第86話 魔王戦②―絶望―
魔王の殺気と私たちの殺気がぶつかり合い、肌がビリビリする。
魔王、いきなり強くなりすぎでしょ……。 ウィンやリバーもそれを理解しているからこそ、最初の一手を躊躇って動けずにいる。
私が最初に動かなきゃ。 身代わりの腕輪を持っている私が動かなきゃなのに、魔王の殺気で動けない。
私が怖気付いてどうするの⁉ 友達を救う。 友達が住むこの世界を救う! そのためには私が動かなきゃいけない! 震えて動かない足を拳で叩き、無理やり動かす。
「たぁぁぁぁああ!」
怯えを誤魔化すように吠え、魔王へと駆け出す。 出し惜しみはしない。 というかしたら死ぬ。 だからすべての魔力を手から鉤爪へ流し、身体強化をする。 その鉤爪を魔王の顔面へと振り下ろす。
――パシィ
私の攻撃はいとも簡単に魔王の手で防がれた。 即座に拳を引っ込め、魔王の腹に蹴りを入れて飛び跳ねるようにして離れる。
……追撃してこなかった。 魔王め、手加減しているな。 でも、私には好都合。 その油断は己を滅ぼすよ。
魔王が油断しているうちになんとしてでも仕留めなければいけない。
「みんなで総攻撃するよ!」
「「うん!」」
今度は私が囮となって魔王に牽制で攻撃する。
ウィンが氷魔法で攻撃し、一番力の強いリバーが魔王に攻撃していく。
だけど……
――パシィ
またしても魔王が手でリバーの攻撃を防ぐ。 リバーはすぐに拳を引っ込めようとしたが、魔王はリバーより早く行動した。
「お前、強いな。 お前から潰した方が良さそうだな」
魔王はリバーの拳を右手で捕まえ、凄まじい魔力のこもった左手でリバーの腹を殴打する。 リバーは勢いよく吹き飛び、壁に激突した。
「「リバーッ⁉」」
「う……」
気を失ってしまったみたい。 早く回復しに行きたいけど、魔王はそんなこと許してくれない。
私やウィンに魔王を倒す決め手はない。 一応、ウィンには『終末の吹雪』があるけど、こんな室内で放つのは自殺行為。 肝心のリバーは怪我を負って気絶。
どうすればいいのっ‼
「ふぁーはっはっは! もう終わりか? もっとぼきゅを楽しませてくれよ!」
「は? 私たちはお前の玩具じゃない。 リバーを傷つけた罪、その身をもって思い知れ」
ウィン、キレてる。 どうしよ……魔王を刺激したら余計勝機が見えなくなる。 ここはどうか、抑えて欲しい。 私だって友達を傷つけられて憎いけど、今は堪えないとリバーが死んじゃう。
「ぼきゅに歯向かうとは……よく見たらお前、可愛いね」
「はぁ?」
「えっ⁉⁉」
何言ってんのコイツ。 敵にいきなり告白? 何コイツ、バカなの? 敵に告白してもなんのメリットがある?
たしかに、ウィンはバカなのを除けばすごく可愛い少女ではある。 けど、敵に告白とか、いくら何でもおかしい。
「どうだ? もしぼきゅと結婚するなら助けてやる」
「は? そんなわけないでしょ。 キモイ、しゃべりかけんな」
「~~! そういう所も可愛いっ♡」
……何この会話は。 クレイジーすぎる、この会話。
「しょうがない、そんなに嫌なら無理やり是と言わせる。君の目の前で仲間を痛めつけて殺せばぼきゅの物になってくれるかな?」
魔王の目は本気だ。 いつでもお前らを殺せるぞという警告。
「――は?」
ウィンから冷たく鋭い刃のような殺気がドロリと溢れ出る。 これは相当怒ってるね。
ウィンは今にも魔王に殴りかかりそうだ。 でも、その結果は目に見えている。 なんとしてでも止めないと!
「僕は、そう簡単にやられる気はないよ」
後ろを見ると、額から血を流しているリバーが立っていた。 良かった、起きたんだ!
でも、状況は変わっていない。 リバーは満身創痍だし、ウィンはキレてて正常な判断ができない。
「魔王の思い通りにはさせない。 ウィンは僕が守るんだ!」
「ほぉ」
リバーと魔王が殺気をぶつけ合う。 私に向けられた殺気ではないのに、足がガクガクと震える。 凄い……リバーの殺気は魔王に負けていない。
でも、、、殺気で勝てても力では負ける。
このまま戦ってもリバーは死ぬ。 もう、絶望だと本能が教えてくる。
どうすれば、どうすればリバーを、ウィンを守れるの……?
どうすれば勝てるか……それは、、、
パープ、お前が1番知ってるよ……!(カッコつけてる)




