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鍵の持ち主  作者: となり
日常編
4/52

東京の闇

ハーネがウチに入り浸って一週間が経った。


分かったことが1つある。彼女は食いしん坊である。

貯めておいた1ヶ月分の食糧が底をついてしまった。


そんなことはお構いなしに彼女はバクバクとインスタントカレーを食べている。


「この袋を温めるだけでなんでこんな美味しい料理が…..もしかして魔法ですか!?」


俺は顔を青くしながら首をブンブン横に振った。


「師匠は食べないんですか?朝ごはん」


「俺は食べないよーなんかそういう習慣になっちゃって」


「食べないと健康に良くないですよー」


と言いながらカレーをがっついている彼女だが、朝からカレー食べるのも健康的には……まあいっか。


 


朝ごはんの食べると彼女との真剣勝負が待っている。


 剣術訓練のようなものではない。



 オセロである。


 

 師匠としての威厳はこういうところで見せておく。

 彼女とは約20戦ほど戦ったが一敗もしていない。

 

 「1、2、3、4、5、6.…..負けたぁーー」


悔しそうに机を叩く彼女を見るのは非常に気分がいい。俺の連勝記録は守られたのだ。




そんなことはさておき。ここ1週間、依頼が来ていない。でも依頼が来た時用に色々と準備するものもいるし、なにしろ食糧も調達しなければならない。


なので1度東京に戻ることにした。


ハーネは置いていかれるのが嫌らしく、どこに行こうとしても付いていきたいと必死にお願いしてくる。

その根性に負けて連れて行っていってしまうが、今回ばかりはそうはいかない。そうなれば、シニさんにも使った置き手紙作戦を使おう。



——




翌日。早朝。ハーネさんの部屋のドアに耳を当てる。



スーースーー、、、、



よし、寝てる。


「食糧調達に出向きます。夕方までには帰ります。」


簡潔に置き手紙を書いて静かに家を出た。



日本に繋がるドアは湖のほとりのすぐ側にある地下洞窟の先にある。一歩間違えたら誰かが見つけてしまいそうだ。まあ仮に見つかったとしても鍵を持ってないからどうにも出来ないだろーけど。


鍵穴に差し込み、回す。




ガチャリ。




聞き慣れた音を聞いておもむろに腕を引く。

深呼吸して一歩踏み出す。

視界は眩しい光に包まれる。



気づけば、、、日本である!

と言っても地下室なのでまだ実感は湧かない。

さっさと梯子を登って……げ、蜘蛛の巣張ってるじゃん。

手をぶん回して蜘蛛の巣を潰しながら上に登る。


見慣れた小屋だ。


外は暗かった。



あっちの世界とこっちの世界では時間軸がズレているようだ。いや、ここがブラジルならズレてないことになるのか?まあいいや、そんなことは。



山道を歩いていると、1つの不安が生まれた。



電車動いてるのか???動いてないと…まずい。



顔を青くしながら早足で山道を進みながら、駅へと向かった。



———



満身創痍で駅にたどり着くと、置いてある時刻表を確認する。



電車は残っていた。 よっしゃ!!!



だが乗り換えを続けていけば東京までの電車は終電になる。乗り換えミスしたら終わりだな、気を抜かず行こう!フラグじゃないからね!






………駅です、お降りのお客様はお忘れ物に………





目の前が明るくなった。


ハッ、ちょっと寝ちゃってた。ハーネが起きるより先に起きるには睡眠時間を削るしか無かったから仕方な、、、


ん?


今まで見た事のない駅だ。


「もしかして、、、、」

リリは我に返って電車に貼られている路線図を確認。



寝過ごした。



時間的にも終電には乗れないだろう。絶望である。



とりあえず見たことの無い駅で降りてベンチに座りながらこれからどうするか考える。


「フラグ回収しちゃったぁ、、、」


本当にこんなことになるとは。とにかく早く策を考えなければ。



数分悩んだ末、リリが下した結論はこうだ。




「東京方面、乗せてください!」



駅にあった白いダンボールに駅員さんから借りた油性ペンでより大きく、より見やすく書く。


そう、ヒッチハイクである。


見たことの無い駅といったものの、意外にも大きく、タクシーロータリーもついている。人も結構いるし、ここは人の力を借りよう。


金はあるが、タクシーで東京に向かって何円かかるかも分からないし、仕方あるまい。


恥を捨ててダンボールをでかでかと掲げる。



——10分経過。どの車も止まってくれない。寒い。




——30分経過。そろそろ絶望してくる。腕も限界が近い。



——1時間経過。精神面も腕も限界を迎えて、その場に座り込んだ。



「もう無理かもなぁ、、、」

思わず口から絶望の声が漏れてしまう。


そんな時。後ろから声が聞こえる。



「すいませーーん、良かったらボク、乗っていく??」



後ろを振り向くと釣り用品を担いだおじさんが話しかけてくれた。


救世主だ。


「ありがとうございます!」

リリは半泣きになりながら車に乗らせてもらった。




———





「いやーちょうど東京まで帰ろうと思ったらこんな子供がヒッチハイクしてるなんて~」


おじさんはハハハと笑いながら話しかけてくれた。


「本当に助かりました、ありがとうございます!」



「礼なんていいよそんな〜~ボク、名前なんて言うの?」



「水月リリです」


「いい名前だね、俺は荒井 鉄、よろしくね~」

彼はニコニコしながら教えてくれた。友達多そうだな。


「もしかして、ハーフの子?」


あぁ、目が赤色だからかな?そんなところです、と曖昧な返事を返しておく。


「ところでなんであんなところでヒッチハイクしてたの?」


「実は東京駅で家族と待ち合わせしていたのですが、寝過ごしてしまいまして」


「なるほど〜災難だったね、じゃあ東京駅の待ち合わせ場所まで送ってあげる!!」


「本当ですか、ありがとうございます!」


なんていい人なんだ!日本最高!日本最高!



———



それから色々な話をした。俺が兵庫でしていた事から鉄さんの釣りの成果の話まで。


俺はある試験を受けるために兵庫県まで行った、と嘘を伝えた。見た目はすごく賢そうだし、それっぽいかなと思って。予想通り鉄さんは褒め称えてくれた。


数時間が経過した。俺は車の揺れでいい感じに眠くなっていて、鉄さんも気を使ってくれたのか話しかけて来なくなった。




目を開けると。相当な夜なのになんて車の数だ。気づけば頼んでいた目的地に着くことができた。



「鉄さん、本当にありがとうございました!」

感謝を込めて、丁寧にお辞儀をした。


「いいよいいよ~話し相手になってくれてありがとね!あ、それと…...」


鉄さんは胸ポケットから名刺を取りだした。


「俺、ここの責任者だから何か困ったことがあれば連絡してね!いつでも対応するから~」


にこやかな笑顔で言った後、すぐに鉄さんは車に乗り込んで帰ってしまった。



どれどれ、、、、名刺を確認した。



(荒井刃物商店)



包丁とか売っているのか。依頼次第で利用することになるかもな。呑気にそんな事を考えているリリは東京の拠点に向かって歩き始めた。




[荒井 鉄 視点]


リリと別れて数十分後。



プルルルルル………ピッ



「もしかしたら、見つけたかもしんないっす。例のやつをね、、、」


なんてラッキーなんだ。やっぱり今日の俺はついてるなぁ。



大量に釣れた魚を見ながらそうボヤいた。
























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