だろう。
Aランクトップレベルの実力ではないだろうか。
その時だった。
部屋の辺りが煙に包まれた。
呪文も聞こえたため魔法だろう。
これではお互いに姿が見えない。
しかし見えないのならば音を頼りに攻撃すればいい。
俺は相手の足音のする方へ剣を振り下ろす。
しかし相手も風切り音を感じ取ったのか剣で対応する。
その後相手の攻撃がやってくるもギリギリのところでよける。
王国トップレベルであろう剣士同士の戦いなだけあって視界が悪いことも忘れそうなものだ。
どちらも動体視力が並大抵ではない。
そして長い剣舞の末剣と剣の力の鬩ぎ合いとなる。
「うおぉぉっ…!」
「くたばれぇっ…!」
その末勝利したのはヴァルトであった。
ガンテは力負け、その剣は投げ出される。
ちょうどその時視界が開けてきた。
魔法の効果が切れたのだろう。
ヴァルトは剣の切先をガンテへ向ける。
「くそ、参ったぜ。」
「そうか。それはよかった。アオイ、ラクト、そっちはどうだ。」
「うまく制圧できましたよ!」
「アオイさんさすがですね。僕が入る隙もなかったです。」
ラクトが言う。
「おお、上手く戦えたようだな。それで…【紅】ギルドマスター、アカリはどこにいるのか?」
ヴァルトはガンテに尋ねる。
「さあな。」
「早く言え。」
「ここにいないのは確かだがどこかはしらねぇよ。」
「ほんとか?」
「おおっ、ほんとだよ。」
剣先を向けられ怯みながらガンテは言う。
その時後ろから歩いてくる足音がした。
僕は警戒し後ろを振り向いた。
かなりの魔力量の持ち主のようだ。
「すでに事は起こっていたか。」
そう言ったのは冒険者連盟長、カトラだった。