第67話 異様①
「よし! とりあえずここから出よう!」
ウィンはさっきと打って変わって明るくしゃべりだす。
まるで遠足へ行くみたいな気分で牢屋から出ようとしている。
「待って、足が動かないから『回復』する時間をちょうだ――」
「もーしょうがないなー! おんぶしてあ・げ・る・☆」
「ちょ、ちょっと待って!」
止めようとしたけど無理やりおんぶされてしまった……
僕、『回復』するって言ったのに、なぜかおんぶされてる。
ウィン、人の話ちゃんと聞いてよぅ……
できるなら僕がウィンをおんぶする立場でいたかった……なのになんで僕は女の子におんぶされているのだろう……?
それに、ウィンに任せて歩いてもらうのは危険な気がする。
だってさ、ウィンには悪いけど浅はかっていうか……
「ウィン、やっぱり斥候である僕が先に進むよ」
「大丈夫、大丈夫ー!」
やっぱりウィンには任せられない……
――ガコン
「あ……」
ウィンが何か踏んだみたい。
どうしよう!
『ビービー! 脱獄者発見! 脱獄者発見!』
大きな音が地下の牢屋中に鳴り響く。
上の階からドタドタという大勢の足跡が聞こえてくる。
「あわあわわ!」
ウィンがあわあわと声に出しているうちに、敵が地下になだれ込んできてあっという間に囲まれてしまった。
敵は全員魔族。
だからここは魔族の国のどこかなのかな?
どうしよう!
そう考えると生きて出られる確率はすごく低い!
それに、僕は対人恐怖症だ。
こんな大勢の人に囲まれると、足が震えて動けなくなってしまう。
しかもこんなに悪意がたくさん……!
「よくも脱獄してくれたわね」
リーダーらしき人が先導して声をかけてくる。
「あなたは……! 誰だっけ?」
ズコーー!
えーっとこの人は確か、生徒会のメンバーの人!
なんであそこにいるの⁉
まさか、魔族側に寝返ったの⁉
「私はパプリカ! 魔族の神よ!」
えっ⁉ パプリカさんって魔族の神だったの⁉
そうは見えないけど……
「信じていないようね……なら見てみなさい!」
パプリカさんは魔力を解放させる。
黒い髪がパプリカのように赤くなる。
角と翼が生える。 あれは……夢魔……?
「あなた、あなただけで戦うならまだしも、手負いの子をおんぶしながらこの数と戦うつもり?」
「ウィン、僕は一人で大丈夫だから降ろして!」
ウィンが降ろしてくれれば回復魔法が使える。
この数相手だと難しいけど、ウィンの足手まといにだけはなりたくない!
「そ・れ・と・も・見捨てるの~?」
パプリカさんがウィンを挑発させるように言う。
ウィン、その挑発にはのらないで!
「私は、リバーのこと見捨てないもん!」
ダメだった……ウィン~!
「バカな子ね、『――大爆発――』!」
パプリカさんの指先から膨大な魔力が集まっていく。
「リバー!」
ウィンが僕を抱きしめるようにして庇う。
――ドオォォン
大きな音と強い衝撃でウィンと僕は吹き飛ばされ、壁に激突する。
「――う…… ウィン⁉」
ウィンは少し離れたところで倒れていた。
頭から血が流れ、肩には瓦礫が深く刺さってしまっている。
僕のせいだ。 僕を守ったからウィンがこんな目に……っ!
「とんだ友情ね。 さて、これでとどめよ!」
パプリカさんがウィンに向かって飛び出し、鋭い爪をウィンに向けて大きく振りかぶる。
「ウィン!」
僕も急いで飛び出したけど、パプリカさんの方が一足速かった。
パプリカさんの爪がウィンに触れる寸前――突如ウィンの前に光り輝く盾が現れた。
――ガキィィン
盾がパプリカさんの爪を弾き飛ばす。
気絶していたはずのウィンがゆらりと立ち上がる。
いつもと雰囲気が違う。
それに、さっきまであった怪我も癒えている。
牢屋にいた時、女の人を殺そうとした時と同じ異様な気配がウィンから漂う。
「ウィン……?」
謎ばっかりで、説明が大変だっ!
一体どうやって説明すればいいの!?
【悲報】作者、迷走
あわあわわ!
助けて!メンダコ様〜!




