第5話 街
私は……やり遂げた!
ついに街に着いたぞー!
長かった……
木から木へ飛び移るようにして、街がありそうな方へ勘で走って……
約1ヶ月間走り続けてやっとたどり着いた街!
――ザワザワ
「…………。」
服、着てなかったわ。
ただの布をまいてるだけだったわ……
よ、よし! まずは服を買いに行こう!
(お金ないけどね……)
狼の毛皮を売れば、何とか服を買えるはず!
―――カランカラン
「いらっしゃいませ――……」
服屋の店員が私の凝視する。
「お客さま、お金はお持ちでしょうか?」
「お金は持ってないけど、狼の毛皮で何とかならない?」
「……! 失礼しました。 ご案内します」
店員は狼の毛皮を見た途端、目をキラキラと輝かせながら私を案内した。
この毛皮って高いのかな?
店員に教えてもらいながら、動きやすそうで上品な紺碧色のワンピースを選ぶ。
それに合わせて編み上げのブーツと、紺瑠璃色の外套、琥珀色に輝く石が付いた魔法使いの杖も選び、店で着替えさせてもらった。
試着室から出ると、店員の目の色が変わった。
「……ねぇ、髪型を弄ってもいい?」
「いいけど……」
「ちょっとだけでいいからお化粧もしてみない……?」
少し鼻息が荒くなった店員に色々と弄られ、終わった頃には夕暮れになっていた。
店員は何故か満足気な顔をしていた。
「ねぇおじさん、『エトワール大武道大会』って、後どのくらいで開催するの?」
昨日は散々弄ばれて夕暮れになってしまい、宿を取れずに野宿する羽目になった。
今日は街の屋台で食べ物を売っている人あたりの良さそうなおじさんで情報収集することにした。
「『エトワール大武道大会』か? たしかちょうど1週間後だったはずさね。 まっ、儂はEランクだから、関係ないべ。」
なるほど…… 1週間後か……
ちなみに、『エトワール大武道大会』はBランク以上は強制参加だが、それ以下は自由参加である。
ただし、12歳の子は強制参加だ。
出場していないことがバレた場合、罰せられる。
とゆうか、出場しないと身分証明書が貰えないため、生活出来ない。
「ちなみに、会場ってどこかわかる?」
「お前さん、ちと世間知らず過ぎじゃないかい? まぁ、別に教えてはやるがな……」
しまった!
ガツガツと聞きすぎてしまった!
次からはさりげなく聞かなきゃね!
「この街から出て、南の方角に馬車で3日ほど行くと会場じゃよ」
「ありがと……」
ふむ……
馬車で3日なら、私が本気で走ったら1日くらいかな?
馬車代が勿体ないから走っていこうかな?
「おじさん、この蒸しキャロッティちょうだい」
「銅貨3枚だべ」
「……お金ないからこれでもいいかな……?」
私はまだお金を調達できずにいる。
この後冒険者ギルドにでも行って、買い取って貰おうかな?
「おめーさん、この毛皮、どうやって手に入れたんだべ?」
「え? 普通に森で狼を狩って、解体した」
「!? おめえさん、これは『魔境の森』でしか現れない珍しい狼の毛皮だべ。 これを人前で出さん方がいい。 この毛皮、相場は金貨10枚だべ。」
まさか金貨10枚もするとは!?
だから昨日の店員は目を輝かせたのか……
「悪い奴に見られたら、奪われてしまうかもしれないぞ」
「おじさん、教えてくれてありがと」
「いいってことよ!はい、お釣りだべ」
こんなお人好しがいたとは……
世の中にも色んな人がいるんだな。
―――パクッ
……っ!?
「――おいしい。 こんなおいしいもの、食べたことない……」
「ガハハハハ!そりゃそーだべ。うさぎ獣人はキャロッティが大好物だからな!」
確かにこれは、人参に似ているな……
色は桃色だけどね。
うさぎには、やっぱり人参なのか。
パープの大好物に認定されたキャロッティ!
【名前】キャロッティ
―――桃色の細長い野菜。別名『魔性野菜』。これを食べた獣人はキャロッティを食べずにはいられなくなる。