1話 転生
僕、神楽凪は中学校からの帰路を歩んでいた。
辺りはすっかり暗くなっている。
いつもはこのような時間に帰ることはないのだが、最近は文化祭も近いため準備で帰るのが遅くなることも多かった。
ちなみに一緒に準備をしていた綾香もいる。
綾香はすぐ隣に住んでいて、小さいころから交流のある幼なじみだ。
ちょうどいつも通る交差点に差し掛かったあたりのことだった。
とても眩い光が放たれたのだ。
あたりが白く見えるほどの。
「な、なに。」
綾香が言った。
「わ、わからない。」
綾香はとても驚いた様子だった。
「ちょっと様子を見てくる。」
「あ、ちょっと。」
僕は発光した方向へ様子を見てくることにして駆け出した。
今思うと無闇に近づくんじゃなかった。
発光した方向へ続く道路を行くと突き当たりにあるのは裏山だ。
位置的に発光したのはこのあたりだろう。
裏山の崖には少し小さい洞窟のようなものがあった。
中からはなにやら物音がするのでなにかあるのではないかと恐る恐る入ってみた。
中に入ると居たのは男女三人組だった。
一人は防具を装着し剣を持った中肉中背の男。
一人は筋肉質で大柄で鎧を身に纒い、盾と斧を持った男。
一人はいかにも魔法使いのようなローブを着て杖を持った女。
まさにみんなファンタジーにでも出てきそうな格好をしている。
コスプレかなんかだろうか。
その時近くの石を踏んでしまい音を出してしまった。
相手はこちらに気づいたようだ。
三人は顔をこちらに向けた。
「すみません。すこし物音がして気になったもので。」
「くそ、気づかれちまったか。そりゃそうか。思ったより大胆だったしなぁ。」
大柄な男が言う。
「あの、あなたたちは…」
「ごめんだが話すことは何もねえ。依頼主にも秘密裏にって言われてるんでな。さっさとこのガキ始末してこの場から去るぞ。」
するとすぐにその男は斧を振り下ろす。
全く状況が理解できないがいまは逃げるしかない。
だが今度はすぐに女が杖から光線のようなものを射出する。
これは魔法なのだろうか。ファンタジーの世界にでも来てしまったのだろうか。
光線はいくつにも別れ凄いスピードで襲い来る。
普通の人間である僕に逃げられるわけもなく、すぐに光線に当たってしまった。
そのまま僕は倒れてしまい、視界もぼやけてくる。こんなよく分からない理由で死ぬのか…。
僕、神楽凪の人生はこれで終わった。
私、夢咲綾香は凪を探していた。
凪は光の方へ駆け出してしまった。
探している途中で裏山の洞窟に入った。
そして見てしまった。
絶望の光景を。
そこには武装した三人組と倒れた凪がいたのだ。
戦慄した。
頭が上手く回らないほどに。
僕は死んだ。
このまま意識もなくなっていくのだろう…そう思った。だがその後急に視界が開けた。
僕は天井を見上げていた。
そして横から現れたのは茶髪の男性、そしてなんと金髪の猫耳が生えた女性だったのだ。
どういうことだ、ここはどこなのかと考えていると、猫耳の女性に抱き抱えられる。
そこで気づいた。
ちっちゃい。
そう、僕がとてもちっちゃい赤ちゃんだったのだ。
つまり僕は転生していたのだった。