第70話 魔王、威厳ない!
「私は過去、ウィンリー様に狼から守っていただいた最弱精霊です」
ウィンの姿をした雪の女王はピクリと動き、ゆっくり顔を上げる。
「お、おぬしも転生……したのか?」
「はい」
て、ててて、転生ぃ⁉
あの、私も転生した者ですが、言っていい雰囲気ではないね?
それに、私と違う意味の転生っぽいし。
私は別世界からの転生。 シーちゃんは同じ世界で転生。って感じがする。
なので今は黙って二人の会話に耳を傾ける。
「あの、あのシーか……?」
「はい。 あの時は、守れなくて……私の父が裏切って申し訳ございませんでした……」
シーちゃんは声を震わせながら謝る。
瞳からは涙が光り輝く宝石となって零れ落ちた。
ん? どゆこと?
現世で言うアクアマリンのような綺麗で淡い青色の宝石。
なんで涙が宝石に……?
はぁ、もう思考停止‼
「ウィンリー様、私たちを裏切った者共には復讐いたしました。 今もこれからも永遠の苦しみを味わっています」
「そうだったのか……! おぬしは我のためにいままでっ!」
なんか感動してるようだけど、言ってることやばいよ?
復讐とか地獄とかさ。
あと、私がいないみたいに振る舞うの、やめていただけませんか?
「我は、一人じゃなかったんだな」
雪の女王はそう言うと、目を閉じて倒れ込んだ。
シーちゃんがなんとかキャッチして抱きかかえる。
いや、なんだったんだろうね……
「シーちゃん、ウィンはどうなったの?」
「この肉体に魂は一つしか入っていない。 つまり、ウィンはウィンリー様でウィンリー様はウィンってこと」
「?」
今の説明で分かった人ー? いないわ‼ 理解出来たら天才!
「ウィンはきっと、二重人格なんだと思う」
二重人格? それって、二つの全く違う人格が同一人物の中に交代で現れるっていう奴?
「前世でウィンリー様は強いショックを受けた。 そのせいでウィンという二重人格が生まれたんじゃないかな?」
そういうことか!
ウィンリーがその強いショックに耐えるためにウィンは二重人格として生まれたと……
でも、今シーちゃんという安らぎを得たのなら、ウィンは用無しってこと……?
「ウィンは消えちゃうの?」
「多分、まだ猶予はある。 策もあるからまずはここから脱出しましょう」
よかった、ウィンとまた会えるんだね!
よし! そうと決まれば脱出だ!
「た、大変だっ! リバーが急に倒れて……酷い熱がでてるっ!」
「えっ⁉」
もしかして、ウィンリーが眠ったからリバーも眠った?
なんかウィンリーに操られている感あったもんね……
急いで駆け寄るとリバーははぁはぁと荒い呼吸をしていた。
それに、顔が真っ赤。
見るからにやばいね……
「これは魔力枯渇ね……」
「「魔力枯渇⁉」」
魔力枯渇とは、魔力が枯渇すること!(そのまんま!)
酷い時はそのまま死ぬこともある!
治療法は本人の気力次第。 他にも治療法はあるけど、一番安全なのはこれしかない。
リバーが死ぬ? そんなのやだ!
「早く連れて帰って治療しないと……」
「あ、あ、あんたたち!」
あ、パプリカがいたの忘れてた☆
「これから魔王様が来るわ! 精々恐怖しなさいな!」
魔王……ウィンとリバーとついでにコヨウさんを攫った奴……絶対許さない!
それに、あの変な宝石のような魔石の対策はしてきたんだからね!
来るんだったら早く来なさい! ボッコボコにしてやるんだから!
そんなことを思っていたら、何の演出もなく普通に魔王がやってきた。
何かさ、こう、演出とかできなかったの?
「お前ら、ぼきゅの城に無断で入った挙句荒らすなんて……また痛い目にあってもらおう!」
魔王はそう言って魔石を取り出した。
耳障りな音が鳴るけど、大丈夫!
こんな時のために耳栓を用意してきたんだからな!
「効かぬだと⁉ でも、ぼきゅにはまだ切り札があるもんね!」
こいつ、、、全然威厳ない……本当に魔王なの?
威厳のない魔王は懐からボタンのような物を取り出し、ボタンを押す。
「……」
ん? 何か変わった?
何も起きないよ……?
「ふはははは! これで貴様らは何もできん!」
あのさ、ふはははは!って言っても、威厳がないのは変わらないよ?
「――! 魔法が使えない……」
ナイトがポツリとそんなことを言う。
なんだって⁉
ためしに……
「『――聖槍――』」
撃てない……魔法が使えない……
「それだけじゃないぞ! 身体能力も……なんだっけ……100分の1……?」
「魔王様、10分の1です」
「そーだ、10分の1までになっているぞ!」
まじで威厳ないじゃんこの魔王……
なぜか魔族の神より魔王の方が地位が高い。
え?
なんでだろーねー?
まぁまぁ、気にしないでください……(。•́ωก̀。)…グスッ




