第87話 魔王戦③―絶対に守りたい―
「魔王、行くぞっ!」
ぼろぼろのリバーが魔王に攻撃を仕掛ける。 リバーは目で追えない速度で魔王に攻撃をするが、、、全て防がれてしまう。 魔王は全て完璧に躱した後、リバーに蹴りを入れる。 リバーは勢いよく吹き飛ぶが宙で回転し、四つん這いになるようにして着地する。
吹き飛ばされてるのに回転するなんて、そんな曲芸まがいな事よくできるな。
「けほっ」
リバーは魔王に蹴られたせいか、咳と共に血がでる。
「リバー、一人で戦わないで! みんなで協力して戦うよっ!」
「うん……」
魔王との差は歴然。 このままじゃ、みんな死ぬ。
焦る精神を心の奥底に沈めて、冷静に周りを見る。
魔王は、相変わらずイケメン。 性格はクズ。 ……そういえば一歩も動いてない。
何かが引っ掛かるので魔王をよく見てみる。 魔王のいる地面になぜか亀裂が入っている。 私たちの攻撃で亀裂が入るはずがない。 だってこの床、鋼鉄のように硬いもん。
どういうこと? 魔王、何か企んでいるな。
視覚だけじゃ頼りないので、耳を澄ましてみる。
――ズズズ
変な音が床の中から聞こえる。 音はうさぎ獣人の私以外聞こえないくらい本当に小さい。 その音はゆっくりリバーへと向かっている。
魔王のスキルから考えられるのは……。 この触手攻撃スキルしか考えられない。
まさか、それを床に隠しながら不意打ちでリバーを襲うつもり⁉
怪我を負っているリバーは不意打ちの攻撃を避けられないだろう。 まずいっ! 早く伝えなければ!
「リバー! 下っ!」
言葉足らずだけど、今は一刻を争う事態だ。 リバーが地面を警戒してくれればきっと避けてくれると信じるしかない。
――ドガァァン
思った通り、リバーの真下触手が出てくる。 リバーは少し掠ったが、バックステップで華麗に避ける。
避けれて本当に良かった。
「パープさん、教えてくれてありが――」
――ドサ
「「――え?」」
「はーはっは! 避けていい気になるなよ、この触手には麻痺毒が付いている。 掠っただけで、ピクリとも動けなくなるのだ!」
盲点! そんなに分からないよ!
「こいつ、厄介だからもう死んでもらおう。 『――暗黒槍――』!」
魔王の手から光さえ吸収するような漆黒の槍がリバーに向かって打ち出される。 聞いたことのない魔法だから、絶対威力はヤバいはず。 リバーは今、麻痺毒のせいで動けない。 直撃したら絶対に死ぬ。
創造神様の言っていたリバーが死ぬ場面はきっとここだ。
なんとしてでも魔王の攻撃を防がなくてはいけない。
どうすればリバーを救える? どうすれば、どうすれば、どうすればっ!!
……あ、そうか! 私には身代わりの腕輪がある。 リバーの代わりに私が死ねばいいんだ! なんでこんな簡単な事を思いつかなかったんだろう?
でも、リバーとは距離がある。 絶対に間に合わないっ!
……否、間に合わせるんだ!
弓を引き絞るように足に力を貯める。 どうせ一度死ぬんだ。 友達を守れるなら私の体がどうなっても構わない。
人間は誰しも無意識のうちに力をセーブする。 己の肉体を傷つけないように。 逆を言えば、セーブしなければ肉体を犠牲に、凄まじい力を引き出すことが出来る。
だから私は、自分の肉体を守るためのセーブを解く。
そしてためた力を解放するように、全力の身体強化を使って駆け出す。 筋肉は傷付き、毛細血管からは血が吹き出す。
痛い、辛い、疲れた……。 これから死というもっと痛い目に合う。 でも、友達が死ぬより断然いい! どうせ身代わりの腕輪で生き返られるんだから、恐れるな、怯えるな!
絶対に守る、救うっ! リバーが私より先に死ぬなんて絶対にダメ! ウィンに顔向けできない!
私は『暗黒槍』を追い越し、リバーをの目の前に庇うようにして立つ。
「パ……プさん、逃げ……て」
麻痺が少し解けたようで、私に“逃げて”と言う。 ごめん、それだけは無理なの。
別に死ぬわけじゃない! だから……そんな顔しないで?
「大丈夫だよ、絶対に守るから!」
――ザシュッ
「パプたんッ⁉」
パプたーーー〜〜んっ!!
リバーの身代わりになってくれて、ありがとーう!
責任もってハッピーエンドにするからっ!
だから、本当にごめんよっ!




