3話 学院生活の始まり
あの宴会から数ヶ月がたった。
今は家族でテーブルを囲み夕食を食べている。
「今回の商談は上手くいったよ。そこの領主が魔鉱石を多く買い取ってくれることになってね。遠くまで出向いた甲斐があったよ。」
父は最近までこの屋敷があるソフィア王国の王都テシリアから隣国のベルトリア王国まで重要な商談があると出掛けていたのだ。
「それは良かったわ。そういえばそろそろあのことをアオイにも伝えた方がいいんじゃない?」
と母が言う。
「そうだね。伝えてやってくれ。」
「わかったわ。アオイの将来の話なんだけどアルも通ってるテシリア王国国立学院に通うのはどうかしら。アルも一緒だから安心だしここからも近くて魔法や剣術も学べるのよ。通うのは来年の4月からになるかしら。」
魔法…ぜひ使ってみたい。
「魔法が学べるの?」
「ええ、優秀な講師がいらっしゃるのよね。アル?」
「ん、ああ」
兄は頷く
「アオイは魔法に興味があるのか。テシリア王国国立学院は毎年優秀な魔法使いを輩出しているから魔法を学ぶにはおすすめだよ。」
父は言う。
「うん。行ってみたい。」
こうして僕はテシリア王国国立学院に通うこととなった。
兄は現在9歳であり、6歳の頃から学院に通っている。
僕は今年の8月に6歳になり来年の4月に入学なので同じく6歳から通うことになる。
そうなると僕は初めは初等科の1年から通い始めることになる。
ちなみに兄は現在初等科3年であり、僕が通い始める頃には初等科4年である。
それから月日が流れとうとう4月になった。
今日はテシリア王国国立学院の入学式がある。
入学式には母と父も出席するので一緒に学院へと向かう。
兄は今日は休みのようなので商会の者に世話を任せ留守番させるようだ。
「おーい、頑張れよー」
兄が見送りに来てくれたようだ。
「うん。行ってくるね!」
それから学院への道を歩いて行くとレンガ造りの大きな建物が見えた。
「アオイ、あの建物が学院よ。」
大きな建物は学院のようだった。
新入生らしき子どもたちやその親がいる様子も見える。
そのあとは両親に連れられ入学式会場へと向かった。
周りには身なりの良い人々が多くいる。
この学院はかなり金持ちな学校であり学費も高く、通っている者の多くは貴族や大商人の子のようだ。
しばらくすると50代くらいの男性が前の壇上に上がった。
この学校の校長のようで、挨拶をはじめる。
この世界の校長の話も例に漏れず長かった。
「まずは皆様ご入学おめでとうございます。さて、この学院は政治や魔法や、剣術など様々な部門で優秀な人材を輩出してきました。皆様もこの学院で学んでいくことで…(以外略)」
入学式が終わると父と母とは別れ、それぞれのクラスに案内された。
僕は1年Dクラスだった。
するとそこで茶髪の男の子が話しかけてきた。
「ラルト・テグリムだ。テグリム男爵家の長男だ。よろしく。君は?」
「僕はアオイ・カティアです。よろしくお願いします。」
「カティアってあのカティアか?」
「ああ、えっとカティア商会のことかな」
「やっぱりか、すげーな。すげー有名じゃん。」
「う、うん」
貴族の人と話すのは初めてだし、元々あまり話すのも得意じゃないこともあってか少し緊張していた。
「あっ猫耳の子!」
僕は後ろから話しかけられた。
猫耳の子って僕のことを知っているのだろうか。
後ろを振り返ってみると思い出した。
確かあの宴会の時の元冒険者の娘のアイナだ。
「久しぶりじゃん。まさかここで会うなんて。」
アイナは言った。
「すごい偶然だね。」
「アオイと知り合いなのか?」
ラルトが聞く。
「うん。僕のお父さんの商会の馬車を元Sランク冒険者のアイナのお父さんが助けてくれて、それがきっかけで一度会ったことがあるんだ。」
僕が答える。
「へぇー君のお父さん元Sラン冒険者なのか。なんて言うんだ?」
ラルトがアイナに尋ねる。
「コリアっていってね。すごい強いんだよ。」
アイナは答える。
「ああ、コリアってコリア・リューグか。あの四大魔獣を倒したっていう。」
「そうだよ。すごい強くて、よく剣術教えてもらうときの迫力もすごいんだから。」
アイナは答える。
「へぇー、剣術って君も上手いの?」
ラルトが聞く。
「うん。まぁある程度はね。」
アイナは自慢気に答える。
「そうだ、また猫耳さわらせてよ。アオイ」
アイナが言う
「うん、良いけど。」
僕は答える。
「そういや猫耳族って珍しいよなぁ。」
ラルトが言う。
「お父さんが人間族でお母さんが猫耳族だから僕は人間族と猫耳族のハーフなんだ。」
「へぇー」
そう話している間にもアイナは僕の耳を撫でている。
前も思ったけどアイナは撫で方が上手いなあ。
二人と話せて少しづつ緊張もほぐれていった気がする。
その後は教師がやって来て学校についての説明が始まった。
教科によって教える教師は異なり今は魔法実技の担当らしいジェイムズ・アディアが説明を行っていた。
このクラスの担当は彼らしい。
「…そして、年に三回テストがあって、一教科100点満点です。良い点がとれるように努力することっと。なにかこれまでの説明で質問はあるかね?」
特に誰も質問がある者はいないようだ。
「では、この後は下校だ。これからの学校生活を頑張ってくれたまえ。」
こうして学院生活の1日目は終わり僕は帰路についた。