第64話 油断
シーちゃんに回復魔法かけてもらって、目が見えるようになった。
なんか聞いたことない魔法だったけど……まぁ、神だから仕方ない。
知らない方がいいこともある。
それにしてもね、魔族みんないなくなっちゃった。
目が見えるようになって改めて実感する。
あの『終末の吹雪』はやばい。
もしかしたら魔王まで一緒に吹き飛んだかもね!
『よくもやってくれたな、小娘共……‼』
ウィンの時みたいに土の中から魔王が出てきた。
すごい怒っているようで肩(?)をぶるぶると震わせている。
ピンクの丸い何かだから、そこが肩なのかはよくわからない。
『ぼきゅの切り札は他にもあるのだ……この、魔石が切り札だ!』
魔王ピンドラが禍々しい赤い光を放つ宝石を取り出した。
これが切り札……?
「――⁉ みんな、耳をふさい――」
――ヒイィィン
シーちゃんが言い終わる前に魔石から変な音が鳴りだした。
「うっ!」
あ、頭が割れそう……っ!
ウィンも苦しそうに頭を押さえてうずくまる。
あれ? シーちゃんがいない。 どこへ行ったの……?
『はははは! これがぼきゅの切り札だ――』
――ザシュ
何かを切り裂いた音が鳴る。
そこには翼が片方もげた魔王と、シーちゃんが大鎌を持って立っていた。
魔王は驚いたように目を見開き、翼があったはずの背中と地に落ちた翼を交互に見つめる。
シーちゃんはというと、なぜか魔王にとどめを刺さずに魔王を冷たく見下ろしている。
『ぼ、ぼきゅの翼……』
魔王がポツリと言葉を漏らす。
『神にこれは効かなかったのか……まぁいい』
――ボン
魔王が何か黒い球体を地面に投げつける。
その瞬間周りに黒い煙が立ち込め、何も見えなくなる。
しまった! 煙幕か⁉
いつもなら気配で察知して敵に攻撃できるはずでけど、謎の魔石のせいでうまく動けない。
数十秒経ち、やっと周りが見えるようになった。
「あれ、ウィン……?」
なんとウィンがいなくなっていた。 ついでに魔王も。
油断した!
そういえば魔王の狙いは精霊を攫うこと。
本当なら煙幕の中で真っ先にウィンを守らなければいけなかったのだ。
自分の過ちに気づき、脱力感が体を襲う。
魔王の気配はもうない。
追うことはできないのだ。
「シーちゃん! なんでさっき魔王にとどめを刺さなかったの⁉」
責めてはいけないと分かっているけど、責めずにはいられない。
私にはないけど、シーちゃんには魔王にとどめを刺せる強さがあった。
だから余計に責めずにはいられなかった。
「大丈夫。 魔王に追跡の魔法をかけておいたから。」
「よ、よかった……」
これでウィンを救い出すことができる。
「それにね、魔王を逃がすことで魔王の拠点を暴けるわ。 それに魔王は実験をしているといったわ。 だから囚われている精霊がたくさんいるはずよ。 私たちで、助け出しましょう」
そうか、シーちゃんは拠点を暴くことで囚われている精霊たちを助け出すつもりだったんだ!
それに、うまく魔王を倒せれば魔族との戦争を回避できるかもしれない!
私、何も考えずにシーちゃんのことを責めちゃった。
駄目ね、友達のことは信じなきゃなのにね。
でも、やっぱりウィンが心配。
「大丈夫よ! ウィンはあんな奴にやられるほど弱くないわ! きっと無事よ」
私の不安に気づいたのか慰めてくれる。
シーちゃんは優しいな。
「それじゃぁ、学園の生徒をまずは助けましょう。 私はみんなを回復させるから、パープちゃんは敵がまだ潜んでいないか確認して」
「わかった!」
ウィン、無事でいてね!
地震大丈夫でしたか?




