第66話 ウィン、キレる
ウィンとリバー目線です!
――ぐぅぅぐるる
お腹が盛大に鳴る。
うぅ、お腹がすいたよぉぉ!
あれから何日経った?
誰も来ないし、音も水が滴る音しか聞こえないし、外が見えず暗くて、時間すら分からない!
しかもこの手錠の鎖から何か力が奪われているようで、力が抜けていく。
そのせいで魔法も使えない。
くっそーー!
この超絶美少女を餓死させる気?
なんか腹立ってきた! 絶対一発殴ってやる!
そうやって沸々と怒りを煮えたぎらせていたら……
――ガシャン!
「あれ?」
手錠、なんか知らないけどとれたわ。
力も段々回復してきた!
よっしゃ! じゃあさっそく脱出だ!
「『――桜獣化――』」
狐獣人の姿になって耳を澄ます。
『ひっく……』
『――! ――さい!』
なんか誰かの鳴き声が聞こえてくる。
あとバシバシって音と怒鳴り声が。
ん? なんかリバーっぽい声な気がしてきた!
遠くてよく分からないけど、計画変更だ!
私の他に捕まっている人がいるなら助けに行かなくちゃ!
♢♢♢
「ほら、早く服従しなさいよ!」
「うぅ……」
目が覚めたら牢屋の中にして、こんな訳の分からない女の人にずっと問い詰められている。
僕が何をしたの……?
学園の保健室にいただけなのに。
いつもなら魔法で逃げ出せるのに、手錠から力が抜けて抵抗できない。
「あなたが“雪の聖獣”だってことはもうわかっているのよ。 大人しく私に服従しなさい」
「雪の、聖獣……?」
雪の聖獣って、あの伝説の?
たしかに僕は獣人ではないとは思うけど、まさか雪の聖獣だなんて⁉
いや、この女の人の妄想かもしれない。
僕は信じないぞっ!
「とぼけないで! ……仕方ない、これを使うしかないわね」
女が懐からボタンを取り出して押す。
「っ、うぁぁぁ――……」
なにこれ痛い!
手錠から電気のようなものが流れてきて体中に痛みが走る。
「はぁ、はぁ……っ」
電気が止まったと思うと女の人が平手打ちしてくる。
「しっかしラッキーだったわぁ。 雪の聖獣が弱っていたおかげでこんなに簡単に攫うことができたわ! これで魔王様も私のことを認めてくれるわ!」
女の人はケタケタと笑いだし、うっとりした目で僕をぎょろりと見る。
「しかもこんなに可愛らしい顔立ちだわ…… 今大人しく服従してくれたら君と遊んであげるわぁ……♡」
――ゾワッ
なんだか悪寒がする。
この人絶対ヤバい人だ! 何があっても服従しちゃだめだ!
「……なによ、その目。 生意気なんだよっ!」
女の人が手を大きく振りかぶる。
殴られる――‼
――ドゴォォォン
「ひぁっ!」
急に壁が粉々に砕け、その衝撃で手錠が外れて力が戻ってくる。
「よくも私のリバーをいじめたな……‼」
壊れた壁の奥からはウィンが出てきた。
そしてすごい殺気を放ちながら鬼の形相で女の人に詰め寄っていく。
ウィンもここにいたんだ! 心強い!
「はっ⁉ この壁は厚さ1mもあるんだぞ⁉」
「よくもリバーを……絶対殺す」
ウィン、怒ってくれるのはうれしいけど、顔が怖い!
それに、ちょっといじめられただけなのに、殺すのはまちがっている!
「わ、私はパプリカ姉妹の次に強いのよ! そんな私に手を出して済むわけが――ガベッ」
僕が止める暇もなくウィンが女の人を殴る。
ウィンが殴った瞬間一気に冷気が広がり、手に繋がっていた手錠の一部が凍り付き、粉々に砕け散った。
牢屋全体が凍り付き、白い息が出てくる。
女の人は床に2、3回バウンドしながら牢屋を突き抜け、壁にめり込んでやっと止まった。
生きているかな……?
というか、ウィンにこんなに強い精霊の力はなかったはず……
「殺さなきゃ……情けをかけたらリバーが殺される」
そんな話だったっけ?
大袈裟じゃない?
「ウィン!もう気絶しているんだから殺さなくてもいいでしょ!?」
「……あれ?なんで殺そうとしたんだっけ?」
ウィンは不思議そうに首を傾げる。
さっきのは一体なんだったの?




